非嫡出子とは
婚姻関係にない男女間の子供を非嫡出子といい、婚姻関係にある夫婦間の子供を嫡出子といいます。母親と非嫡出子の親子関係は確実ですが、法律上は父親との親子関係がないため、父親が亡くなっても遺産相続には参加できません。
非嫡出子は父親の実子でありながら、法律上は他人として扱われるため、財産を遺したいときは認知する必要があります。
では、認知された非嫡出子が父親の相続にどう関わるのか、具体的な内容をみていきましょう。
非嫡出子の相続割合は嫡出子と同じ
非嫡出子に父親の相続権はありませんが、認知すると法律上の父子関係が成立するため、夫婦間の嫡出子と同じ相続割合で遺産相続できます。また、相続人になれる人を法定相続人といい、民法によって親族の範囲や優先順位が定められています。
かつての民法では非嫡出子の法定相続分を嫡出子の1/2としていましたが、2013年9月4日の最高裁判決によって違憲とされ、2013年12月5日には民法も改正されました。
では、非嫡出子の相続割合が認知の有無によってどう変わるか、相続の基礎知識とともに解説します。
法定相続人と法定相続分
法定相続人の範囲と優先順位、法定相続分(遺産の取得割合)は以下のように定められています。
【法定相続人】
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配偶者は常に相続人となる
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第1順位:被相続人の子供
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第2順位:被相続人の親
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第3順位:被相続人の兄弟姉妹
【法定相続分】
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配偶者と子供が相続:配偶者1/2、子供1/2
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配偶者と被相続人の親が相続:配偶者2/3、親1/3
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配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
認知された非嫡出子は嫡出子と同じ立場になるため、父親が亡くなったときは第1順位の相続人となり、遺産総額の1/2を取得する権利があります。なお、法定相続分はあくまでも目安であり、相続人全員の同意があれば、異なる割合で遺産分割しても構いません。
非嫡出子が相続するときの具体例
非嫡出子がいる場合の相続について、認知の有無によって各自の取得分がどう変わるか、具体例を解説します。
【相続発生状況】
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父親が死亡(非嫡出子が1人いる)
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相続財産:6,000万円
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相続人:配偶者と嫡出子1人
このケースでは配偶者と嫡出子が1/2ずつ相続するため、それぞれ3,000万円を取得しますが、非嫡出子が認知されていると以下のようになります。
【相続発生状況】
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父親が死亡
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相続財産:6,000万円
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相続人:配偶者と嫡出子と非嫡出子
この場合、配偶者の相続割合は1/2のままですが、第1順位の相続人が2人になったため、各自の相続分は以下のようになります。
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計算式
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配偶者の相続分:6,000万円×1/2=3,000万円
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計算式
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嫡出子および非嫡出子の相続分:6,000万円×1/2×1/2=それぞれ1,500万円ずつ
非嫡出子がいるときの相続税
相続税は基礎控除を超えた部分に課税されますが、控除額は以下のように計算します。
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計算式
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相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
非嫡出子が認知されておらず、父親の配偶者と嫡出子1人が相続人になる場合、基礎控除額は以下のようになります。
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計算式
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控除額:3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円
このケースでは、遺産総額が4,200万円を超えたときに相続税が発生します。ただし、非嫡出子が認知されると法定相続人になるため、基礎控除額は600万円高くなります。
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計算式
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控除額:3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円
非嫡出子が相続人に加わったことで、夫婦間の嫡出子の取得分は減少しますが、基礎控除額が高くなったため、各自の税負担は軽減されます。
非嫡出子の相続分が嫡出子と同様にならないケース
非嫡出子と嫡出子の相続分は2013年9月5日から同一となりましたが、以下2つの条件に該当するケースは旧民法が適用されるため、嫡出子の1/2となります。
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2001年7月1日から2013年9月4日の間で発生した相続
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遺産分割協議または審判等により各自の取得分が確定している
民法改正のきっかけとなった相続事案は2001年7月1日に発生しており、2013年9月4日の最高裁判決で違憲とされています。したがって、基本的には上記の期間で発生した相続でも、非嫡出子の相続分は嫡出子と同じになりますが、合意の上で確定した内容には旧民法が適用されます。
ただし、相続の発生時期によっては例外的な扱いもあるため、判断に迷うときは専門家に相談してみましょう。
遺産分割協議後に非嫡出子の存在がわかったときの対処法
父親が非嫡出子の存在を伝えずに亡くなった場合、遺産分割協議後に非嫡出子の存在が判明するケースもあります。遺産分割協議は相続人全員の参加が原則となっているため、非嫡出子が認知されていたときは協議内容が無効となり、遺産分割協議のやり直しとなります。
父親の戸籍謄本を調べておけば認知された非嫡出子を見逃すこともありませんが、「相続人は調べなくてもわかる」との理由で戸籍調査を行わないケースもあります。非嫡出子不在の状況で遺産分割協議をまとめても、各機関(銀行など)が相続手続きに応じてくれないため、相続人全員の参加は絶対条件です。
非嫡出子を認知しておらず、家族にも伝えにくい状況であれば、遺言書で認知しておきましょう。
非嫡出子との相続トラブルを避ける方法
父親の配偶者や嫡出子にとって、非嫡出子は血のつながりがなく、相続財産を減少させる原因にもなるため、決して歓迎できる存在ではないでしょう。
非嫡出子は嫡出子側の家族とトラブルになりやすく、いつまで経っても遺産分割が決着しない可能性もあるため、以下の方法でトラブルを回避してください。
遺言書で非嫡出子に財産を遺す
遺言書では財産の承継者を自由に決定できるため、非嫡出子を受遺者(遺言によって財産を受け取る人)にすると確実に財産を遺せます。一定要件を満たした遺言書には法的効力があるため、原則として遺言内容に従わなければなりません。
ただし、法定相続人以外が受遺者になると、相続税の2割加算が適用されるので注意が必要です。また、非嫡出子の取り分を多くすると、配偶者や嫡出子の遺留分を侵害する可能性もあるため、遺留分の返還をめぐってさらに関係が悪化するかもしれません。
非嫡出子がいるときは遺言書の書き方も複雑になるため、困ったときは専門家に作成を依頼してみましょう。
生前に非嫡出子を認知する
非嫡出子は遺言書でも認知できますが、できれば生前に認知の手続きを行い、配偶者や嫡出子にも存在を伝えておくことをおすすめします。現在の家族関係に悪影響を及ぼす可能性もあるため、判断の難しいところですが、いずれ誰もが知ることになる事実です。
一時的な混乱はあるかもしれませんが、事情がわかった上での相続であれば、家族も気持ちを整理しやすいでしょう。
弁護士に代理人を依頼する
非嫡出子の存在は嫡出子側の相続財産を減少させてしまうため、「相続させたくない」との思いから、遺産分割協議に参加させないケースもあります。しかし、認知されていた場合は法定相続人となるため、接触を拒むと相続自体が凍結してしまい、お互いにとって不利益が生じる結果となります。
非嫡出子との接触に抵抗があるときは、弁護士に代理人を依頼してください。弁護士は依頼者の代理人として活動しますが、法律だけではなく交渉においてもプロフェッショナルです。法的理論を駆使して現実的な解決策を提案してくれるため、裁判に発展することなくトラブルの解決に近づくでしょう。
まとめ
非嫡出子は法律上の立場が強固ではないため、財産を遺したいときは何らかの対策が必要となります。配偶者にとっては夫の婚姻関係外の子供であり、嫡出子にとっては異母兄弟や姉妹になるため、非嫡出子の存在には複雑な思いがあるでしょう。
しかし、認知されていれば法定相続人になれるため、嫡出子と同等の権利を持つことになります。生前に認知できない事情があれば遺言認知も可能ですが、いずれも父親がキーマンであり、父親が行動を起こさなければ何も解決しません。
関係者が複雑になると遺言書の書き方も難しくなるため、非嫡出子がいる相続で困ったときは、早めに相続問題に強い弁護士に相談してください。



