
コロナパンデミックと日本人のキャッシュレス変化【後編】
株式会社電通 事業共創局 新産業開発部
電通キャッシュレスプロジェクト主宰
吉富 才了
コロナ(COVID-19)ショックによって、人々の生活は大きな変化を余儀なくされています。
ロックダウンやソーシャル・ディスタンシングといった行動制限によって、キャッシュレスの意識や行動にも変化が出てきているのではないでしょうか。
独自に実施した「キャッシュレスに関する意識調査」をベースに、『コロナショックとキャッシュレス意識の変化』というテーマで、パンデミックにより生活者の決済手段がどのように変化し、今後何が主流になるのか、生活者のキャッシュレスに対する意識の変化を見ていきたいと思います。今回は後編で、「非接触決済の可能性」についてみていきます。
現金やATMの利用に対する強い抵抗感
新型コロナウィルスの感染予防から、クレンリネスや衛生面がフォーカスされる中、決済においても人々は同様の意識を持っているのでしょうか。調査では、現金やその他決済手段を使うことにどの程度抵抗があるか聞いてみました。
現金については、「とても抵抗がある」、「やや抵抗がある」で合計48.7%。およそ2人に1人は、利用に抵抗があると思っているということがわかりました。ATMについても、「とても抵抗がある」、「やや抵抗がある」の合計39.6%が利用に抵抗があるという回答で、現金とほぼ同等の感覚で抵抗があるという人が多くみられました。
カードは署名方式と暗証番号入力方式のふたつの「従来型」キャッシュレスについて聞いてみました。署名方式に衛生的な抵抗があるという人の合計は23.7%、暗証番号入力方式は23.2%という結果でした。感染の恐れを感じてか、レジ係とのカードやボールペンなどの受け渡し、決済端末のPINパッドへの接触などに抵抗感があるのかもしれません。
その点、かざすだけでよい電子マネーやモバイル決済などの「非接触」は、抵抗感が低いことがわかりました。例えば、電子マネーは、「あまり抵抗がない」と「まったく抵抗ない」を足すと88.2%、同様にモバイルQR/バーコード決済も両者を足すと86.8%、モバイル非接触決済<タッチ式>も85.3%と、大多数を占めています。

ソーシャル・ディスタンシングと非接触決済
一方、世界に目を向けてみると、COVID-19による感染不安で、感染の恐れがあるものには触れたくない、という意識が高まっています。
こうした中、よりスピーディかつ清潔なキャッシュレス決済手段として世界的に注目を集めているのが、非接触決済(カード、電子マネー、モバイルなどのタッチ式決済)です。大手クレジットカード会社による最新の調査結果(※)によると、世界では、生活必需品の購入で79%が非接触決済を利用しており、全体の82%の人が他の決済手段にくらべて清潔だと感じています。
では、日本の生活者の非接触決済に対する意識はどうでしょうか。今回の調査の中で「今後、使う回数が増えると思いますか」と聞いたところ、「増えると思う」という回答が71.2%を占め、約3人に1人は、「とても増えると思う」(33.0%)と回答しました。急速にキャッシュレスが推進されているものの、いまだ海外と比較すると低水準と評される日本。その日本においても、ソーシャル・ディスタンシングを背景に、生活者の非接触決済へのニーズが急速に増大していることがうかがえます。
※Mastercard Global Consumer Study
世界19カ国17,000人を対象にしたオンライン調査。日本は調査対象外。調査期間は4月10〜12日。

決済だけに留まらない非接触サービス・ニーズの高まり
ソーシャル・ディスタンシングを背景に脚光を浴びているのは、決済だけではありません。外出の自粛などでフードデリバリーを使う人も増えています。そこで注目されているのがモバイルオーダー。商品をスマートフォンで注文し、事前に支払いを済ませて店頭で商品を受け取ったり、デリバリーしてもらったりするサービスです。店員との接触を減らせる上に現金やりとりの必要もありません。このモバイルオーダーについても、4人に1人(23.9%)が「利用している」と回答、「今後利用してみたい」も含めると、全体の約7割を占めました。

モバイル決済事業者もこういった領域に注目して、より一層展開していくのではないでしょうか。中国のAlipayやWeChatなども「ミニプログラム(アプリ内で動くミニアプリ)」を活用して、こうしたサービスを広げています。このようなモバイルオーダーの利用意向も、モバイル決済を中心としたキャッシュレス促進の追い風になると考えられます。
非接触による日本のキャッシュレス社会の未来
COVID-19によって、消費者の意識と行動はどう変わったのか。それは決済にどのような変化をもたらすのか。今回の調査結果からは、このパンデミックをきっかけに、日本人のキャッシュレス意識にパラダイムシフトの兆しが見えてきました。ソーシャル・ディスタンシングを背景に、決済にも「清潔さ・衛生面」「スピード」という生活者ニーズが台頭し、非接触決済への関心が高まっています。モバイルオーダーのような消費スタイルの変化もそうですが、キャッシュレスが生活習慣の1つとして根付こうとしている兆しや日本人のキャッシュレス意識の変化を感じています。
今後も生活者のライフスタイルは変化し続けると思われます。そうした中、非接触決済は、今後の日本のキャッシュレス社会の成長ドライバーとなるのか。加えて、コロナショックのソリューションとして、奏功し続けるか、日本のキャッシュレスがより一層加速していくのが楽しみですし、今後も見ていきたいと思います。




