マンガ大賞 『その女、ジルバ』/有間しのぶ(小学館)

その女、ジルバの書影。中央に書名と英語タイトルJitterbug The Fortiesと作者名、下に5人のホステスがドレス姿で踊る様子、上に主人公・笛吹新が白いドレス姿で笑顔を浮かべている

『その女、ジルバ』(c)有間しのぶ
/小学館/ビッグコミックオリジナル

受賞コメント

 まさか、手塚治虫先生の名を冠した賞、それも大賞をいただけるなんて、まだ信じられません。いったいどれだけ手塚作品に育てられてきたか。好きな作品、好きなキャラクターだけで何日話せるか。知らせを聞いてから、毎日陶然としています。気を引き締めて、これからも自分の中の物語を追求していきたいと思います。
 受賞作の『その女、ジルバ』は、時々脳みそから水が出るんじゃないかと思うしんどさもありましたが、その分調べるのも描くのも面白く、たくさんの人に助けられた幸せな作品です。
 ネームを作らず、打ち合わせもほとんどしない私の勝手を、大きな度量で見守ってくださった担当の白石さん中村さんのお二人、「ビッグコミックオリジナル」編集部には心から感謝しています。ありがとうございました。

イラストは2枚。左は主人公・笛吹新が赤いドレス姿で喜んでいる。「手塚治虫文化賞大賞ありがとうございます」の手書き文字。右は主人公・笛吹新が手塚治虫作品のキャラクターの百鬼丸、写楽保介らと踊る様子。

受賞記念イラスト(c)有間しのぶ/小学館/ビッグコミックオリジナル

イラストは2枚。左は赤いドレスを着て花束とグラスを手にする初代ママ・ジルバの肖像。右は登場人物8人のキャラクター。

『その女、ジルバ』(c)有間しのぶ/小学館/ビッグコミックオリジナル

作者のモノクロ・線画の自画像。肩までの髪の先がカールし、両腕で2匹の猫を抱いている。

◆ありま・しのぶ◆ 福島県会津若松市出身。現役女子高生時代に『本場ぢょしこうマニュアル』で「週刊ヤングマガジン」(講談社)にてデビュー。4コマ、ストーリー、ギャグ、BLなど様々なジャンルを描く。また文章でのストーリーや原作、俳句も手がける。趣味は散歩と愛猫との昼寝。

 

新生賞 山田参助

『あれよ星屑』(KADOKAWA)で、歴史の光と闇、人間の欲や業を鮮烈に描いた力量に対して

書影。書名と作者名、神社と鳥居の前に立つカーキ色の軍服を着た復員兵黒田門松(左)と茶色のコートを着た川島徳太郎(右)。

『あれよ星屑』(c)山田参助/KADOKAWA

受賞コメント

 戦後生まれの自分が先の戦争を描くことで、もっと叱られたりするんではないかと想像していましたが、『紙の砦(とりで)』の作者である手塚御大の栄誉ある賞をいただき救われた思いです。
 過去を生きた人々に対して「現代の私たちと変わらない」、また逆に「彼らは現代の日本人が失った何かを持っているのだ」と考えすぎることにも躊躇(ちゅう・ちょ)があり、現代の自分たちにはのみ込みにくい感覚をそのまま漫画に持ち込むことは「わかりにくいこと」として嫌われる要素だと思われますが、そんな拙作の「のど越しの悪さ」を乗り越えて選んでいただけたことに感謝しかありません。
 ありがとうございました。

復員兵の格好をした黒田門松があぐらをかいて座っている。鼻息が荒い。周囲に一升瓶、缶詰、バター、リンゴ、バナナが置いてある。「あれよ星屑手塚治虫文化賞新生賞ありがとうございます。山田参助」の手書き文字。

受賞記念イラスト(c)山田参助/KADOKAWA

イラストは3枚。左は黒田門松と川島徳太郎のバストアップ。手前がひげ面でカーキ色の軍服姿で正面を向いた黒田、背後に茶色のコート姿で髪を七三に分けた右向きの川島。中央は手前に、銃を手に立つ横向きの黒田門松、その奥に座るもう一人の兵士、砂色の大地の遠景に山脈が見える。右は闇市がにぎわう様子。手前に闇市に背を向けたコート姿の川島徳太郎の上半身。

『あれよ星屑』(c)山田参助/KADOKAWA

作者のモノクロ・線画の自画像。坊主頭で度の強い黒縁めがね、無精ひげ。口元を引き締め、大きな鼻から息が出ている。

◆やまだ・さんすけ◆ 1972年大阪生まれ。94年に月刊誌「さぶ」(サン出版)でデビュー。以後、風俗誌、実話誌などで執筆。2013年から初長編『あれよ星屑(ほし・くず)』を「月刊コミックビーム」(KADOKAWA)で連載し、反響を呼ぶ。その他の作品に『ニッポン夜枕ばなし』(リイド社)など。

 

短編賞 『生理ちゃん』/小山健(KADOKAWA)

書影。書名と作者名、玄関で中に向かって片手をあげている、月経を擬人化したハート型に手足のあるキャラクター。玄関内には傘、靴が2足、右のシュークローゼットの上にサボテンと鍵の入った皿がある。

『生理ちゃん』(c)小山健/KADOKAWA

受賞コメント

 学生の頃から漫画が好きで絵を描いていたのですが、古本屋で父親が買ってきた藤子不二雄A先生の『まんが道 愛蔵版』を読んで、ぼくは漫画家になる夢を新たにするのではなく、なんて大変そうな職業なんや……漫画が恋人やとか言うとるし……こんなん絶対いやや(ふつうに人間の恋人ほしいし)、漫画家になるのはやめよう、と思いイラストレーターを目指すようになりました。満賀道雄と同じようには手塚治虫先生に憧れられなかったのです。
 晴れてイラストの仕事をしていたはずなのですが、いつのまにか『生理ちゃん』という漫画を描くようになりました。テーマ的に眉をひそめられることもなくはないのですが、手塚治虫先生は生前「漫画に必要なのは風刺と告発の精神」と発言されていたらしく、そのことがとても心強い金言となっています。

黄色い二人がけソファーに座る生理ちゃんと女性。女性はグリーンのクッションを使い、頭にピンクのリボンを四つつけ、赤い靴にすねまでロールアップしたジーンズ、白地のシャツにネックレスをしている。手塚治虫のキャラクター、ピノコの成長した姿と思われる。

受賞記念イラスト(c)小山健/KADOKAWA

イラストは3枚。左はベッドの上でパジャマ姿で生理ちゃんを抱き上げている女性の様子。中央は「生理パンチ」を繰り出す生理ちゃん、ドアからはいってくる生理ちゃん。

『生理ちゃん』(c)小山健/KADOKAWA

作者の自画像。丸い輪郭に単純化した目鼻口耳。口を少し開けて笑っている。髪と頰を黄色に彩色。

◆こやま・けん◆ 2014年『手足をのばしてパタパタする』(KADOKAWA)から活動を開始。17年に『お父さんクエスト』(ポプラ社)、18年に『生理ちゃん』(KADOKAWA/Webマガジン『オモコロ』連載)が大きな話題を呼び、19年に実写映画化。

 

特別賞 さいとう・たかを

代表作「ゴルゴ13」の連載50年達成と、長年にわたるマンガ文化への貢献に対して

書影。左に書名と巻数192、右上に作者名と「軍隊をもたぬ国」のタイトル、ビル群と屋上らしき場所を背景にゴルゴ13の横顔。短髪、太い眉、通った鼻筋細い目に小さな瞳、頰に刻まれたしわ、引き締まった口元、しっかりしたあご。

『ゴルゴ13』(c)さいとう・たかを/リイド社

受賞コメント

 若い頃、映画マニアで映画製作の道に進みたかった私は、家庭の事情で進学出来ず、その世界には大卒でないと入れないと知り悩んでおりました。そんな時、手塚先生の『新寶島』と出会いました。「これは紙で映画をこしらえられる!」と衝撃でした。
 それ以来、家業を継ぎつつ親の目を盗み作品を描き、18歳で大阪の小さな出版社からなんとかデビューすることが出来ました。手塚先生はまさに大恩人です。
 あれから64年になります。体力の衰えはいかんともし難いですが、この名誉ある手塚治虫文化賞特別賞の受賞を「ここまでやってきたんですから、もう少し続けてみたらどうですか」という手塚先生からの励ましのお言葉として、やれる限り頑張りたいと思います。ありがとうございます。

イラストは2枚。左は手書き文字で「手塚治虫文化賞特別賞受賞感謝感謝! ゴルゴ13連載50周年 御年83才になったはず」と書かれ、左上に歳をとったゴルゴ13の顔、右下に茶色のジャケット、パンツでグリーンのシャツを着たさいとうたかをが驚いている様子が描かれている。左下にはサインと落款。右はゴルゴ13の表情をした鉄腕アトムが右手を突き出したポーズで飛び上がっていく様子。左下にサインと落款。 

受賞記念イラスト(c)さいとう・たかを

左のゴルゴ13はM16自動小銃を手にしている。左から2枚目は室戸十兵衛、日光、月光の影狩り三人衆の顔、左から3枚目の無用の介は黒馬の上で刀を振っている、左から4枚目の長谷川平蔵は陣笠をかぶり十手を手にしている。

左から『ゴルゴ13』(c)さいとう・たかを/『影狩り』(c)さいとう・たかを/『無用ノ介』(c)さいとう・たかを/『鬼平犯科帳』(c)さいとう・たかを/池波正太郎/リイド社

作者の上半身の写真、右手を上げ、グレーの髪にグレーのセーター、ひげを生やしメガネをかけている。背後にゴルゴ13の表紙が見える。

◆さいとう・たかを◆ 1936年和歌山県生まれ。55年に『空気男爵』でデビュー。60年に『台風五郎』がヒット。75年に第21回小学館漫画賞、2003年に紫綬褒章、10年に旭日小綬章受章。1968年11月から『ゴルゴ13』を「ビッグコミック」(小学館)にて連載開始、2018年に50周年を迎えた。一度も休載することなく現在も連載中。