亡くなった人の借金も相続の対象
被相続人の借金はマイナスの相続財産になるため、相続人が返済義務を引き継がなくてはなりません。借金の負担割合は法定相続分に応じるので、配偶者と子供2人が1,000万円の借金を引き継ぐ場合、配偶者500万円、子供はそれぞれ250万円を負担することになります。
また、借金の負担割合が遺言書で指定されている場合や、遺産分割協議で決める場合もありますが、債権者には主張できないので注意しましょう。
被相続人の借金は遺産分割や相続税申告にも影響するので、借金があるかどうかわからないときや、正確な金額を知りたいときは以下のように調べましょう。
相続財産に借金がないか調べる方法
被相続人の借金は銀行系やクレジットカード、消費者金融などが考えられます。借入れの契約書や債権者からの督促状、口座振替の状況や登記事項証明書から借金の有無がわかるので、机の引き出しや郵便物、預金通帳を調べてみましょう。
ただし、調査で発覚した借金がすべてとは限らないため、関係機関に照会する必要もあります。
-
全国銀行個人信用情報センター(KSC):銀行系のローン
-
株式会社シー・アイ・シー(CIC):クレジットカードや消費者ローン
-
株式会社日本信用情報機構(JICC):消費者金融
それぞれ照会方法や照会手数料、支払方法が異なるので、以下を参考にしてください。
全国銀行個人信用情報センター(KSC)
銀行系のローンやクレジットカードを調査するときは、全国銀行個人信用情報センター(KSC)に照会してみましょう。照会できる人や照会方法は以下のとおりですが、事前にフリーダイヤルで確認しておくことをおすすめします。
-
照会できる人:法定相続人
-
照会方法:郵送のみ
-
必要書類等:登録情報開示申込書、1,000円分の定額小為替、本人開示手続き利用券(1,200円程度)
他にも戸籍謄本や法定相続人の本人確認書類を提出しますが、法定相続情報一覧図があれば戸籍謄本は不要となります。登録情報開示申込書は全国銀行個人信用情報センターのホームページ、本人開示手続き利用券はコンビニエンスストアで購入できます。
-
フリーダイヤル:0120-540-558
株式会社シー・アイ・シー(CIC)
消費者ローン等のクレジットカード類を調べたいときは、株式会社シー・アイ・シー(CIC)に照会してください。照会方法は以下のとおりですが、CICは全国に7拠点しかなく、感染症対策で窓口を閉鎖している場合があるため、窓口照会よりも郵送やインターネット照会が便利かもしれません。
-
窓口照会:平日10:00~12:00と13:00~16:00で受付
-
インターネット照会:毎日8:00~21:45で利用可能
-
郵送照会:申込みから10日程度で開示報告書が到着
※運営状況はHPでご確認ください。
照会できる人や手数料は以下のとおりです。
-
照会できる人:法定相続人のみ
-
必要書類等:被相続人との関係がわかる戸籍謄本や本人確認書類等
-
照会手数料:1,000円(郵送扱いは定額小為替、インターネット照会はクレジットカード払い)、窓口照会は500円
-
全国共通ダイヤル:0570-666-414
株式会社日本信用情報機構(JICC)
株式会社日本信用情報機構(JICC)には消費者金融からの借入れを照会できます。相続の場合は窓口(※)または郵送照会のみとなり、手数料などは以下のようになっています。
※感染症対策で窓口での手続きを休止している場合があります。最新の運営状況はHPでご確認ください。
-
照会できる人:法定相続人や2親等以内の血族、弁護士や司法書士など
-
必要書類:信用情報開示申込書、被相続人との関係がわかる戸籍謄本など
-
照会手数料:1,000円(定額小為替またはクレジットカード払い)、窓口照会は500円
郵送で開示情報を受け取るときは以下のオプションを追加できます。
-
速達郵便:300円(税込)
-
本人限定受取郵便:300円(税込)
-
速達+本人限定受取郵便:600円(税込)
照会方法の詳細は電話でも確認しておくとよいでしょう。
-
サポートダイヤル:0570-055-955
郵送による開示手続き(株式会社日本信用情報機構)
窓口での開示手続き(株式会社日本信用情報機構)
遺産に借金があったときの相続方法3つ
亡くなった家族に借金がある場合、相続方法は以下の3つから選択することになります。
-
単純承認
-
限定承認
-
相続放棄
限定承認や相続放棄は家庭裁判所に申述する必要があり、期限も定められているので注意が必要です。
単純承認
相続の承諾(承認)を単純承認といい、借金も含めて遺産相続することになります。限定承認や相続放棄を選択せずに3カ月経過すると、単純承認は自動的に成立しますが、被相続人の財産を自分の生活費に充てた場合も単純承認が成立します。
借金の返済額よりもプラスの財産が大きい場合は、単純承認を選択してもよいでしょう。
限定承認
限定承認はプラスの財産の範囲内で借金を返済する方法ですが、借金がいくらあるかわからないときも相続の選択肢になります。相続放棄するとすべての財産を手放すことになるため、特定の財産(自宅など)を残しておきたい場合は限定承認を検討してみましょう。
ただし、限定承認は相続人全員の協力が必要となり、相続開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。単純承認を選択した相続人がいると、限定承認は認められなくなるので注意してください。
また、限定承認では被相続人が相続人へ財産を売却した形になるため、土地などの売却代金が取得費を上回っていたときは、譲渡所得税が発生します。
相続放棄
相続放棄すると最初から相続人ではなかったことになるため、預貯金などの財産は相続できませんが、借金の返済義務も免れることになります。相続放棄も家庭裁判所への申述が必要となり、相続開始を知った日から3カ月以内が期限です。
なお、相続放棄が認められると取り下げはできないため、後から高額な財産が発覚しても相続人には戻れません。相続放棄した場合、相続権と借金の返済義務が次の相続順位の人に移ります。他の相続人に何も知らせずに相続放棄するとトラブルになりやすいので、注意しましょう。
限定承認や相続放棄をしても連帯保証人の地位は変わらない
相続人が被相続人の連帯保証人だった場合、限定承認や相続放棄してもその地位は変わらないため、債権者から返済を迫られたときは応じなければなりません。
また、被相続人が借金の連帯保証人だった場合も、単純承認するとその地位を引き継いでしまうので注意してください。
借金があったときの相続税計算方法
一定額以上の相続財産には相続税がかかるため、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に申告・納税しなくてはなりません。相続税は課税遺産総額に税率を乗じて計算しますが、借金や葬儀費用はプラスの財産から差し引ける(債務控除といいます)ので、課税遺産総額は低くなります。
では、借金がある場合の相続税がいくらになるか、以下のケースで計算してみましょう。
-
相続財産:①プラスの財産8,000万円、②借金1,500万円
-
葬儀費用:③200万円
-
相続人:配偶者と子供1人
相続税の基礎控除を計算する
相続税には基礎控除があり、控除額を超えた部分が課税対象になります。
-
計算式
-
基礎控除の計算式:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
配偶者と子供は法定相続人になるため、控除額は以下のように計算します。
-
計算式
-
基礎控除額:3,000万円+(600万円×2人)=④4,200万円
では次に、借金と葬儀費用を差し引いて課税遺産総額(相続税がかかる部分の価額)を計算します。
課税遺産総額の計算
相続税は課税遺産総額をもとに計算するので、基礎控除額や借金、葬儀費用をプラスの財産から差し引いておきます。
-
計算式
-
課税遺産総額の計算:①8,000万円-④4,200万円-②1,500万円-③200万円=2,100万円
課税遺産総額が計算できたら、次に税率を乗じて相続税の総額を計算します。
相続税の総額の計算
相続税を計算する場合、ひとまず法定相続分に従って各自の課税額を計算しておきます。配偶者と子供の法定相続分はそれぞれ1/2なので、課税額は以下のようになります。
-
計算式
-
配偶者の課税額:2,100万円×1/2=1,050万円
-
計算式
-
子供の課税額:2,100万円×1/2=1,050万円
次に税率と控除額を適用させますが、どちらも「相続税の速算表」を参照するので、国税庁ホームページを確認してください。
-
計算式
-
配偶者の税額:1,050万円×税率15%-控除額50万円=107万5,000円
-
計算式
-
子供の税額:1,050万円×税率15%-控除額50万円=107万5,000円
-
計算式
-
相続税の総額:107万5,000円×2人=215万円
相続税の総額が計算できたので、最後は各自の取得割合に応じて按分します。
各相続人の相続税を計算
各相続人の相続税は遺産の取得割合に応じるため、配偶者3/5、子供2/5の割合だったときは以下の税額になります。
-
計算式
-
配偶者の相続税:215万円×3/5=129万円
-
計算式
-
子供の相続税:215万円×2/5=86万円
ちなみに、債務控除しないまま計算すると各自の税額は2倍以上になるため、借金や葬儀費用は正確に把握し、必ずプラス財産から差し引いておきましょう。
まとめ
住宅や車のローンは家族間でオープンにされていることが多く、完済までに何年かかる、残債がいくらある、といったことが話題になるケースもあります。しかし、クレジットカードや消費者金融などの借金は家族も知らないことが多いため、相続開始後に発覚するケースは珍しくありません。
高額な借金であれば限定承認や相続放棄を選択できますが、短期間で財産の全容を把握する必要があるため、多忙な方にはハードルの高い作業になるでしょう。
借金の調査に時間を割けない、または限定承認や相続放棄の判断に迷ってしまったときは、できるだけ早めに相続の専門家へ相談してください。



