朝日新聞社と北海道新聞社による統合編集システムの共同開発プロジェクトは、2020年にスタートしました。プロジェクトが設定した目標は「デジタルと紙面の素材を一元的に作成・配信できるシステムの構築」でした。「将来的に多くの新聞社が利用できる汎用性のあるシステムの実現」を合言葉に開発を進めました。
本社と道新 「文化」の違いを乗り越えて
ただ、朝日と道新がそれぞれの歴史の中で培ってきたコンテンツ作成の「文化」は異なっていました。用語や運用、周辺システムとの接続ルールなど、両社の違いを一つ一つすり合わせ、設計する必要がありました。この仕様統一の作業が最大の難関でした。合意形成のためには意思の疎通が不可欠でしたが、開発期間がコロナ禍に重なったこともあってほとんどの会議をオンラインで行わざるを得ず、議論が進まない場面が多々ありました。それでも、時間の経過とともに信頼関係が生まれ、両社の絆は深まっていきました。その絆が大きな推進力となり、新聞技術賞につながる成果が生まれました。
4年の開発期間を経て、今春、朝日・道新でそれぞれ統合編集システムが稼働しました。新聞業界のDX(デジタル変革)の推進に大きく貢献するペーパーレス運用の実現、デジタル配信用の動画や音声への対応、朝日のメディア研究開発センターが開発した自動要約AI「TSUNA」による見出しや記事の要約機能など、先進的な仕組みを搭載しています。また、システムをクラウド上に構築し、インターネットブラウザからVPN接続なしで利用できるようにしたことで、多様な働き方に対応できるようになりました。
大幅に作業性向上、よりスピーディーにコンテンツ発信
では、統合編集システムの導入で編集現場はどう変わったのでしょうか。
朝日も道新も、従来、記事や写真などの素材管理やデジタル媒体への配信、アーカイブ管理などを別々のシステムで行っていました。それが、統合編集システムにより、新聞紙面では扱えない動画や音声も含めて様々な素材を一元的に管理し、記事メニューの共有、デジタル媒体と新聞の両方への発信、アーカイブ管理までを一気通貫に行えるようになりました。作業性が大幅に向上し、よりスピード感をもってコンテンツ作成・発信ができるようになりました。
新システムは、道新にさらにドラスティックな変化をもたらしました。
道新が運用してきた従来のシステムでは、素材が登録、更新されるたびに紙のモニターが出力されていました。特に、1日に約3000件超を受信し、モニター出力していた共同通信社素材については、編集部門で日々全量に目を通さなければならず、非常に非効率な作業となっていました。統合編集システムには、通信社原稿を効率的にさばくための検索機能や、素材に何らかの変化が発生したことを担当者に通知する機能など、紙モニターに依存しない運用フローを実現するための機能が盛り込まれています。これにより、道新では約20万枚/月(6700枚/日)の用紙削減を実現し、完全なペーパーレス運用への移行を実現しました。以前は廃棄する用紙であふれていたごみ箱は、新運用が定着して不要になりました。朝日もこれにならい、ペーパーレス運用を加速させなければなりません。
さらに、システム運行の面でも、複数のシステムを一つにしたことで、効率的にシステム監視ができるようになりました。また、クラウド化やペーパーレス運用の実現で、システムの機器管理コストも大幅に軽減できました。
朝日と道新はこれからも協力し、広く業界で使ってもらえるよう統合編集システムを進化させていく方針です。日刊スポーツ新聞社も統合編集システムの採用を決定し、2026年の利用開始に向けて導入作業を開始しています。こういったシステム共有の広がりを足がかりに、業界内に新たな協力関係やシナジーが生まれていくことを願っています。
統合編集システムプロジェクトサブマネジャー 黒田周作