遺言執行者(遺言執行人)とは
遺言執行者とは、相続で遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。
遺言執行者になれる人
遺言執行者は、未成年者や破産者以外であれば、誰でもなることができ、法人や団体でも遺言執行者になれます。
たとえ、その相続における相続人であっても遺言執行者になることはできますが、相続に関する知識や実務経験がないと難しい手続きもあるため、一般的に弁護士や司法書士、税理士といった専門家に依頼する人が多くなっています。
遺言執行者を選任するメリット
遺言執行者を選任することで、相続財産の管理・分割を任せられるため、明確かつ確実に実行できます。また、執行者は単独で相続手続きを進められるため、相続人全員で協力する必要がなく、スムーズに遺産を分割できます。
なお、遺言書の内容と異なる分割をする場合には、遺言執行者の同意が必要となるため、遺言書の内容が実行される可能性が高くなります。この点は遺言執行者を選任するメリットと言えるでしょう。
遺言執行者を選任する必要があるケース
遺言書の内容を実行する上で、遺言執行者にしかできない手続きがあります。以下の場合には、必ず遺言執行者の選任が必要となるので注意しましょう。
認知したい子供がいる場合
被相続人に法律上の婚姻関係にない女性との間で生まれた子供がいる場合、遺言によって認知することも可能ですが、遺言認知の手続きをできるのは、遺言執行者のみです。
遺言執行者は、就任の日から10日以内に認知の届け出を役所にする必要があります。
なお、女性の場合、子供が生まれた時点で法的な親子関係が生じるとされているため、女性には認知するかどうかの問題は生じません。従って、基本的に遺言による認知は被相続人が男性であるときに問題となります。
廃除したい相続人がいる場合
廃除(相続権を剝奪<はくだつ>)したい相続人がいる場合、生前に廃除できますが、遺言によって廃除することも可能です。遺言廃除は家庭裁判所へ廃除の申し立てを遺言執行者が行います。
また、生前に行った廃除を遺言で取り消すこともできます。この場合も、遺言執行者が家庭裁判所へ申し立てを行います。
遺言執行者の決め方
遺言執行者の決め方は、以下の方法があります。
遺言書で指定する
遺言執行者は、遺言書で指定できます。
遺言書で決める場合、遺言執行者の氏名・住所・生年月日、遺言執行の範囲(権限の範囲)を遺言書に記載します。遺言執行者に報酬を支払う場合は、その金額も記載しておきましょう。
なお、指定した遺言執行者が亡くなったときに備えて、第2順位の遺言執行者の指定や複数人の遺言執行者の指定、法人を遺言執行者に指定することも可能です。
遺言執行者が決まらない場合や、相続発生時の状況に合わせて適任者を選びたいときは、第三者に遺言執行者を決めてもらうよう遺言書に書いておくこともできます。
家庭裁判所による選任
以下のような状況であれば、家庭裁判所に遺言執行者の選任の申し立てを行いましょう。
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遺言執行者の業務遂行能力が失われている(認知症など)
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遺言執行者が死亡している
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遺言書で指定された人が遺言執行者になることを拒否した
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遺言執行者が解任された(業務の怠慢など)
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第三者が遺言執行者を決めようとしたが、すべて拒否された(または適任者がいない)
遺言執行者はさまざまな相続手続きに対応するため、相続に関する基本的な知識のない人には、少々荷が重いでしょう。
信頼のおける人であっても、相続財産の調査や戸籍謄本などの収集の経験がなければ何から始めればよいかわからず、手続き業務が滞ってしまうこともあります。
身近に適任者がいない場合は、弁護士や司法書士などの専門家を遺言執行者として選定することをおすすめします。相続の専門家であれば安心して遺言執行を任せられ、中立的な第三者であるため、他の相続人の納得も得やすいでしょう。
遺言執行者の業務の流れ

相続財産の内容や、相続人の状況に応じて遺言執行者の業務は異なりますが、就任から業務終了までの大まかな流れは以下のようになります。
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遺言執行者就任の通知
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相続財産の調査
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相続人の範囲の確定
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財産目録の作成
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預貯金口座解約
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相続登記
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その他の業務
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業務の終了報告
では、各業務についての具体的な内容をみていきましょう。
遺言執行者就任の通知
遺言執行者に選任され、本人が就任を承諾した場合、まず遺言執行者就任通知書を作成して、相続人全員に周知しなければなりません。
相続財産の調査
相続が発生したときは、被相続人のすべての財産を調査して、洗い出します。相続の対象となる財産には預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も含まれます。
遺言執行者は、遺言内容を実現するために相続財産を漏れなく把握しなければなりません。
相続人の範囲の確定
誰が相続人になるのかも特定しなければなりません。相続人の特定は、被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍謄本などを収集して確認を行います。
相続人の確認作業は戸籍に関する知識も必要なため、慣れていない人にはハードルの高い作業といえます。
財産目録の作成
相続財産の調査が終わったら、財産目録を作成して相続人全員に送付します。なお、財産目録を送付する際は、遺言書の写しも添付しておきます。
預貯金口座解約
戸籍謄本などの必要書類が揃ったら、遺言書に従って遺産を分割しましょう。
預貯金口座が普通預金の場合、解約手続き後に解約金が相続人名義の口座へ振り込まれます。口座が定期預金の場合は、名義を変更して満期まで継続させることもできます。
相続登記
相続財産に土地や建物などの不動産がある場合、相続した人の名義に変更する必要があります。この手続きを相続登記といいます。
相続登記の手続きは法務局で行いますが、必要となる書類が多いため、司法書士などの専門家でなければ難しい手続きとなっています。
その他の業務
必要に応じて、年金や公共料金の支払いの停止、株式や自動車の名義変更の手続きなどにも対応しなければなりません。
業務の終了報告
すべての業務が終了したときは、相続人全員に書面で終了報告を行います。
まとめ
遺言執行者になれる人の法律上の制限は多くないものの、実務面を考えると適任者はかなり限定されてしまいます。
特に仕事や育児、介護などで忙しい人は時間の制約がありますし、たとえ時間に余裕がある方でも、相続に関する知識がある程度ないと大きな負担になるでしょう。実際に、遺言執行者に指定されたものの、何をしたらいいかわからないというご相談を受けることもあります。
また、相続人のうちの1人を遺言執行者にした場合、他の相続人とトラブルになる可能性もあります。
家族に負担をかけずに、遺言書どおりの相続を実現したい場合は、弁護士や司法書士などの専門家を選任した方がいいでしょう。充実したサポートが受けられるよう、遺言書の作成段階から相談しておくことをおすすめします。



