国公立大学 進学のすすめ2020

広告特集
企画:朝日新聞社メディアビジネス局
制作:AERAムック編集部

代々木ゼミナール Yoyogi Seminar

INFORMATION

「真の学び」は
対話の刺激にこそ

対談│山極壽一さん × 髙宮敏郎さん

京都大学前総長

総合地球環境学研究所所長
山極壽一さん
×
SAPIX YOZEMI GROUP
共同代表
髙宮敏郎さん

コロナ禍は私たちの社会や大学に変革をもたらし、その本質を改めて問う機会となった。

そこで霊長類学者で京大前総長の山極壽一さんに、SAPIX YOZEMI GROUP共同代表の髙宮敏郎さんが、人間にとっての学びの本質、大学教育の意義について伺った。

教育は無償の行為 
個性の尊重が重要

髙宮 山極先生は長年、霊長類の研究を通じて人間の本質を考えてこられました。本日はそんな先生に、人間にとって教育や学びとはそもそもどんな意味があるのか、といった根源的なことから伺いたいと思います。

山極 自然界の動物も親が子どもに狩りを教えるなど、人間の教育に似た行動をとります。動物行動学では「教示行動」と呼び、その定義が二つあります。一つは教える側と教えられる側の双方が、知識や技術の差を認識していること。もう一つは教える側が、自分の利益を犠牲にしてまで知識や技術を伝えようとすることです。「教示行動」は肉食動物や猛禽類には見られますが、サルや類人猿ではほとんど報告されていません。また「教示行動」をとるのは母親だけで、父親や他の大人が子どもに何かを教えるようなことはありません。

髙宮 他人が教育を担う人間は、動物としては異例なんですね。それにしてもサルや類人猿が行わない教育を、なぜヒトは行うようになったのでしょうか。

山極 二足歩行を始めて成人の脳が巨大化した人類は、産道を通るため頭が小さく未熟な状態で生まれます。そのため離乳期以降も自分で餌を取れず、親や他の人から食べ物を与えられないと生きていけません。また生後、脳の成長を最優先し、脳が完成してから一気に身体を成長させるため、12〜16歳くらいの第2次性徴期に心身のバランスを崩します。この時期、親に反抗するようになり、心身が不安定な状態になる子どもを、親以外の同性の先輩が自身の経験を通じて支える必要がありました。このような二つの危機を乗り越えるために、教育が必要になったと考えられています。

髙宮 生き物として一人立ちするための周囲の支えが、教育につながったわけですね。冒頭でおっしゃった「教える側が自分の利益を犠牲にしてまで」との言葉には、教育に携わる者として襟を正す思いがしました。

山極 それこそが教育の原点だと思います。教育は次世代への贈り物であり、無償の行為です。本来、見返りを求めてはいけません。

髙宮 現在の教育改革の議論のなかには大人の都合で、大人側が求める人材を育てようとしているようなものもあるように感じます。

山極 そのような発想が危険なのは、教育が画一的な人間を育てる方向に向かうからです。教育において最も大事なことは、一人ひとり異なる子どもの個性を尊重することです。社会は多様な人間がいるからこそ新しいものが生まれ、発展していきます。今の時点で大人が理想とする、同じような人間ばかり育ててしまっては、未来の社会は脆弱になるだけです。

情報や知識より
感性や共感力を

髙宮 これからの社会は、現在ある職業の多くがAIに取って代わられるとも言われています。そのような時代の教育において、大事なことはどんなことでしょうか。

山極 AIは膨大なデジタル情報をもとに最適解を出すツールです。でも人間の営みには、デジタル化できないものが無数にあります。恋愛感情が最たるものですが、人間は知識や情報だけに基づいてものごとを判断し、行動しているわけではありません。自分をとりまく環境を五感で受け止め、直感的に判断していることも多い。むしろそのような決定こそが重要です。体をもたないAIには絶対にできないことだからです。

髙宮 AIが普及すればするほど、人間ならではの身体感覚や感性が大事になってくるということですね。そういえばAIの開発にも携わっているある数学者は、AIが絶対に代替できない職業は保育士だと言っていました。

山極 それは確かにそうですね。幼児期に保育士や友達など親以外の人間と遊んだり、ふれあったりすることはとても大切です。人はそのような経験を通じて、自分とは異なるものとの共感力を育みます。幼少期に頭ではなく、体で自然や動物、他者を理解する。そんな体験で培った共感力の土台のうえに、初めて大学の学びが意味をもつのだと思います。

髙宮 これまでのお話では、学びにおいては知識を詰め込むだけではなく、感じること、体験が大事だとのことでした。大学でもコロナ禍でリモート教育が進んだいっぽう、改めて人が顔を合わせて学びあうことの重要性が再認識され始めています。

山極 今や知識はネットからいくらでも入手できます。日本にいながらアメリカの一流大学のオンライン公開講座を受講することもできます。だからといってオンラインで大学の学びが完結することはありえません。真の学びは直接人と対話し、刺激を受けるなかにあるからです。私は研究者を目指す学生には、学会で積極的に先生に話しかけるよう言っています。論文や本でなく、その時点で学者の頭のなかにあることに触れることが大事なのです。体で覚えるべき実験やフィールドワークは当然ですが、少人数ゼミなどオンラインでできないことにこそ、大学の最大の価値があります。もちろんオンライン授業にも良さはあるので有効活用すべきです。京大では事前のインプットはオンラインで行いその後、それをもとに学生が対面でディスカッションする反転授業も取り入れています。

地域の個性や文化
支える使命を負う

髙宮 ネットやAIが普及した今、もはや知識を授けることは教育ではなくなりつつある。よって大学というリアルな場での体験が、ますます重要になってきているわけですね。

山極 高校までの学びは正解を導くことでしたが、大学の学びで大事なのは気づきです。大学の教員がやるべきことは知識を授けることではなく、自身の経験や姿勢を通じて学生に気づきを与えることです。さらにそのための環境をつくることが大事です。今や気づきを得る場は、大学の授業だけではありません。スポーツや文化活動、もっと言えば大学のある街自体が気づきの場です。そこで私は京大総長時代、行政や産業界と連携し、京都の街を丸ごと学びの場として活用する取り組みも進めました。

髙宮 そういった意味では全国の国公立大学には地域に根差した、その地域ならではの学びや気づきの機会が多いと言えますね。

山極 日本の強みは地域に個性や独自の文化が残っていることです。日本の未来はそれをどう活用するかにかかっています。そのうえで地域に根差した大学の役割は、非常に大きいと言えます。日本の国公立大学は、その地域の人々の誇りやアイデンティティーになっています。地方の国立大学を訪れる度に、そのことを強く痛感します。そのような地域に根差し、地域を支えている大学で学ぶ学生の使命は、とても大きいと思います。

髙宮 最後に進路で悩んでいる受験生にメッセージをお願いします。

山極 最近は若いうちに将来の職業を明確にし、それに沿った大学を選ぶべきとの風潮があります。すでに将来の夢が明確な人はそれでよいでしょう。でも自分が何をしたいのか分からない、という高校生も多いと思います。仕事や働き方が多様化し、変化の激しい現代社会において、若いうちから生涯の仕事を決められないのはむしろ当然です。本当は大学も一度入って違和感があれば、すぐに他大学に移れる仕組みがあっていいと思います。いずれにしろ大学とは、高校時代の自分が予想もしていなかった気づきを得られる場です。ぜひそのような体験がたくさんでき、大きく成長できる大学を目指してほしいですね。

やまぎわ・じゅいち/1952年生まれ。京都大学大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学。同大学理学部長、総長を経て総合地球環境学研究所所長。霊長類研究・ゴリラ研究の第一人者。『暴力はどこからきたか 人間性の起源を探る』『ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」』など著書多数。 たかみや・としろう/1974年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)を経て、2000年4月、学校法人高宮学園に入職。同年9月から米国ペンシルベニア大学に留学、教育学博士号(大学経営)取得。同学園の財務統括責任者を経て、09年から現職。

昨年の共通テストを踏まえ
秋からの対策を考える

座談会│船口 明さん × 福崎伍郎さん × 佐藤雄太郎さん

代々木ゼミナール
教育総合研究所
主幹研究員
船口 明 
代々木ゼミナール
教育総合研究所
主幹研究員
福崎伍郎 
代々木ゼミナール
教育事業推進本部
本部長
佐藤雄太郎 

昨年度、初めて実施された大学入学共通テスト(以下、共通テスト)。その内容を踏まえ、今年度の受験ではどのような対策をすればよいのか。代々木ゼミナールの佐藤雄太郎氏、福崎伍郎講師(英語)、船口明講師(国語)に話を聞いた。

英語はより実用的な
スキルが問われることに

──昨年度の国公立大学の出願状況や傾向について教えてください。

佐藤 コロナ禍の影響で、受験生の地元志向、安全志向がより高まりました。保護者の経済的状況や大都市部の回避なども影響したようです。また、浪人を回避するため、難易度の高い大学を避けて合格圏内の大学を受ける受験生も増えました。この流れは、一昨年度ほどではないにせよ、大きく変わらないと見ています。なお、難しくなると予想されていた共通テストは、結果的に高い平均点となりました。2年目は国公立大の回避や受験者が増えることから難化する過去の事例もありますが、国公立大学の定員自体はさほど変わっておらず、少子化により受験生の数は年々減っています。十分な対策さえすれば、もっと強気の出願をしてもよいのではないか、とも思います。

──共通テストで最も内容が変わったのが英語だと言われています。

福崎 大きく変化したのがリーディングです。センター試験では論理的に正確に読むという意味でアカデミックな読解力を重視していましたが、共通テストでは実用的な英語スキルをみる問題が増えました。英文を素早く読んで必要な情報を得る力、それをもとに考え、判断する力です。共通テストは単語数が従来より1000語以上増えています。そのため1分間に120語ほどのスピードで英文を読みながら意味をとらえる力が必要です。対策としてはやさしい英文を意味の塊ごとに読みながら後戻りせずに理解する「フレーズリーディング」が有効です。リスニングはセンター試験と大きく変わってはいませんが、1回読みの問題が増えました。対策としては、問題に解答するうえで重要なワードをメモしながら聞く「ノートテイキング」、音声を聞いて意味を考えながら反復する「リピーティング」などが有効です。

──2次試験とのバランスはどうとって勉強するとよいのでしょうか。
福崎 秋以降は共通テストの対策と並行して2次対策も進める必要があります。2次試験は読解問題が全体の7〜8割を占めます。年内は共通テスト対策と並行して標準的なレベルの英文を速読し、概要や要点をつかむ練習をする。共通テスト終了後は、本格的な記述問題に取り組みましょう。英作文は、毎年比率が増えている自由英作文の対策を早めに始めておくべきです。

佐藤雄太郎 氏

合否は夏休み以降の
勉強にかかっている

──国語の勉強に関してはいかがでしょうか。

船口 国語の共通テストは、センター試験から内容が大きく変わったわけではありません。来年もおそらく同様で、少しずつ試行調査の方向性へ近づいていくのだと思います。よって共通テスト対策としては、センター試験同様の勉強に加えて複数の文章を読んで比較検討するような問題をプラスアルファで練習すればよいでしょう。ただし、きちんと内容を理解していないのにテクニックやパターンで解くようなやり方では通じない出題になってきています。ですから、たとえば模試で時間が足りないからといってテクニックに逃げるのではなく、苦手な人は勇気を持って基本に戻ることが結局近道になると言えます。その力はそのまま2次試験に通じるものにもなります。

船口 明 氏

──最後に受験生へのメッセージを。

福崎 受験は苦しく不安な面もありますが、「自分の可能性を証明できる絶好の機会」です。ぜひ前向きにとらえ、勉強に取り組んでいただきたいと思います。

船口 最近の受験生は、夏休み前の模試でAやB判定が出ないと、志望校を変える傾向があります。でも夏休み前にAやB判定を出した生徒は、さらに上位の学校を目指します。よってその時点でのC判定は、十分に合格を狙えます。DやE判定でも、夏休み以降の勉強次第でまだまだ取り返せます。ですから志望校は、簡単に諦めないでほしいと思います。

佐藤 昨年度から共通テストが始まりましたが、結果的にはそれほど大きな変化はありませんでした。情報に振り回されず、自分が本当に行きたい大学を目指してほしいですね。

福崎伍郎 氏