マンガ大賞 『ゴールデンカムイ』/野田サトル(集英社)

ゴールデンカムイ 1巻の表紙。主人公の杉元佐一が銃を構え、背景には北海道の大自然が広がる。

『ゴールデンカムイ』(c)野田サトル/集英社

受賞コメント

 アーノルド・シュワルツェネッガー、シルベスター・スタローン、ジョン・トラボルタなどの筋肉俳優の映画ばかりを観て育ち、ベッドに寝ると「ランボー3怒りのアフガン」のポスターが天井に貼ってある、そんな幼少時代を過ごし、男はかくあるべきと信じてまいりました。
 当時、漫画界も筋肉信仰が席巻し、筋骨隆々の臭そうな男たちの作品が揃っていましたが、時代が移り変わるにつれ、もてはやされる主人公像が清潔で中性的なものへとなってゆくのに肉離れのような違和感を抱きつつ生きてまいりました。
 栄誉ある賞を頂きありがとうございました。これもひとえに男たちの美しい肉体を妥協なく描き続けた結果、その激しいトレーニング後の筋肉から放たれるような熱が審査員の方々に伝わったのだと、感無量の思いでございます。

『ゴールデンカムイ』のキャラクターイラスト3枚のコラージュ。左のイラストは、アシリパがメガネをかけて猟装備を身につけた姿。中央は、杉元佐一が躍動感あるポーズでライフルを構えるモノクロのシーン。右のイラストには、野田サトル先生のサイン風に「ゴールデンカムイ」と描かれ、メガネをかけた自画像と思われる画とアシリパが登場し、手塚治虫文化賞大賞ありがとうございますと記されている。

『ゴールデンカムイ』(c)野田サトル/集英社

鉢巻をして疲れた様子の野田サトル氏の自画像。

◆のだ・さとる◆ 北海道北広島市出身。2003年に「別冊ヤングマガジン」(講談社)掲載の読み切り『恭子さんの凶という今日』でデビュー。 11~12年に「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で『スピナマラダ!』を連載。14年より同誌にて『ゴールデンカムイ』を連載中。

 

新生賞 『BEASTARS』/板垣巴留(秋田書店)

擬人化された動物たちを描く『BEASTARS』(秋田書店)の独自の世界観と清新な表現に対して

BEASTARS 1巻の表紙。主人公のレゴシが制服を着て立っており、背景にはBEASTARSのアルファベットが並んでいる。

「BEASTARS」(c)板垣巴留/秋田書店2017

受賞コメント

 ビースターズは「面白い」より先に「新しい」という評価をいただくことが多く、私はそれが少し不安でした。娯楽のはずの漫画のあり方として、これで大丈夫だろうか? と考えていたのですが、この度このような大きな賞から”新生賞”を頂き、すごく励まされたような気持ちです。
 驚かせたり怖がらせたり、共感させたり、漫画は娯楽でありながらも、常に読者さんの心に触れることに挑戦し続けるべきだと再認識しております。
 これからも自分の持ち味を生かし、ヒトの心に恐る恐る、でもしっかりと接触したいと思います。どうもありがとうございました。

左側は漫画『BEASTARS』の緊迫したシーン。オオカミのレゴシがウサギのハルを抱え込み、「抱くか…食べるか…あなたが決めるの」というセリフが描かれている。モノクロでダークな雰囲気が漂う。右側はカラーイラストで、レゴシがベレー帽をかぶり、おしゃれな服装で座っている。背景には「手塚治虫文化賞 新生賞 BEASTARS ありがとうございます!」という文字が描かれ、受賞を祝う雰囲気が表現されている。

『BEASTARS』(c)板垣巴留/秋田書店2017

いたがき・ぱるの自画像として描かれている。アヒルのような大きな黄色い頭を持つキャラクターのイラスト。茶色の長袖シャツと青いズボンを着ており、両手で頭を支えるようなポーズをとっている。柔らかい水彩風のタッチで描かれ、ユーモラスでかわいらしい雰囲気がある。

◆いたがき・ぱる◆1993年9月9日生まれ。2016年漫画家デビュー。「週刊少年チャンピオン」で、読み切り連作『BEAST COMPLEX』を4週連載したのち、『BEASTARS』で本格連載開始。

 

短編賞 『大家さんと僕』/矢部太郎(新潮社)

矢部太郎氏の作品、「大家さんと僕」の表紙絵。大家さんらしき人物と主人公が握手している姿が描かれている

『大家さんと僕』(c)矢部太郎/新潮社

受賞コメント

 後にも先にも誰かのファンクラブに入会したのは手塚治虫先生だけです。小学生の頃のことです。大好きな鉄腕アトムの下敷きを使っていたのですが、使いすぎて折れたり、めくれた角をセロハンテープで補強したり、下敷きとして成立していないくらいぼろぼろでした。
 中学生になって友達ができず教室には居場所がなくて、休み時間はよく図書室にいました。そこに唯一置かれていた漫画が『火の鳥』で、読んでいると、学校や自分をすごく遠くから見ることができて救われました。
 僕のようなものが描いた作品を評価していただき、本当にありがとうございます。『大家さんと僕』は手塚先生のひとつ年下になる女性のおかげで描けました。一緒に喜べる人がいるということは、この上ないしあわせだと思います。

左側はモノクロの4コマ漫画で、登場人物が仏壇のろうそくを吹き消そうとするが、それが誕生日ケーキではなく仏壇用のろうそくだった、というユーモラスな展開。右側はカラーのイラストで、大家らしき人物と主人公が柔らかいタッチの手書き文字と共に、家族や故郷について語る内容が描かれている。

『大家さんと僕』(c)矢部太郎/新潮社

矢部太郎さんの正面写真

◆やべ・たろう◆ 1977年東京都生まれ。97年にお笑いコンビ「カラテカ」を結成。ボケを担当。デビュー早々、「進ぬ!電波少年」で注目を浴びる。最近は舞台やドラマ、映画などで俳優としても活躍中。絵本作家の父の影響で、昔から絵を描くことは好きだった。本書は初めて描いた漫画。

 

特別賞 『ひねもすのたり日記』/ちばてつや(小学館)

18年ぶりの単行本『ひねもすのたり日記』(小学館)刊行と、長年の業績、マンガ文化への貢献に対して

漫画『ひねもすのたり日記』第1巻の表紙。古びた服を着た少年が大きな荷物を背にして笑顔で立っている。背景には、船に乗っている人々が集まり、陸地を見て騒いでいるような絵。タイトル「ひねもすのたり日記」と著者名「ちばてつや」と書かれている。

「ひねもすのたり日記」(c)ちばてつや/小学館

受賞コメント

 60歳で夭逝された手塚御大(当時みんながそう呼んでいた)を実年齢で追い越してから随分経ちますが、いまだにその偉大な背中を追いかける日々です。
 自分の半生や近況などをとりとめなく綴った『ひねもすのたり日記』という作品で、その尊敬すべき先輩の名前を冠した賞を頂戴し、面映ゆくも誇らしい気持ちで一杯です。

左側は漫画『ひねもすのたり日記』の一場面で、モノクロで4コマの漫画が描かれている。主人公の少年が驚いた表情をしており、大勢の人々が船の上から「内地(日本の国)が見える」と叫んでいる姿が描かれている。右側はカラーイラストで、ちばてつやのキャラクターたちが集まっている。中央の人物は、自画像と思われ、オレンジ色のシャツを着た眼鏡の男性、周りには笑顔の女性、帽子をかぶり荷物を背負ったちば少年、犬や猫たちが描かれ、温かい雰囲気が伝わる。

『ひねもすのたり日記』(c)ちばてつや/小学館

ちばてつやの自画像。白髪で眼鏡をかけにこやかな顔だけの絵

◆ちば・てつや◆ 1939年、東京都生まれ。56年、単行本作品でデビュー。『ママのバイオリン』雑誌連載、『ちかいの魔球』で少年誌連載。主な作品に『みそっかす』『あしたのジョー』『のたり松太郎』など。文星芸術大学教授、日本漫画家協会理事長。