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相続税

最終更新日:2022.03.28

2022年に
相続税・生前贈与は改正される?
今後改正が検討される内容とは

このコンテンツでわかること

  • ■ 2022年度(令和4年度)税制改正大綱の概要がわかる
  • ■ 2022年以降検討される相続税や生前贈与の改正内容がわかる
  • ■ 現行制度で生前贈与をした際の節税効果がわかる
  • ■ 生前贈与の節税効果を高めるコツがわかる

2022年度(令和4年度)版の税制改正大綱では、相続税と贈与税の一体化が話題となっていました。結果的には見送りとなりましたが、課税強化の方針は変わっていないため、早ければ2023年施行の可能性もあるでしょう。

さて、一体化が話題になる理由ですが、「相続税対策封じ」と読み取れる部分が多いためです。現在の税制では年間110万円までの贈与は非課税になり、一部の特例措置を使えば1,000万円以上の贈与にも税金がかかりません。上手に使えば高額な財産でも非課税贈与できますが、一体課税になると生前贈与の節税効果が低くなります。

今後の相続税対策にも大きく影響するため、今回は2022年度税制改正大綱の中身をおさらいし、現行制度で生前贈与した場合の節税効果も解説します。

【2022年】令和4年度税制改正大綱の内容

2022年度(令和4年度)の税制改正大綱をみると、資産課税についての大幅改正はありませんでした。しかし相続税と贈与税については議論が継続されており、近い将来課税強化される可能性はかなり高いと予測されます。

では2022年度税制改正大綱の中から、相続税や贈与税に関する部分をわかりやすく解説します。

課税強化で格差是正を狙う

まず贈与について、従来の方向性は次世代への積極的な資産承継でした。高齢者に財産が偏っているため、若い世代へ贈与すれば消費が促進され、結果として経済活性化に繋がるという考え方です。したがって、少ない税負担で資産承継できるよう、現状では贈与税の特例措置も設けられています

しかし2022年度税制改正大綱を要約すると、従来どおりの考え方を踏まえつつ「高齢者の税負担を強化して経済的格差を是正する」と読み取れる一文があります。ここでいう高齢者は富裕層を指しているとみられますが、もっと税金を負担してもらい、その税金は何らかの形で社会へ配分するという考え方でしょう。

つまり「財産の世代間移転」から「格差社会の是正」に軸足を変えると予測できます。

富裕層の節税対策に歯止めがかかる

2022年度税制改正大綱の中には「累進負担の回避」を問題視する一文もあります。相続税は課税額に応じて税率が上がる累進課税なので、生前贈与で小分けにすれば低い税率が適用され、減少した相続財産の適用税率も低くなります。相続税対策としては王道的な手法ですが、政府は累進負担の回避(納税負担を逃れようとする行為)と捉えています

一方では「相続税負担が少ない層の生前贈与は抑制的」としてします。つまり、一般層はあまり贈与してくれないが、富裕層は積極的な贈与で相続税負担から逃れているという捉え方でしょう。

そこで中立的な税制を構築し、贈与で小分けしても相続で一度に財産移転しても、税額は同じにするという方向性が示されました。

節税対策は早めの活用がおすすめ

ここまで2022年度税制改正大綱の要約を述べてきましたが、これらの内容は現時点では検討段階であり、本格的な改正は見送りとなっています。しかし基本方針は固まっているため、早ければ2023年度施行の可能性もあるでしょう。

特に贈与税は「相続税と別体系」という点も問題視されているため、相続税対策としての生前贈与は早めの活用がおすすめです。より節税効果の高い贈与になるよう、税理士のアドバイスも受けておくとよいでしょう。

2022年以降検討される相続税・生前贈与の改正内容

2021年12月発表の税制改正大綱(2022年度版)では、相続税や贈与税についての言及は少なく、現状把握と今後の方向性だけにとどまっています。

しかし数年前から議論されてきた内容を踏まえると、今後の相続税と贈与税は次のように改正されると予測できます。

持ち戻しの3年ルールが10年に延びる?

相続開始前3年以内に贈与した財産については、相続財産にカウントする「持ち戻し」のルールがあります。つまり贈与税ではなく相続税の課税対象になるわけですが、家族の死期が近いと知り、慌てて贈与するなど、あからさまな相続税逃れを防止する措置です。 税制改正の議論では、現在の3年を5年や10年に引き延ばす案も出ていますが、実行された場合は生前贈与の節税効果が下がってしまうことは想像に難くありません。

海外の課税体系を目指している

2022年度税制改正大綱の中には「諸外国の税制も参考に」という一文があり、今後はヨーロッパ諸国やアメリカの課税体系を採用する可能性もあるようです。参考にしている部分は「一体課税」と「持ち戻し期間」ですが、各国の持ち戻し期間は次のようになっています。

  • イギリス:7年

  • ドイツ:10年

  • フランス:15年

  • アメリカ:一生涯(相続発生前に贈与をすべて対象とする)

持ち戻し期間については先ほども触れましたが、当然ながら生前贈与の節税効果は低下します。また、過去の生前贈与を長期間把握しなければならないため、海外の課税体系が採用されると資産管理の負担も大きくなるでしょう

孫への贈与にも持ち戻しを適用?

相続開始前3年以内の持ち戻しルール(生前贈与加算)ですが、現行法では法定相続人に対する贈与に限定されています。したがって法定相続人ではない孫やひ孫へ贈与した場合、3年以内に贈与者が亡くなったとしても生前贈与加算は適用されません。

しかし、税制改正大綱では「累進負担の回避」を問題視しているため、節税に使える生前贈与は封じ込められるかもしれません。つまり、孫やひ孫に生前贈与加算を適用させる可能性も高いということです。

贈与税の基礎控除110万円も廃止の可能性あり

現在の贈与税には年間110万円までの基礎控除があり、超過しなければ申告も不要です。しかし、現在議論されている方向で税制改正された場合、やはり節税となる生前贈与は使えなくなるため、110万円の基礎控除も廃止される可能性があります。

相続税と贈与税が一体化すれば、贈与税はすべて相続時清算となり、基礎控除の恩恵も受けられないため、税負担はかなり重くなると推測されます。また、贈与時の課税はなくても申告だけは必要になるでしょう。

相続時精算課税制度がスタンダードになる?

2022年度税制改正大綱の中には、「現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す」という部分もあります。暦年課税制度はごく一般的な贈与に対する課税ですが、相続時精算課税制度は2,500万円まで非課税贈与できる反面、贈与財産はすべて相続財産に加算する仕組みです。

つまり、税制改正大綱が目指す相続税と贈与税の一体化とは、相続時精算課税制度のスキーム(仕組み)を指しているといえます。現在は暦年課税との選択制ですが、いずれ相続時精算課税制度がスタンダードになる可能性も考えられるでしょう。

現行制度で生前贈与をした際の節税効果

2022年度税制改正大綱の中身が実現した場合、生前贈与による相続税対策は封じ込められてしまいます。しかし一方では、税率の高さから、生前贈与の節税効果に対して懐疑的な方もおられます。では現行制度で生前贈与を活用した場合、どれだけの節税効果があるのか検証してみましょう。

生前贈与なしで相続が発生した場合

以下の条件で相続が発生した場合、相続税がいくらになるか計算してみます。

  • 相続財産:2億円

  • 相続人:子供2人

  • 相続割合:それぞれ1/2ずつ(1億)を相続

最初に基礎控除を計算し、相続財産から差し引いて課税遺産総額を算出します。

  • 計算式

  • 課税遺産総額:2億円-(3,000万円+600万円×2人)=1億5,800万円

次に相続税率と控除額を適用させて、相続税の総額を算出します。

  • 計算式

  • 1人分の課税額:1億5,800万円×1/2=7,900万円

  • 計算式

  • 1人分の相続税額:7,900万円×税率30%-控除額700万円=1,670万円

  • 計算式

  • 相続税の総額:1,670万円×2人分=3,340万円

ひとまず相続税の総額3,340万円が算出できました。では次に、生前贈与を活用した例で計算してみます。

生前贈与で相続財産が減少していた場合

先ほどの条件をもとにしますが、次は孫3人に生前贈与した場合です。

  • 相続財産:2億円

  • 相続人:子供2人

  • 相続割合:それぞれ1/2ずつ

  • 生前贈与:孫3人に3,000万円を贈与(1人につき年200万円を5年間)

まず孫の贈与税を計算します。

  • 計算式

  • 毎年の贈与税:(200万円-基礎控除110万円)×税率10%=9万円

  • 計算式

  • 贈与税の総額:9万円×5年×3人=135万円

では次に相続税を計算してみます。

  • 計算式

  • 相続財産:2億円-贈与額3,000万円=1億7,000万円

  • 計算式

  • 課税遺産総額:1億7,000万円-基礎控除4,200万円=1億2,800万円

  • 計算式

  • 1人分の課税額:1億2,800万円×1/2=6,400万円

  • 計算式

  • 1人分の相続税額:6,400万円×税率30%-控除額700万円=1,220万円

  • 計算式

  • 相続税の総額:1,220万円×2人=2,440万円

生前贈与を活用した場合、税額合計は「135万円+2,440万円=2,575万円」になり、先ほどの3,340万円に比べて765万円の節税になっています。

生前贈与の節税効果を高めるコツ

今後の税制は増税に繋がる可能性が高いため、なるべく早めに相続税対策をしておきたいところです。特に生前贈与は相続税対策に効果的なので、次のような方法を検討しましょう。

一時的に評価額が下がっている財産の贈与

上場株式など評価額(株価)が変動する財産については、一時的に評価額が下がっているタイミングで生前贈与しましょう。相続財産にカウントする場合でも贈与時の評価額になるため、相続税を低く抑える効果があります。

収益物件などの生前贈与

賃貸アパートなどの収益物件がある場合、家賃収入で所有者の金融資産が膨張します。しかし、子供へ生前贈与すれば家賃収入の行き先も変わるため、親の金融資産を圧縮する効果があります。投資商品など収益を生み出す財産があれば、早めに贈与した方がよいでしょう。

専門家に相談する

生前贈与の節税効果は財産やタイミングによって変わるため、税理士など専門家のアドバイスはなるべく受けるようにしてください。財産を受け継ぐ人によっても節税効果は変わるので、プロの意見も参考にするとよいでしょう。

まとめ

今後の税制改正は、富裕層への課税強化や、節税封じを主軸に議論されているようです。しかし一般層も無関係ではなく、現状では1~2回の生前贈与で相続税を回避できるような方でも、新税制の施行後は通用しなくなってしまいます。

今のところは予測に過ぎませんが、近い将来何らかの動きはあるでしょう。また、改正内容は段階的に施行される可能性もあるため、しばらくの間は有効な相続税対策が二転三転するかもしれません。まずは今できる相続税対策を早めに実行し、2023年以降の税制に備えておきましょう。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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