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相続税

最終更新日:2021.06.08

しどり贈与とは?
メリット・デメリットや
手続き方法・必要書類を解説

おしどり贈与とは?メリット・デメリットや手続き方法・必要書類を解説

このコンテンツでわかること

  • ■ おしどり贈与と呼ばれる配偶者控除の内容を知ることができる
  • ■ おしどり贈与のメリット・デメリットがわかる
  • ■ おしどり贈与を利用する際の手続きや手順についてわかる

おしどり贈与と呼ばれる贈与税の特例について、その名前を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。おしどりといえば、仲のいい夫婦のたとえとして用いられますが、そのような夫婦については、贈与税の特例が利用できることになっています。

おしどり贈与を活用すれば2,000万円の非課税贈与も可能ですが、夫婦間の相続に適用できる税額軽減措置もあるため、双方の特徴を理解しておく必要があるでしょう。

そこで、制度の内容やメリット・デメリット、どのような人が利用するとよいのかわかりやすく解説します。

おしどり贈与とは

おしどり贈与とは、正式には「贈与税の配偶者控除の特例」という名称の制度です。

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、一定の要件を満たす居住用不動産あるいは居住用不動産の購入資金を贈与した場合に適用されます。

通常、暦年贈与と呼ばれる贈与を行った場合、年間110万円の基礎控除を上回った金額について贈与税が課されます。しかし、おしどり贈与の適用を受ければ、基礎控除とは別に2,000万円の控除が受けられます。そのため、最大で2,110万円まで非課税で居住用不動産やその取得資金を贈与することができることになります。

おしどり贈与の適用要件

おしどり贈与を活用して居住用不動産、または居住用不動産の取得資金を贈与する場合、以下の要件を満たせば2,000万円までが非課税となります。

  • 夫婦の婚姻期間が20年以上であること

  • 居住用不動産または居住用不動産の取得資金の贈与であること

  • 贈与された年の翌年3月15日までに居住用不動産に住んでおり、その後も居住する見込みがあること

婚姻期間は通算となるため、離婚後に同じ人と結婚して通算20年を経過していれば、婚姻期間の要件を満たします。住む予定のない住宅の購入や、居住用不動産以外(別荘など)の贈与には適用できないので注意してください。

おしどり贈与のメリット・デメリット

おしどり贈与の制度には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。利用を検討するにあたっては、この両者を把握しておくことが非常に重要になります。

おしどり贈与のメリット

おしどり贈与の代表的なメリットは以下の4つです。

  • 相続税対策に活用できる

  • 生前贈与加算が不要

  • 相続発生後も配偶者の住居を確保できる

  • 自宅を売却したときの譲渡所得税を低くできる

おしどり贈与を活用すると相続財産を2,000万円分減らせるため、相続税の課税価格(相続税がかかる金額)も低くなります。

通常、相続開始前3年以内に行われた贈与の場合、贈与分の金額を相続財産に加算しなければなりませんが、おしどり贈与は相続財産への加算が不要です。居住用不動産の一部または全部が配偶者のものとなるため、自宅の所有権をめぐる相続トラブルに巻き込まれることがありません。相続発生後も配偶者の住居を確保できるので、主な相続財産が自宅のみの場合はおしどり贈与のメリットを活かせるでしょう。

おしどり贈与で自宅の所有権を移転し、共有名義の不動産にすると、売却時には夫婦それぞれに3,000万円の譲渡所得控除を適用できるメリットもあります。

おしどり贈与のデメリット

おしどり贈与には以下のデメリットがあるので、生前贈与の節税効果が低くなる可能性も想定されます。

  • 不動産取得税が発生し、登録免許税の税率も高くなる

  • 贈与された配偶者が先に亡くなるリスクがある

  • 節税効果は相続税の配偶者控除の方が高い

不動産を贈与で取得すると、「固定資産税評価額×原則税率4%」の不動産取得税が課税されますが、相続で取得した場合は非課税です。登録免許税も「固定資産税評価額×税率」で計算しますが、贈与の場合は税率2%、相続は税率0.4%が適用されるので、贈与の方が税負担は重くなるでしょう。

配偶者(受贈者)が先に亡くなると、配偶者名義の財産は相続税の課税対象になるため、非課税贈与した財産に相続税がかかる可能性もあります。また、配偶者が遺産相続する場合は1億6,000万円、または法定相続分のどちらか多い方まで非課税になる配偶者控除も適用できます。

あえて不動産取得税などのコストをかけて生前贈与しなくても、配偶者は非課税相続できる可能性が高いでしょう。

おしどり贈与の活用が向いているケース

自宅の所有者が高齢である場合や、病気などで余命わずかといわれた場合は、おしどり贈与を利用することが有効です。ただ、このような状況であっても必ずメリットがあるとはいえないため、事前によく検討する必要があるでしょう。

相続税を計算する際に使える、他の特例と併用することができるため、相続税の節税のためだけにおしどり贈与を利用することはあまり意味がありません。

そこで、おしどり贈与のメリットにもあげたように、自宅を売却する前におしどり贈与を利用することを考えてみましょう。

自宅を売却する際には、その所有者は3,000万円の所得控除を受けることができます。自宅がすべて夫名義となっているのであれば、夫だけが3,000万円の控除を受けることとなります。しかし、自宅が夫と妻の共有名義になっていれば、夫と妻がそれぞれ3,000万円控除を受けられるようになっています。

たとえば、自宅を売却した際の所得金額が5,000万円となり、夫だけに発生した場合と、夫・妻に半分ずつ発生した場合で考えてみます。

夫だけに発生した場合、3,000万円を控除した後の金額2,000万円に対して、所得税と住民税がかかります。所得税と住民税はあわせて20%程度の税率になるため、400万円程度の税金が発生します。

一方、夫と妻に2,500万円ずつ所得金額が発生した場合、3,000万円を控除すると非課税になります。そのため、夫にも妻にも自宅を売却した際の所得税や住民税は発生しません。

先ほど紹介したメリットとデメリットを考慮した上で、そのメリットをより多く受けられる選択をしましょう。

おしどり贈与を適用するときの手続き方法・手順

それでは、実際におしどり贈与を利用する際にはどのような手順を踏み、どのような手続きが必要となるのでしょうか。また、税務署に提出する書類にはどのようなものがあるのでしょうか。

その流れに沿って、順番に確認していきましょう。

必要な書類を揃える

おしどり贈与の特例を利用するためには、以下の3つの書類を準備する必要があります。

  1. 贈与を受けた日から10日を経過した日以降に作成された戸籍謄本または抄本
  2. 贈与を受けた日から11日を経過した日以降に作成された戸籍の附票の写し
  3. 贈与を受けた居住用不動産の登記事項証明書

また、贈与された財産が居住用不動産であった場合には、

  1. 居住用不動産の固定資産評価証明書

が必要です。

すべて贈与税申告書へ添付するので、戸籍関係や固定資産評価証明書は市町村役場、登記事項証明書は法務局に交付申請しておきましょう。

路線価方式で居住用不動産を評価する場合、計算式は「路線価×土地面積(m²)」となるので、登記事項証明書で土地面積を確認してください。

なお、贈与税申告書に不動産番号を記入すれば、登記事項証明書は添付不要となります。

申告書を作成する

贈与税の申告書は、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。

贈与税申告書第一表

また、最寄りの税務署の窓口でも、贈与税の申告書を入手できます。申告書を入手したら、その書式に従って必要な項目を記載していきます。

まずは贈与税の申告書の最上部に、贈与を受けた人の住所や氏名、個人番号、生年月日などを記載します。

次に、贈与された財産の内容を記載します。暦年課税分の「一般贈与財産分」の欄に、贈与した人の住所や氏名、そして財産の内容を記載しましょう。

一般贈与財産の価額の合計額を記載したら、その下に配偶者控除額を記載するようになっています。最高2,000万円までの金額を記載し、最終的な課税価格を計算します。2,110万円以下の居住用不動産またはその取得資金を贈与された場合、課税価格は発生しません。居住用不動産やその取得資金が2,110万円を超える場合や、居住用不動産以外の贈与がある場合には、贈与税が発生することがあります。この場合は、贈与税額を計算して、申告書に記載します。

税務署に申告する

税務署に申告する際は、必ず贈与を受けた人が住む場所の管轄の税務署に申告を行います。また、申告期限内(贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日まで)に申告書を提出する必要があるため、必ず期限を守りましょう。

なお、贈与税が発生する場合には、申告だけでなく納税も期限内に済ませる必要があります。納付書は税務署で入手できるため、あわせて手続きを行うようにしましょう。

おしどり贈与を適用するときの注意点

最後に、おしどり贈与の適用を受ける際の注意点について確認しておきます。実際に利用する場合だけでなく、利用を検討している場合にもよく確認しておきましょう。

同一配偶者には一度だけしか適用できない

おしどり贈与の特例は、同一の配偶者に対しては1回しか使うことができません。

婚姻期間が20年経過すれば利用できる特例ですが、20年経過して1回目、さらに20年経過して2回目ということはできないこととなっています。同一の配偶者でなければ、2回目の適用を受けることができます。

ただ、いずれの場合も20年以上の婚姻期間が必要となるため、簡単なことではありません。また、相続対策や所得税対策を行う際に、2人目の配偶者を想定して1回目のおしどり贈与を行うことは考えてはいないでしょう。そのため、現実的に2回以上おしどり贈与を利用することは、ほとんどありません。

税金は発生しなくても申告書の提出は必要

おしどり贈与を利用する際には、贈与税が発生してもしなくても、必ず贈与税の申告書を税務署に提出しなければなりません。逆にいえば、贈与税の申告書の提出が、最大2,000万円の控除を受けるための条件となっているということです。

もし贈与税が発生しないからといって申告をしなかった場合、最大2,000万円の配偶者控除を適用することができません。そのため、2,000万円以下の贈与を行ったのに申告をしなかった場合、贈与税は非課税とはなりません。このような場合、後から申告漏れを指摘されることとなるため、注意が必要です。

二次相続まで考えておく

夫婦の財産は、夫か妻のいずれかの名義になっています。夫の保有する財産が多い場合、おしどり贈与によって夫名義の自宅の一部を妻の名義に変更することが考えられます。

しかし、おしどり贈与によって夫の相続財産を減らすことができたとしても、その分だけ妻の相続財産を増やしていることとなります。そして、妻が夫から他の財産を相続していれば、自宅に加えてそれらの財産も妻の相続財産となります。

結局、夫と妻の保有している財産は、最終的には子供など次の世代に引き継がなければならず、そのときに相続税がかかります。

目先の相続税を減らすことができても、最終的な税負担は減らない、または逆に増えてしまうというケースも考えられます。そのため、おしどり贈与を利用する場合には、必ず二次相続まで考えておく必要があるといえます。

二次相続とは?対策が必要な理由や二次相続にも使える5つの相続対策

まとめ

おしどり贈与は、最大で2,000万円までの贈与が非課税になるため、節税効果が大きな制度と思うかもしれません。しかし、このおしどり贈与を利用したからといって、必ず税負担を軽減できるとは限りません。

配偶者の場合は、相続税においても税額軽減という制度があり、こちらの方が非課税となる財産の額が大きくなります。また、相続と贈与では不動産取得税や登録免許税に違いがあります。

結婚して20年経過したからすぐに利用するのではなく、本当にメリットがあるのかよく考えてから利用するようにしましょう。

税理士 古尾谷 裕昭
  • この記事の監修者

  • 税理士 古尾谷 裕昭

VSG相続税理士法人
代表 税理士

2006年に古尾谷会計事務所開業。現在は、相続を専門とするVSG相続税理士法人の代表税理士。
税理士・司法書士・弁護士・行政書士・社会保険労務士・不動産会社が在籍し、相続税申告のみならず、相続登記、相続争い、遺言書作成、信託、資料収集から不動産売却・コンサルティングまで様々な業務に対応。年間申告件数3,000件以上。

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