2019 10. 07

INTERVIEW

スポーツとしての「麻雀」


Mリーグ軸に五輪目指す

Mリーグ 最高顧問
川淵三郎さん

「川淵キャプテン」が最高顧問に就いたことは、Mリーグが健全なスポーツとして船出することを強く印象づけた。川淵三郎さんが創設に尽力したサッカーの「Jリーグ」は、開幕時の10チームから現在55チームまで発展。バスケットボール「Bリーグ」設立時の手腕も記憶に新しい。日本スポーツ界の風景を変えてきた川淵さんに、麻雀との縁やMリーグの将来像を聞いた。

誰もが憧れる最高の舞台


「夢の受け皿」ができた

——多くのスポーツにかかわってこられた川淵さんから見た、Mリーグの印象を教えてください。

麻雀にかかわる誰もが憧れる場ができた意味は大きい。2シーズン目に向け、新しい選手を獲得するドラフトが今年7月にあり、指名された女性選手がうれしくて泣いていました。その場面を見て、「夢の受け皿」として最高の舞台ができたんだな、という思いを強くしました。

初年度から、パブリックビューイングの会場もにぎわっており、特に若い女性の姿が目立ちます。私がツイッターで麻雀のことをつぶやくと、すごく反響がある。時によって、サッカーの話題より盛りあがります。「数多くのファンがMリーグを応援しているんだな」と実感しますね。まずは1年目、好スタートを切れたと言えるでしょう。これからメディアで取り上げられる機会が増えれば、さらに関心は高まるはずです。

注目される分、Mリーガーの皆さんには、他のスポーツ選手と同様に高い「プロ意識」が求められます。麻雀の強さはもちろん、普段の言動や私生活を律することも大切になるでしょう。今後は、頂上を目指して多くのプロが切磋琢磨(せっさたくま)し、選手がローテーションしていくことも大事です。例えば、成績に一定の基準を設け、下回った選手は翌シーズンは自動的にMリーグを離れ、替わりに新しい選手を入れる——といった制度も必要だと思います。


——川淵さんと麻雀の縁を教えてください。

大学時代に覚えて、社会人になってからも好きでした。これほど奥の深いゲームはないし、毎日打っても飽きません。日本サッカー協会の仕事を始めてしばらく離れていましたが、4、5年前に地域の方々が集まる会に誘われて、毎週水曜日に卓を囲むようになりました。記録をつけて、みんなで年間成績を競うんです。昨年は終盤までトップを守っていたのですが、最後に逆転されて悔しかったですね(笑い)。会を通じて住民の交流も活発になりました。かつてはあまり近所づきあいをしなかった方が、人が変わったように明るくなるなど、麻雀の力を実感しています。

Mリーグチェアマンの藤田晋さんから、「最高顧問に」という話を頂いたときは、私自身麻雀が大好きですし、新しいスポーツとして打ち出していくことに貢献できるのなら、とすぐに引き受けました。

Mリーグの対局は、AbemaTVでよく見ています。トッププロは、特に「降り方」、守備がうまいと感じますね。常に、他のプレーヤーの動きをよく見て、攻撃を受けるときに備えている。「こんな局面から降りるのか」と感心することが多く、私も影響を受けて打ち方を変えました。

発展の鍵は小学生への普及


学びに役立つと強調したい

——川淵さんは、小学校の校庭を芝生化するプロジェクトに力を入れるなど、子どもの教育にも熱心です。「麻雀発展の鍵も小学生への普及」と強調されているそうですね。

子どもにとって重要な力の一つは、コミュニケーション能力です。4人がお互いの顔を見ながら競う麻雀は、それを鍛えるのに最も効果的です。他にも、想像力、決断力、論理的思考力、分析力、計算能力など、身につく力は数えきれません。

観察力も養えますね。「このプレーヤーはもうすぐ上がりそうなのか?」「その点数はどれぐらい高いのか?」という重要な判断材料を、様々な情報を観察して読み取るゲームだからです。

忍耐力もつきます。ライバルが3人いるので、自分は上がれないことの方が多い。耐える時間が長いわけです。運の要素もあるので、不運を受け入れる訓練もできます。遊びながら、人生そのものを学べるともいえるでしょう。

Mリーグでも、選手が小学生に教える機会を増やしているようで、とても良い取り組みだと期待しています。先日は、東京の目黒区立駒場小学校で、Mリーガーが小学生に麻雀を教える企画もありました。先生やPTAの理解を得て、各地に広げていければいいですね。全国の小学生が競う麻雀大会を企画するのも一案です。教育の観点でも、Mリーグという「子どもたちが目指す憧れの場所」ができたのは良かったと思います。


——Mリーグが掲げる「麻雀の五輪種目化」を見据えて、将来に向けた提言はありますか。

「麻雀をオリンピックに」というと、まだ半信半疑の方もいるかもしれません。しかしどんなことでも目標を高く持って、言い続けることが大事です。いま「eスポーツを五輪種目に」という動きがありますが、eスポーツが良くて麻雀は良くない理由はありません。Mリーグを軸に、健全なスポーツとしてのイメージを広げていくことが重要です。

そのためにも将来、Mリーグも各地域に根付いた活動が盛んになって欲しい。そして、さまざまな地域の方が麻雀に気軽に触れる機会を増やしたい。子どもたちはもちろんですし、シニア層への普及もしたいですね。

五輪競技になるには、多くの国で競技がされていることが条件ですが、幸い、麻雀は国際的に親しまれています。中国はもちろん、欧米にも多くのプレーヤーがいます。ただし、国や地域によって、ルールのバリエーションが多い。私は1958年に日本代表として香港に遠征した際に、初めて海外の麻雀を見ましたが、進め方が違うんですね。それぞれの決まりや歴史は尊重しつつ、各国の関係者が「この国際大会ではこのルールで競う」という話し合いを始めていけると良いと思います。

PROFILE

かわぶち・さぶろう/Mリーグ最高顧問、日本トップリーグ連携機構会長。1936年、大阪府生まれ。高校でサッカーを始め、早大時代からFWとしてサッカー日本代表に選ばれ活躍。1964年の東京五輪に出場、アルゼンチン戦で同点ゴールとアシストを立て続けに決め逆転勝利に貢献した。古河電工監督、日本代表監督を歴任。サッカーのプロ化に尽力し、1991年にJリーグ初代チェアマンに就任。2002年、日本サッカー協会会長。2015年、日本バスケットボール協会会長となり、Bリーグ創設の立役者となった。

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