タワマンのケース
「タワマン節税」とは、タワーマンションの相続税評価額と市場価格の隔たりを用いて、相続税を算出します。
タワマンの市場価格は、建築コストに加えて、1階上がるごとに価格が100万円上昇するといわれるように、眺望や立地、デベロッパーのブランド力などに左右されます。タワマンの敷地の相続税評価額は路線価を基に計算するため、通常の宅地と同じ評価方法を用います。立地条件が良ければ評価額は高くなります。
ただし、タワマンの相続税評価額は、建物は材質などをもとに評価する固定資産税評価額を用います。タワマンの眺望や立地、デベロッパーのブランド力は評価に影響しません。
タワマンの敷地の評価は路線価地域であれば路線価で評価しますが、何百戸もの区分所有で敷地を共有しているため、立地条件の良さがそれほど金額に反映されず、評価額は高額にならないことが多いのです。
マンションに係る財産評価基本通達に関する第3回有識者会議の資料によると、マンションの約65%が相続税評価額は市場価格の半額以下になっています。つまり、1億円の現預金を持っている人が、その1億円で1億円のマンションを買うと、相続税評価額は5,000万円以下になるのです。
特に、東京都では相続税評価額が市場価格の1/3となる物件もあり、現預金をマンションに変えることで、相続財産の評価額を大幅に圧縮できるため、タワマンは一部の富裕層を中心に相続税対策を目的として購入されるようになり、平成27年の政府税制調査会でも取り上げられるなど、以前から問題視されていました。
改正に至った経緯
相続税の計算では、相続財産を時価で評価する必要がありますが、納税者の多くは不動産鑑定士ではないため、不動産の「時価」を算定することは困難です。
そのため、国税庁が公表している「財産評価基本通達」に従って評価します。これまで、この方法で評価した不動産の評価額は、基本的に税務調査で否認されることはありませんでした。
しかし、2022年4月、マンションの相続税評価額をめぐる最高裁判決において、財産評価基本通達の第1章総則6項の「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」という条文を根拠に、鑑定評価するべきという国税庁の主張を、富裕層だけがなし得る節税策は課税の公平上問題だとして最高裁が支持。財産評価基本通達に基づいた評価が否認されたのです。この判決はかなり話題となりました。
一方で、この状況を放置していると、購入を検討していた富裕層がマンションの購入を手控えるなど、市場にも影響が及び、景気に水を差すことになりかねないことから、相続税評価額と時価の隔たりが大きいマンションの評価額を見直すこととなりました。
改正による変更点
改正により、2024年1月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得した「居住用の区分所有財産」の価額は、新たに定められた個別通達(令和5年9月28日付課評2-74ほか1課共同「居住用の区分所有財産の評価について」(法令解釈通達))により評価することとなりました。
居住用の区分所有財産とは、いわゆる分譲マンション、一室の区分所有権等のことであり、タワマンでなくとも適用されることがあります。なお、以下のようなものには適用がありません。
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構造上、居住の用に供することができないもの
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一棟所有の賃貸マンションなどの区分建物の登記がなされていないもの
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総階数が2以下のもの
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二世帯住宅(一棟の区分所有建物に存する居住の用に供する専有部分一室の数が3以下であって、その全てを区分所有者またはその親族の居住の用に供するもの)
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たな卸商品等に該当するもの
マンションの相続税評価額の計算方法
改正後の居住用の区分所有財産の評価では、区分所有権(マンション建物)と敷地利用権(マンション敷地)のどちらも、まず従来の相続税評価額を計算します。
従来の相続税評価額
区分所有権
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計算式
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従来の区分所有権:家屋の固定資産税評価額×1.0
敷地利用権
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計算式
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従来の敷地利用権(路線価地域):路線価×補正率×地積×敷地権の割合
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計算式
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従来の敷地利用権(倍率地域):固定資産税評価額×評価倍率×敷地権の割合
改正による補正
従来の相続税評価額を求めたら、区分所有補正率を乗じて評価額を算出します。
区分所有権
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計算式
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区分所有権:従来の区分所有権の価額×区分所有補正率
敷地利用権
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計算式
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敷地利用権:従来の敷地利用権の価額×区分所有補正率
区分所有補正率は、評価乖離率と評価水準(評価乖離率の逆数)がわからなければ計算できません。評価乖離率は、築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度の4つの指数を基に計算します。築浅物件で総階数が高く、所在階が高層階で、敷地持ち分が小さいほど評価乖離率は高くなり、評価額が高くなるようになっています。
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計算式
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評価乖離率=A+B+C+D+3.220
A・・・一棟の区分所有建物の築年数※×△0.033
※建築の時から課税時期までの期間(1年未満の端数は1年)
B・・・一棟の区分所有建物の総階数指数※×0.239(小数点以下第4位切捨て)
※総階数(地階を含みません。)を33で除した値(小数点以下第4位切捨て、1を超える場合は1)
C・・・一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階※×0.018
※専有部分がその一棟の区分所有建物の複数階にまたがる場合(いわゆるメゾネットタイプの場合)には、階数が低い方の階
なお、専有部分の所在階が地階である場合には、零階とし、Cの値は零
D・・・一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度×△1.195(小数点以下第4位切上げ)
敷地持分狭小度
(小数点以下第4位切上げ)
※敷地利用権の面積は、次の区分に応じた面積(小数点以下第3位切上げ)
①一棟の区分所有建物に係る敷地利用権が敷地権である場合
一棟の区分所有建物の敷地の面積×敷地権の割合
②上記①以外の場合
一棟の区分所有建物の敷地の面積×敷地の共有持分の割合
(注)評価乖離率が零又は負数の場合には、区分所有権及び敷地利用権の価額は評価しない(評価額を零とする。)こととしています(敷地利用権については、下記3(注)の場合を除きます。)。
評価乖離率をもとに評価水準を計算し、評価水準の数値から区分所有補正率を求めます。
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計算式
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評価水準(評価乖離率の逆数)=1÷評価乖離率
| 区分 | 区分所有補正率 |
|---|---|
| 評価水準 < 0.6 | 評価乖離率 × 0.6 |
| 0.6 ≦ 評価水準 ≦1 | 補正なし(従来の評価額で評価) |
| 1 < 評価水準 | 評価乖離率 |
従来の相続税評価額に評価乖離率を乗じると、理論上の市場価格となります。それの0.6であるため、新しい評価方法では相続税評価額は理論上の市場価格の6割となります。この6割という数字は、一戸建ての相続税評価額と市場価格の乖離率が平均1.66倍であることに基づいています。
まとめ
今回の改正により、2023年中の相続と比較して、マンション評価額が2倍以上となるケースもあります。マンション評価の改正は、タワマンの評価方法だけを変更したわけではないため、マンションを所有している場合、改めて相続税シミュレーションをした方がよいでしょう。
相続税評価額は市場価格の6割となるように調整されましたが、効果が全くなくなったわけではないため、「タワマン節税」は依然として健在といえます。
ただし、改正後の財産評価基本通達に基づいた評価額で相続税申告した場合も、相続開始直後に売却すると時価との隔たりがあらわになるため、税務調査で否認される可能性がないわけではありません。購入・売却にあたっては、引き続き慎重な検討が必要でしょう。タワマンの評価額について不安がある場合は、相続を専門とする税理士への相談をおすすめします。



