東京大学 The University of Tokyo

FOCUS
学校推薦型選抜で
学生の多様性を促進

高大接続研究開発センター長
女子の比率が増加
一定の成果を上げる
「入学者選抜は大学と社会との重要な接点です。入試は、どのような能力と可能性をもつ学生に本学に入学してもらいたいのか、本学からのメッセージでもあるのです。だから『東京大学憲章』の理念や、藤井輝夫総長が示した本学が進む方向についての基本方針『UTokyo Compass』とも呼応しています」
佐藤健二執行役・副学長はそう話す。憲章では「世界の公共性に奉仕する大学」として、「世界的視野をもった市民的エリートが育つ場」であることを目指すと宣言し、藤井総長の基本方針では学術における卓越の追究とともに、地球規模の課題解決に貢献するための「ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包摂性)」の重要性、理不尽な格差の克服に取り組む意欲がうたわれている。
「本学を志望する学生には真理への探究心、学術の卓越をけん引する志、自分で問いを立て自分でそれを解いていく力を養ってほしいと考えています。その意味で学校推薦型選抜は本学の多様性を高める改革の試みとして一定の成果を上げてきています」(佐藤執行役)
入学者選抜の改革の一環として、東京大学では2016年度から学校推薦型選抜を導入している。学生の多様性を促進し、教育研究のさらなる活性化を図るのが主な目的だ。下のグラフは22年度学校推薦型選抜合格者の出身高校地域・男女別合格者の割合だ。各高校が推薦できる生徒数は当初「男女各1人以内」としていたが、21年度からは「男女各3人、合計4人以内(同一学部への推薦は男女各1人以内)」と緩和した。出願の枠組みを工夫した結果、22年度合格者(88人)の出身高校地域別では東京が24人(27.2%)だった。一般選抜前期合格者における東京の占める割合(約37%)に比べると地域的な偏りは少ない。男女別でも学校推薦型選抜では女子が38人(43.2%)。一般選抜の約20%に比べ高くなっている。

武田洋幸執行役・副学長(入試改革担当)が話す。
「一般選抜による入学者には出身高校の地域や男女の割合に偏りがみられ、私立校の割合も高いのですが、学校推薦型選抜ではそれらの偏りがある程度解消されています」

(入試改革担当)
1年次から学部の
メンターが支援する
東京大学の学校推薦型選抜は、文I、理Iといった科類単位の一般選別と異なり、学部ごとの選抜となる。募集人員は合計100人程度。各学部が求める学生像を提示し、書類、面接、大学入学共通テストによる総合的な評価で合否を判定する。
「筆記試験では測れない専門性、探究心、意欲の三つの側面について面接などを通じて丁寧に評価します」(武田執行役)
学校推薦型選抜の合格者(推薦生)は入学した学部に最も近い科類に所属し、一般選抜合格者と同じく、前期課程(教養学部)の授業を受ける。ただ、学部2年次の「進学選択」を意識しない自由な学びができる。専門科目の履修の前倒しや研究室での体験ができるほか、1年次から学部のアドバイザー教員(メンター)から個別の助言・支援を受けられるなど「早期専門教育」が大きな特徴だ。
推薦生の「プレゼンの能力・表現力」「専門に対する関心・探究力」などに対するメンターや指導教員からの評価は、一般選抜の学生よりも高いというアンケート結果も出ているという。
「修士課程で第1著者として論文を書くような推薦生もいるくらいです」(武田執行役)
このように、過去7回の学校推薦型選抜で一定の成果が上がっているが、今後も広報活動の強化などによって志願者数の増加を図りたいとする。21年度の学校推薦型選別の志願者数は267人(合格者92人)、22年度の志願者数は240人(合格者88人)。21年度からは生徒向けのオンライン説明会を年3回、高校教員向けの説明会を年1回実施。「キミの東大」というウェブサイトでも、推薦生の高校時代の経験や入学後のキャンパスライフを紹介している。
「学校推薦型選抜でより多くの生徒に志願してもらうことが多様性推進につながると考えています。コロナ禍で生徒の課外活動には制約がありますが、コンクールなどの受賞歴や留学経験以外の、学校内外の日常の活動についての校長先生の推薦もしっかりと受け止めます」
武田執行役はそう強調する。