世帯分離とは
世帯分離とは、一つ屋根の下に暮らしている家族が、住民票を分けて別世帯になることです。親が介護サービスを利用している場合、同一世帯であれば世帯所得で自己負担額が決まりますが、世帯分離すると親の所得のみで負担額が決まります。
世帯分離には家計の支出を抑える効果があるので、介護費用の負担額が重い場合は検討してみましょう。
世帯分離のメリット
世帯分離すると1世帯あたりの年収が下がるため、世帯年収を基準にした保険料などが低くなるメリットがあります。具体的には以下のメリットが考えられます。
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国民健康保険料が低くなる
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後期高齢者医療制度の保険料が低くなる
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介護費用の自己負担割合が低くなる
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高度介護サービスの自己負担額の上限を低くできる
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世帯分離しても相続時には小規模宅地等の特例を適用できる
上記のメリットは必ず発生するわけではありませんが、子供の所得が高くても介護費用などの負担が軽くなるケースもあります。
また、世帯分離していても、一定要件を満たせば小規模宅地等の特例を適用できるため、相続時には自宅敷地(330㎡まで)の評価が80%減額されます。
世帯分離のデメリット
世帯分離には以下のようなデメリットが考えられるため、世帯分離後の保険料などを試算しておかなければなりません。
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国民健康保険料が高くなる可能性もある
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家族手当や扶養手当の対象外になるケースがある
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親世帯が子供の会社の健康保険組合を利用できなくなる
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行政手続きなどに委任状などの手間がかかる
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二世帯住宅の場合、登記状態によっては小規模宅地等の特例を適用できない
世帯分離すると各世帯で国民健康保険料を納めるため、結果的に保険料が高くなるケースがあります。
また、親の代わりに子供が行政手続きなどを行う場合、都度委任状が必要になります。
親子が別々に区分登記している場合も、相続時に小規模宅地等の特例が使えない可能性があるので注意しましょう。
世帯分離でも小規模宅地等の特例を適用できるケース
親子で世帯分離している場合、生計や世帯は別でも居住家屋は同じなので、親が亡くなったときには、一つ屋根の下に住む子供が自宅を相続することが多いでしょう。
このようなケースでは小規模宅地等の特例が適用可能であり、一定要件を満たしていれば、敷地面積330㎡(約100坪)まで評価額を80%減額できます。
節税効果が高く、親の自宅を相続する際には必ず使いたい特例ですが、二世帯住宅の場合、構造や所有権の状態によっては適用できない可能性があります。
では、小規模宅地等の特例を適用できる状況と、できない状況をみていきましょう。
小規模宅地等の特例の基本要件
小規模宅地等の特例には細かな要件が設定されていますが、以下の基本要件だけは必ずクリアしていなければなりません。
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被相続人が実際に住んでいた宅地であること
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建物の敷地が被相続人名義であること
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被相続人の配偶者、または同居する相続人が自宅を相続すること
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相続した人が相続税の申告期限(10カ月)まで居住していること
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相続人が無償で建物や敷地を利用していること
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相続税の申告をすること
同じ建物に同居していた相続人であれば、基本的には小規模宅地等の特例を適用できます。
小規模宅地等の特例は老人ホーム入居中の相続に適用できる?適用要件まとめ
親名義の建物に世帯分離した子供が住んでいるケース
土地と建物が親名義で登記され、1階に親、2階に世帯分離した子供が住んでいるケースであれば、特に問題なく小規模宅地等の特例を適用できます。
構造的に二世帯住宅ではなく、内階段で各階を自由に行き来できるタイプなので表面的には親子の同居にみえるケースです。
親名義の二世帯住宅(非分離型)に子供が住んでいるケース
非分離型の二世帯住宅とは、玄関が1つで内階段の構造になっており、各階を自由に行き来できるタイプの住宅です。各階に水回りなどの設備が整っているので、1階が親の居住スペース、2階が子供用など、それぞれが独立して暮らせる構造になっています。
このような構造の建物は単一名義で登記することになるため、土地・建物が親名義で登記してあれば、子供が相続するときに小規模宅地等の特例を適用できます。
親名義の二世帯住宅(分離型)に子供が住んでいるケース
分離型の二世帯住宅とは、1階と2階(または横並び)で玄関が別になっており、外階段を使わないと行き来ができないタイプの建物です。
一つ屋根の下であっても生活は完全に分離していますが、土地・建物が親名義の登記であれば小規模宅地等の特例を適用できます。
区分登記した二世帯住宅(分離型)に子供が住んでいるケース
分離型の二世帯住宅の場合、親子が別々に区分登記していると、小規模宅地等の特例を適用できません。土地が親名義であっても、建物の1階部分が親、2階が子供名義になっている場合は、別々の家に住んでいるものとみなされます。
分離型の二世帯住宅については、以前は別世帯として扱われていたため、小規模宅地等の特例の対象外でしたが、2014年1月1日以降は特例の対象となりました。
ただし、土地・建物が親名義で登記されているケースに限るので、区分登記されている場合は、以下のような方法を検討する必要があります。
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贈与や売却により子供の持分を親に移転する
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合併登記で単一名義の建物にする
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親子の持分を等価交換する
後から非分離型に改修したケース
二世帯住宅の中には分離型で建築し、後から内階段を設置して非分離型に改修している例もありますが、これは区分登記のままでは小規模宅地等の特例は適用できません。
増築によって分離型の二世帯住宅になっているケース
もともと親名義の建物が1棟あり、隣接(一部の壁を共用)させる形で子供用の居住部分を増築するケースもあります。
それぞれの居住部分が独立しており、内部で行き来できない状態でも、土地と建物全体が親名義であれば小規模宅地等の特例を適用できます。
別棟の建物を通路や廊下でつなげているケース
同じ敷地内に親子が別棟の建物を建築しており、通路や渡り廊下で建物をつなげている例もありますが、1棟の建物にはならず、親子は別居している状況になります。したがって、同居の要件を満たせないことから、小規模宅地等の特例は適用できません。
このようなケースは、それぞれの建物が親名義でも特例の対象外になります。
三世帯が分離型の建物に住んでいるケース
内部で行き来できない分離型の三世帯住宅であり、1階に親、2階に長男、3階に次男が住んでいる場合でも、父親名義であれば小規模宅地等の特例を適用できます。
ただし、3階を第三者に居住用として貸していた場合は、1階と2階の床面積に応じた部分だけが特例の対象になります。
隣接する別棟の建物で内部がつながっているケース
建物としては別棟でも、一部の壁を共用しており、内部で自由に行き来できるタイプの住宅もあります。家同士が横並びでぴったりと隣接している状況ですが、内部がつながっているため、1棟の建物とみることもできます。
1棟に判定された場合は小規模宅地等の特例を適用できますが、別棟に判定されると同居親族の要件を満たせないため、特例の対象外になります。
このようなケースでは、税法や建築基準法などの専門知識が必要であり、過去の事例を参考にする場合もあるので、相続に強い税理士へ確認した方がよいでしょう。
区分登記かどうかを確認する方法
建物が区分登記されているかどうかは、毎年春に送付される固定資産税の納税通知書や、課税明細をチェックすればわかります。親子で別々に区分登記しているときは、基本的に納税通知書も別々に送付されます。
また、納税通知書が1通しか送付されていなくても、課税明細に家屋番号が2つ表示されていれば、区分登記されている可能性が高いでしょう。
本来は法務局で取得できる登記事項証明書で確認しますが、取得の際には地番や家屋番号が必要になるため、納税通知書や課税明細で確認する方が手軽です。
なお、登記事項証明書を取得するときは、土地・建物の住所を管轄する法務局の窓口、または郵送やインターネットで申請できます。
世帯分離の手続き方法・必要書類
ここからは世帯分離の手続き方法や、必要書類の解説となりますが、まず世帯分離するべきかどうかのシミュレーションが必要です。安易に世帯分離すると保険料や税金が高くなってしまうため、十分な検証を行いましょう。
介護費用などが減るのかシミュレーションをする
世帯分離をするときは、まず保険料や税金面を考慮して、本当にメリットがあるかどうか十分なシミュレーションを行ってください。
世帯分離した後でも同一世帯には戻せますが、何度も役所へ出向くことになるため、時間や労力が無駄になってしまいます。自分でシミュレーションできないときは、FPやケアマネージャーにも相談してみましょう。
十分なメリットがあるとわかったら、以下のように世帯分離の手続きを進めてください。
必要書類をそろえる
世帯分離の手続きには以下の書類が必要となります。
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世帯変更届(住民異動届)
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国民健康保険被保険者証(加入している方のみ)
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本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
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印鑑(認印で構いません)
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委任状(代理人が手続きする場合)
世帯変更届は役所の担当窓口に交付を依頼してください。代理人が手続きする場合は委任状が必要となりますが、様式は役所指定のものを使うとよいでしょう。
市役所の窓口に書類を提出する
世帯分離の手続きに必要な書類がそろったら、住民票がある役所に以下の人が提出します。
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本人
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世帯主(世帯分離後のどちらの世帯主でも可能です)
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同一世帯の人(役所によっては委任状が必要になるケースもあります)
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代理人
ほとんどの役所では世帯分離してから14日以内の手続きを原則としているので、できるだけ早めに手続きを済ませておきましょう。
なお、提出期限日が役所の閉庁日にあたるときは、翌開庁日が提出期限となります。
まとめ
世帯分離は簡単な手続きで完了するため、保険料や介護費用などの支出を抑えたいときは、できるだけ早めに検討するべきでしょう。長期的にみると大きな節約になり、貯蓄などの資金計画にも余裕ができます。
ただし、かえって国民健康保険料が高くなる、あるいは扶養手当の支給に影響したりするので、専門家の意見も参考にすることをおすすめします。
また、二世帯住宅にも様々な構造があるため、小規模宅地等の特例が使えるかどうか、登記情報だけではわからないケースもあります。
地価が高いエリアの場合、特例の適用可否が相続税額に大きく影響するので、世帯分離を検討する方は、社会保険労務士や税理士に相談するとよいでしょう。



