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相続税

最終更新日:2022.06.30

続税の物納とは?
物納できる財産の種類・
順位と要件・申請の流れ

このコンテンツでわかること

  • ■ 相続税の物納制度の概要がわかる
  • ■ 物納の適用要件がわかる
  • ■ 物納できる財産と優先順位がわかる
  • ■ 物納申請の流れと必要書類がわかる
  • ■ 物納と不動産売却のメリットやデメリットがわかる

遺産の価値が想像以上に高く、相続税を納められなくなるケースは珍しくありません。換金しやすい財産は売却して納税資金にできますが、主な財産が農地や非上場株式などの場合、申告・納付期限までの現金化は大変難しいでしょう。

しかし、状況によっては物納(ぶつのう)が認められる場合もあります。物納には厳しい要件があり、相続人の意思だけでは決定できませんが、納税資金が足りないときは唯一の納付手段になる可能性があります。

今回は物納の適用要件や対象財産などをわかりやすく解説しますので、相続税に困っている方はぜひ参考にしてください。

相続税の物納とは

身近な国税には所得税や消費税、法人税や相続税などがあり、すべて金銭納付が原則です。ただし、相続税だけは物納の制度があり、現金一括納付や延納が困難な場合に限り、不動産などの現物納付が認められています。

相続税と関連深い税金には贈与税もありますが、贈与税は物納できないので注意してください。また、物納は相続人ごとに判定されるため、同じ家族でも物納が認められる人・認められない人に分かれるケースもあります。

ではどのような状況であれば物納できるのか、具体的な要件や対象財産をみていきましょう。

物納の適用要件

相続税の物納には適用要件があり、原則として物納しか納税手段がない場合に限られます。物納申請できる財産も限定されているため、まず適用要件を満たせるかどうか、次の項目から判断しましょう。

現金一括納付や延納が不可能であること

期限内に納税資金を準備できず、相続税額が10万円以上あるときは、まず税務署へ「延納」を申請することが必要です。延納は年払いで分割納付する制度ですが、相続税の全額を分割できるわけではなく、納付可能な金額を超えた部分が分割払いの対象になります。なお、延納期間については、相続財産のうち不動産が占める割合によって5年~20年の間で決定されます。延納には約0.2~1%(年割合)程度の利子税や担保提供も発生するので、結果的には割高な相続税になることも理解しておきましょう。

延納による納付も困難な場合、または税務署が延納を認めなかった場合は、物納申請に切り替えます。

申告期限までに物納財産を申請すること

物納申請と相続税申告は同一期限日であり、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内となっています。物納申請の流れや対象財産は後述しますが、申告期限を過ぎると延滞税や無申告加算税も発生し、さらに納税が困難な状況になってしまいます。期限内申請ができない場合は、「物納手続関係書類期限延長届出書」の提出で1回につき3カ月、最長1年まで延長できるので、忘れずに提出しておきましょう。

物納できる財産・優先順位

物納申請できる財産は、原則として相続により取得した財産であり、物納申請額を超えない価額が条件となります。また、物納財産には優先順位も定められているため、上位の財産で物納できない場合に限り、下位の財産による物納が認められます

【物納できる財産と優先順位】

  • 第1順位:不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等、または物納劣後財産に該当するもの

  • 第2順位:非上場株式、または物納劣後財産に該当する非上場株式

  • 第3順位:美術品などの動産

物納劣後財産とは、他の財産より物納財産としての価値が劣っているものであり、違法建築された建物やその敷地、事業休止中の上場会社の株式などが挙げられます。基本的に資産価値が高く、処分しやすい財産が物納として認められます。

物納を申請する流れ・必要書類

相続税の物納は次の流れで申請しますが、前提として遺産分割協議が成立していなければなりません。物納財産の目録や詳細資料も提出するので、必要書類はなるべく早めに準備しておきましょう。

なお、国税庁ホームページでは「物納の手引き」など詳しい情報を閲覧できますが、ページ数が大変多いため、重要な部分をピックアップして解説します。

物納のあらまし(国税庁)

物納申請の必要書類

相続税の物納申請には以下の書類が必要です。

  • 相続税物納申請書

  • 物納財産目録

  • 金銭納付を困難とする理由書

  • 物納劣後財産等を物納に充てる理由書(劣後財産で物納する場合)

上記の書類は国税庁ホームページ、または税務署窓口で入手できます。

ただし、不動産の物納には登記事項証明書や住宅地図、公図、地積測量図などの資料が必要となり、動産であれば鑑定評価書などの提出が求められます。隣地との境界が不明な土地は測量も必要になるため、準備だけで数カ月かかることもあるでしょう。最終的に国が引き取る価格を「収納価額」といいますが、金額は申請者が算出するので正確な相続税評価額も把握しておかなければなりません。

なお、相続税物納申請書には作成税理士欄も設けられているので、書類一式の作成が難しいときは税理士に依頼することをおすすめします。

物納申請書などの様式集(国税庁)

土地を物納財産にするときの必要書類

物納財産を土地にする場合、以下の書類が必要です。

法務局で取得

  • 登記事項証明書:有効期限はないので手元にあるものを使用できます

  • 公図:隣地との接し方などを確認する書類

  • 土地所在図:土地の所在を明らかにする書類

  • 地積測量図:測量結果がわかる書類

市町村役場で取得

  • 道路明示証:公道に接した土地の場合に必要(建築関係の部署にあります)

自宅保管の書類

  • 境界確認書:紛失の場合は土地家屋調査士へ依頼します

  • 賃貸借契約書:賃貸している場合に必要ですが、紛失していれば管理会社に問い合わせます

私道の所有者から取得

  • 通行承諾書:公道までの間に私道があるとき

土地の状況によっては追加書類も必要ですが、あまり馴染みのない書類も多いので、何を準備してよいか分からないときは早めに専門家へ相談しましょう。

管轄税務署への物納申請

相続税を物納申請するときは、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する税務署が申請先になります。通常、申請から3カ月以内に申請許可、または却下を通知されますが、降雪などの影響で現地調査ができない場合があり、最長で9カ月かかることもあります。

物納申請が却下されたときは他の財産で再申請もできますが、却下の通知から20日以内の手続きが必要であり、再申請は1回しか認められません。また、提出書類に不備・不足があった場合も、20日以内に訂正や追加提出が必要となります。20日以内の訂正等が難しいときは、「物納手続関係書類期限延長届出書」の提出で期限を延長できますが、年利2~3%程度の利子税も発生します。

物納と不動産売却はどちらがおすすめ?

不動産で相続税を物納する場合、まず売却できるかどうかも検討しなければなりません。どちらも不動産を手放すことには変わりないため、メリットの大きい手段を選ぶとよいでしょう。

物納のメリット・デメリット

不動産は物納・売却ともに一定の費用がかかるため、どちらが安いかを比較することが必要です。

物納の場合、提出書類の準備には高額な費用はかかりませんが、確定測量するときは30万~100万円程度の費用がかかります。不動産売却にも税金や手数料がかかるので、低コストになる方を選ぶとよいでしょう。

また、物納と売却を検討するときは、相続税額も正確に計算しなくてはなりません。もし相続税額よりも売買価格(時価)が低いようであれば、売却代金をすべて納税資金に充てても相続税は払い切れません。このようなケースでは物納にメリットがあるといえるでしょう。

不動産売却のメリット・デメリット

立地条件のよい土地であれば相続税額以上で売れる可能性が高いため、相続税を支払っても手残りが出る場合があります。買い主も見つかりやすく短期間で売却も完了するため、相続税申告にも十分間に合うでしょう。このことが不動産売却のメリットといえます。

ただし、不動産会社に支払う仲介手数料が発生し、「不動産の取得額+売却費用」よりも売却代金が高ければ、利益に対して譲渡所得税がかかります。譲渡所得税は不動産の所有期間が5年以内で約40%、5年超は約20%なので、物納の必要コストと比較し、低い方を選ぶようにしてください。

また、希望価格で売れるとは限らず、買い手が見つからないまま申告期限を過ぎてしまう可能性もあることが売却のデメリットといえます。売却価格や売れるかどうかの予測も含め、不動産会社に相談して物納・売却を決めるとよいでしょう。

まとめ

相続税の物納は年々減少しており、2001年の申請件数は約5,700件でしたが、2020年には65件にまで減少しています。審査の厳格化が主な要因とされていますが、急速な宅地化による地価高騰など、相続税対策が追いついていないケースも考えられるでしょう。

また、不動産や非上場株式など、評価の難しい財産は計算ミスが起きやすいため、専門家による算定も必要になります。物納は相続税対策の最終手段になるため、相続専門の税理士や不動産会社に相談し、売却も視野に入れながら検討するとよいでしょう。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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