110万円以下で贈与税がかからなくても証拠が必要な理由
相続税の税務調査で生前贈与を否認(認めてもらえない)された場合、過去の贈与分は相続財産に合算しなければなりません。非課税贈与していた110万円以下の財産にも相続税がかかるため、贈与したことの証拠がなければ相続税の負担が重くなってしまいます。
なお、相続開始前3年以内に行われた贈与の場合、生前贈与の証拠があっても相続財産に合算する税法上のルールがあります。
生前贈与の証拠は節税対策の重要ポイントになるので、以下のような税務署の判定基準も理解しておくとよいでしょう。
税務署が暦年贈与と認める基準
基礎控除110万円以下の贈与を毎年、または好きなタイミングで行う贈与方法を暦年贈与といいます。税務署は以下の基準で暦年贈与を認めるので、贈与契約書などの証拠は必ず残しておきましょう。
1. 贈与契約書の取り交わしがあること
贈与者と受贈者で贈与契約書を取り交わしていれば、税務署も暦年贈与であったことを認めてくれます。110万円以下の財産を生前贈与する場合でも、以下の内容を記載して贈与契約書を作成しておきましょう。
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表題(贈与契約書)
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贈与者名
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受贈者名
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贈与財産の種類(現金や株式など)
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贈与財産の金額
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贈与日
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贈与方法
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契約日
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贈与者と受贈者の署名・捺印(実印)
贈与契約書は手書き・パソコン作成のどちらでも構いませんが、署名は必ず直筆で行い、実印を使用したことがわかるように印鑑証明書も添付しておきましょう。
2. 定期贈与に該当しないこと
定期贈与とは、まとまった金額(定期金といいます)の贈与を贈与契約書で取り決めておき、分割して贈与する方法です。
たとえば、「1,000万円を10回にわけて10年間かけて贈与する」といった贈与契約であれば、税務署は定期贈与とみなすでしょう。
暦年贈与であれば非課税ですが、定期贈与の場合は定期金(この例では1,000万円)に贈与税がかかるので注意してください。
3. 贈与の記録が残っていること
贈与した記録があると税務署も暦年贈与を認めてくれるので、現金贈与の場合は必ず銀行振込みを利用してください。振込みで贈与すると、誰が誰に、いつ、いくら送金したのかわかるため、暦年贈与した証拠になります。贈与を行う都度、贈与者・受贈者の双方で通帳に記しておくとよいでしょう。
4. 名義預金になっていないこと
受贈者名義の預金口座に贈与者が入金しても、受贈者が自由に使えない状態であれば、税務署が暦年贈与だと認めてくれない可能性があります。このような預金を名義預金といい、実質的な預金者(贈与者)の財産となるため、贈与は成立していないことになります。
名義預金の口座を開設しているときは、受贈者に通帳・キャッシュカード・印鑑を渡し、本人が自由に引き出して使える状態にしてください。入金するときは銀行振込みを利用し、贈与契約書も作成しておくとよいでしょう。
5. 贈与税申告していること
あえて贈与税申告することで、贈与だったことを税務署に証明してもらう方法もあります。111万円の贈与には1,000円の贈与税がかかるので、1,000円分の申告と納税で贈与を証明する考え方もあるでしょう。
ただし、贈与者が税務署に申告すると、「実質的に自分が管理している財産ではないか?」と疑われてしまうので、必ず受贈者が贈与税申告してください。贈与税申告だけでは贈与者・受贈者の合意を証明できないので、贈与契約書も作成しておきましょう。
まとめ
贈与者と受贈者の間で贈与の合意があっても、贈与とみなすかどうかは最終的に税務署の判断になります。生前贈与が認められなかった場合は相続財産に合算されるので、相続税対策としての効果も低くなってしまうでしょう。
生前贈与は租税回避(課税を逃れる行為)に使われるケースがあるため、税務署のチェックも厳しくなっています。無申告や過少申告には追徴課税のペナルティが科されるので、必ず贈与契約書を作成し、証拠が残る方法で贈与してください。税務署に指摘されない節税対策を検討している方は、相続や贈与の専門家にも相談してみましょう。



