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相続放棄

最終更新日:2023.07.31

産分割協議書では
相続放棄の手続きはできない!
手続きの流れとは?

遺産分割協議書では相続放棄の手続きはできない!手続きの流れとは?

このコンテンツでわかること

  • ■ 遺産を相続しない2種類の方法
  • ■ 相続分の放棄をしたときの遺産分割協議書の書き方
  • ■ 相続放棄したときの遺産分割協議書の書き方
  • ■ 相続放棄の手続きの流れ・必要書類

相続財産には負債も含まれるので、家族が多額の借金を残して亡くなったときは、相続人が返済義務を引き継ぐことになります。

ただし、相続放棄を選択すると権利義務を引き継ぐ必要がないため、預貯金や不動産などの財産は相続できませんが、借金の返済義務も免除されます。

では、他の相続人へ相続放棄する旨を伝える、または遺産分割協議書に「相続放棄する」と記載した場合、相続放棄が完了したことになるのでしょうか?

相続放棄は借金の返済に関わるため、疑問はすべて解消しておかなければなりません。そこで今回は、相続放棄と相続分の放棄の違い、具体的な相続放棄の手続きをわかりやすく解説します。

遺産を相続しない方法は2種類

遺産を相続したくないときは相続放棄、または相続分の放棄のどちらかを選択できます。相続放棄は相続人の地位を失うため、亡くなった方(被相続人)の権利義務は一切引き継ぎませんが、相続分の放棄は相続人の地位が残ります。

両者の違いは以下のようになっており、相続分の放棄は遺産分割協議書への記載のみとなりますが、相続放棄は家庭裁判所に申述しなければなりません。

  相続放棄 相続分の放棄
手続きの方法 家庭裁判所へ申述 遺産分割協議へ記載
手続きの期限 相続開始を知った日から3ヶ月以内 なし
遺産分割協議への参加 不要 必要
借金の相続 なし あり
相続権の移行 あり なし

どちらを選ぶとよいか迷ったときは、以下を参考にしてください。

相続放棄

遺産相続が以下のような状況だったときは、相続放棄を検討してみましょう。

  • 被相続人に多額の借金がある

  • 遺産相続に関わりたくない

相続放棄すると最初から相続人ではなかったことになるため、借金も含めた相続財産を引き継ぐ必要がなくなります

また、相続放棄は「相続開始を知った日から3ヶ月以内」に家庭裁判所へ申述しますが、単独手続きもできるので、他の相続人の同意は必要ありません。

なお、相続放棄した場合、自分の相続権は次順位の相続人へ移行するので注意が必要です。借金の返済義務も次順位の相続人に引き継がれてしまうので、事前に相続放棄する旨を伝えておくとよいでしょう。

相続分の放棄

相続分の放棄は「プラスの財産の放棄」となり、借金の返済義務は残るので、以下のような状況のときに検討してください。

  • 相続財産に借金がない

  • 特定の相続人に財産を集中させたい

  • 相続人同士の関係が円満

相続財産に借金がない、またはわずかな借金しかないときは、家庭裁判所に相続放棄を申述する必要はないでしょう。

相続分の放棄は相続権の移行がなく、プラスの財産の取り分のみ今現在の相続人に引き継がれるので、特定の相続人へ相続財産を集中させることも可能です。

ただし、関わりたくない相続人がいる場合でも、遺産分割協議には参加しなければなりません

相続分の放棄をしたときの遺産分割協議書の書き方

自分の相続分を放棄する場合、遺産分割協議書は署名捺印のみとなるため、「相続分を放棄する」または「相続放棄する」などの記載は不要です。

遺産分割協議書はパソコン作成でも構いませんが、署名を手書きにして実印を押印すると、各相続人の合意を証明できます。

では、亡くなった夫の相続人が妻と子供1人のケースで、子供が相続分を放棄したときの遺産分割協議書をみていきましょう。

遺産分割協議書の記載例

遺産分割協議書

最後の本籍地 東京都新宿区○○ ○丁目○番地○-○
最後の住所地 東京都新宿区○○ ○丁目○番地○-○
被相続人   朝日 太郎(令和○年○月○日死亡)

被相続人 朝日太郎の遺産相続につき、共同相続人が全員で遺産分割協議を行った結果、下記のとおりに遺産分割の協議が成立した。

1. 以下の相続財産は、被相続人の妻である朝日花子が相続する

(預金)○○銀行△△支店 普通預金 口座番号1234567
(土地)所在 東京都新宿区○○ ○丁目
    地番 1-2
    地目 宅地
    地積 250㎡
(建物)所在 東京都新宿区○○ ○丁目○番地○-○○
    家屋番号 1番1-2
    種類 居宅
    構造 木造瓦葺き2階建
    床面積  1階62.00㎡ 2階47.23㎡

2. 本遺産分割協議書に記載のない遺産および、本遺産分割の後に判明した負債を含む遺産については、朝日花子が全て相続する。

上記のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したことを証するために、この協議書を2通作成して署名捺印し、各自が1通を保管する。

令和○年○月○日

住  所 東京都新宿区○○ ○丁目○番地○-○
氏  名 朝日 花子 印
住  所 千葉県船橋市本町○丁目○番地○
氏  名 朝日 一郎 印 (相続分を放棄した人の署名捺印)

相続放棄したときの遺産分割協議書の書き方

すでに相続放棄している人は相続権がないため、遺産分割協議書には氏名を記載できません。また、相続放棄を予定している人が遺産分割協議に参加すると、自分が相続人であることを認める結果になり、単純承認が成立します。

単純承認の成立は相続する意思があるとみなされるので、相続放棄は認められなくなります。相続放棄の申述を予定している場合、遺産分割には関わらないように注意しましょう。

相続放棄の手続きの流れ・必要書類

相続放棄するときは、以下の流れで手続きを進めます。

  1. 相続財産の調査
  2. 必要書類の準備
  3. 家庭裁判所へ相続放棄を申述する
  4. 照会書の到着と回答書の返送
  5. 相続放棄申述受理通知書の到着

具体的な手続きは以下のようになっており、家庭裁判所への申述から概ね1ヶ月程度で相続放棄が完了します。

(1)相続財産の調査

相続放棄は財産調査からスタートするので、以下のように相続財産をすべて洗い出してください

  • 現金や預貯金

  • 不動産

  • 株式などの有価証券

  • 資産価値のある貴金属や美術品など

  • 被相続人の借金や未払金

プラスの財産には電子化された証券類やネット口座もあるため、被相続人あての郵便物やパソコンなども調査する必要があります。

借金は金銭消費貸借契約書や住宅ローン契約書などを調べるとわかりますが、残債については金融機関に確認しなければなりません。財産調査が完了し、プラスの財産をマイナス財産が大きく上回るようであれば、相続放棄を選択しましょう。

(2)必要書類の準備

相続放棄の必要書類は相続人の立場によって変わります。被相続人の子供が相続放棄するケースでは、以下の書類が必要です。

  • 相続放棄申述書

  • 被相続人の戸籍の附票または住民票除票

  • 相続放棄する人の戸籍謄本

  • 郵便切手

  • 800円分の収入印紙

相続放棄申述書には成年用と未成年用があり、家庭裁判所の窓口または裁判所のホームページで入手できます。

郵便切手は相続放棄照会書などの郵送用ですが、裁判所ごとに金額が違うので、事前に確認しておきましょう。

成人用の相続放棄の申述書(裁判所)
未成年用の相続放棄の申述書(裁判所)

(3)家庭裁判所へ相続放棄を申述する

相続放棄するときは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述します。必要書類は漏れなく提出しますが、相続開始を知った日から3ヶ月以内が申述期限になっているので注意してください。

なお、提出方法は直接持込み、または郵送のどちらでも構いませんが、申述期限が迫っているときは直接持込みが確実です。

各地の裁判所(裁判所)

(4)照会書の到着と回答書の返送

家庭裁判所へ相続放棄を申述すると、1~2週間後に相続放棄の照会書と回答書が申述人あてに送付されます。

照会書や回答書には相続放棄を選んだ理由、相続放棄が自分の意思かどうかなど、いくつかの照会事項があるので、すべて正直に回答してください。

回答書をすべて記入したら、速やかに家庭裁判所へ返送しておきましょう。

(5)相続放棄申述受理通知書の到着

家庭裁判所に回答書を返送すると、1~2週間後に相続放棄申述受理通知書が申述人あてに送付され、これで相続放棄の手続きは完了です。

なお、以下の書類を家庭裁判所に提出すると、相続放棄受理証明書を発行してもらえます。

  • 相続放棄受理証明申請書

  • 相続放棄申述受理通知書

  • 本人確認書類

  • 150円分の収入印紙

相続放棄したことを債権者などに証明したいときは、相続放棄受理証明書を提示してください。

相続放棄受理証明申請書の様式(裁判所)

まとめ

相続放棄と相続分の放棄は混同されているケースがあり、「遺産分割のときに相続放棄した」などの誤った解釈が少なくないようです。

相続分の放棄はプラスの財産だけしか放棄できず、借金の返済義務がそのまま残ってしまうので注意してください。

また、相続放棄は手続きの期限が短いため、3ヶ月以内に財産調査を行い、必要書類もすべて準備しなければなりません。

財産調査の時間を確保できないときや、相続放棄するかどうか迷ったときは、弁護士や税理士などの専門家に相談してみましょう。

税理士 桑原 弾
  • この記事の監修者

  • 税理士 桑原 弾

昭和55年生まれ、兵庫県出身。
大学卒業後、税務署に就職し国税専門官として税務調査に従事。税理士としても10年を超えるキャリアを積み、現在は「相続に精通した知識」と「元国税調査官としての経験」の両輪を活かして相続税申告を実践している。

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