国公立大学 進学のすすめ2022

広告特集
企画:朝日新聞社メディアビジネス局
制作:AERAムック編集部

東京都立大学 Tokyo Metropolitan University

INFORMATION

FOCUS

地球の未来を研究
牧野標本館の可能性

学問の力で、東京から世界の未来を拓く × Tokyo Metropolitan University

牧野標本館別館標本庫の内部。「多くの貴重な牧野標本があります」と村上教授。日本植物分類学会の会長も務める
※一般のかたは牧野標本館標本庫にはご入場いただけません。

先見性があった
牧野標本の受け入れ

「日本の植物学の父」 とも言われる牧野富太郎。その牧野富太郎が収集し寄贈された植物標本約16万点をはじめ、シーボルトが来日した際に集めた標本の一部など、貴重な植物標本約50万点を所蔵する「牧野標本館」が東京都立大学・南大沢キャンパスにある。

牧野標本館は牧野富太郎の没後、遺族から標本を寄贈され1958年に設立された。

「牧野先生の標本を東京都が受け入れたことは、先見性がありましたね。というのも、牧野先生の標本は明治から昭和の時代に日本のほぼ全域から採集され、絶滅してしまった植物の標本も含まれているのです」

牧野標本館の村上哲明教授はこのように話す。

牧野富太郎は土佐・佐川村(現・高知県佐川町)に生まれ、幼いころから植物が好きで植物学を志すように。22歳で上京し、東京帝国大学(現・東京大学)の植物学教室に出入りを許され、自ら絵を描くなどして『日本植物志図篇』を刊行した。

牧野が研究で大切にしていたのが標本用の植物採集である。

「北は北海道、南は屋久島まで自ら足を運び、行く先々であらゆる植物を採集しました」

牧野が屋久島で採集したバナナの標本

データベースも充実
温暖化研究に寄与

新種の植物を発表する際、それが新種であることを示す証拠のような標本がタイプ標本であり、より重要で学術的価値が高い。牧野標本館のタイプ標本数は国内トップレベルで、750点に及ぶ。2018年には本館の標本庫の約2.5倍の収容量(125万点)を有する牧野標本館別館が完成した。ここに重複品、すなわち同じ日に同一の場所で採集された標本を除く50万点を超える数の植物標本が収蔵されている。牧野標本館所蔵タイプ標本データベース、シーボルトコレクションデータベースなども整備され、ホームページで公開されている。

「日本は植物の多様性に富み、牧野先生が日本国中を歩いて観察、収集、研究した標本は世界に類を見ないものです」

そう話す村上教授は、牧野標本の重要性がわかる研究を紹介してくれた。

「牧野先生は60年以上にわたって、同じ場所で、同じ植物種の標本を採集しました。それらの標本をDNA解析することで、温暖なところで生育するのに都合のよい遺伝子が近年、増えてきていることが解明され、地球温暖化の影響が明らかになったのです」

牧野標本は保存するためだけのものではなく、将来の研究のための価値も大きい。

「牧野先生もそれを強く望んでいました。有効な研究には惜しみなく標本の一部を研究材料として提供します」と村上教授。

標本は時が経つほど価値があがってくるので、その重要性は今後さらに高まると続けた。その点では、牧野標本館のシーボルトコレクションも貴重である。

シーボルトコレクションはドイツ人医師・博物学者のシーボルトが2度にわたり来日した際に収集した標本の一部を譲り受けたもので、100年以上の時を経て、いわば里帰りした標本だ。

「シーボルトコレクションは牧野標本より50~60年ほど時代をさかのぼるもので、より貴重性が高まります。当時栽培されていたイネの標本もあります」

朝ドラのモデルに
注目される牧野富太郎

資料的価値が高いことはよくわかる。さらに標本自体が美しいので見てもらう価値もあると村上教授は話す。

「牧野標本は重複標本も多数あるので、それらを全国の図書館や博物館などの展示会などにも貸し出しています。見てもらうと、牧野標本の素晴らしさがわかるでしょうし、牧野先生の強い情熱も感じてもらえるはずです」

村上教授は牧野標本館の所蔵品のさらなる可能性についてこのように話す。

「かつてはDNA解析など夢の話でしたが、今後も技術の進歩によって、標本を使った新しい研究が進められることでしょう。牧野先生は『雑草という名の草は無い』という言葉も遺し、あらゆる植物に目を向けて愛情を注いでいました。それだけ研究は広範囲に渡っていたのです」

23年春のNHK連続テレビ小説で、牧野富太郎をモデルにした「らんまん」も始まる。村上教授はこう結んだ。

「牧野先生の遺志を受け継ぎ、次の世代へ引き継ぐ責任も大きいですね。夢はどんどん広がります。植物の多様性と可能性は宇宙と同じくらい大きいと信じています」

1940年刊行の『牧野日本植物図鑑』。牧野自ら絵を描いた

PRESIDENT’s MESSAGE 学長メッセージ

楽しく学び
研究力と教育力を
向上できる場に

大橋隆哉 学長

「コロナへの対応が落ち着いてきたこともあり、学生の活動が活発になっているように感じます。それに呼応するように研究・教育の面でも上向きになってきています」と話すのは大橋隆哉学長。

昨年の鳥人間コンテストでは滑空機部門と人力プロペラ機部門で優勝したほか、他大学とのスポーツの対抗戦も復活するなど、学生が元気に活動する本来の大学の姿を取り戻しつつある。

「研究に関しては科研費特別推進研究や学術変革領域研究に採択されるなど、研究力は向上しています。教員ポストの学長裁量枠の活用やトップ研究者の招聘(しょうへい)、若手研究者の支援を進め、さらなる研究力の向上を目指します」

研究と両輪をなす教育に関してはこのように話す。

「都立大は総合大学ですが中規模なので、学生数がそれほど多くありません。そのため研究の成果をベースとした丁寧な教育が可能で、それが本学の持ち味だと考えております」

教育は論文や研究費などに成果が表れる研究と比較して成果が見えにくいところもあるので、ベスト・ティーチング・アワードで優れた教育を表彰するなど評価するシステムも導入した。

では、主役の学生に大橋学長は何を望むのだろう。

「最先端をいきなり目指すというより、基礎をしっかり身につけてほしいです。変化する社会に対応する能力も必要ですが、あまり振り回されず、自分の力を信じることが大事です」

大橋学長は就任以来、基礎も応用も含めて研究力を強化したいという気持ちは変わらないと話す。続けて、今すぐ役に立たないかも知れない分野の研究も守ることが自分の役割だとした。

「今後のビジョンは『学問の力で、東京から世界の未来を拓く』です。皆さんが伸び伸びと研究し、楽しく学べる場にするのが私の使命でもあります」

Campus topic

日々の授業と課外活動
あらゆる人と人がつながり経験と学びが広がる場がある

東京都立大学は課外活動も盛んである。なかでもロボコン部「TEXNITIS(テクニティス)」の活躍は目覚ましい。

2017年創部のTEXNITISはNHK学生ロボコンに向けての活動をしており、22年には強豪ひしめくなか本戦へ出場した。優勝することはかなわなかったが、5年ぶりの出場のなか予選リーグでは1勝を挙げることができた。創部5年で2回の本戦出場は快挙である。

「17年に初出場し、特別賞にあたるマブチモーター賞を受賞しました。歴史は浅いですが着実に力を付けています」とチームリーダー(当時)のシステムデザイン学部4年の藤田尊久さん。

「まだまだ発展途上の部ですが、これからさらに躍進していくと信じています」と、部長(当時)であり同学部4年の渡邉真広さんは言葉をつないだ。

22年の本戦出場当時の部員はわずか6人。ロボット開発はトライ&エラーの連続で、設計班、回路班、制御班と専門が別れているが、分野横断で担当することも多いという。人数が少ない分、チームとしてのまとまりができた。経験を積んだ大学でも当日、上手く行かないケースもあるなか、自分たちが作ったロボットは想定通りに動かすことができたという。

「ロボコンと授業での経験を今後の自分の研究に生かしたい」と渡邉さんは、ロボコンの意義を強調する。一方の藤田さんは「下級生のときは先輩から学び、上級生になると後輩を教えることで、自らも学びました。部活で上下関係なく、あらゆる人とのつながりのなかで、さまざまなことを学べたことが大きかったです。都立大にはこういう人と人がつながり、学べる場があるのがとてもいいですね」と話してくれた。
ロボコンに参加したロボットと共に。渡邉真広さん(左)と藤田尊久さん