朝日新聞の「国土交通省による基幹統計の不正をめぐる一連のスクープと関連報道」(統計不正問題取材班)が、優れた報道に贈られる2022年度の新聞協会賞を受賞しました。日本新聞協会が7日、発表しました。編集部門での受賞は、21年度の「LINEの個人情報管理問題のスクープと関連報道」に続き、2年連続です。
最初の報道は昨年12月15日付の朝刊。国土交通省が国内総生産(GDP)の計算に関わる基幹統計「建設工事受注動態統計」を集計する過程で、建設業者から提出された受注実績データを無断で書き換えて二重計上し、統計が8年前から過大になっていた事実を調査報道で特報しました。さらに、同省が不正により統計が過大になっている可能性を把握しながら放置し、隠蔽工作に走っていた疑いがあることも報じました。
初報を受け、岸田文雄首相は報道内容を認め、斉藤鉄夫国交相も陳謝。第三者による検証委員会は今年1月、報道された事実を認定しました。さらに、大臣が給与を返納し、事務次官らが処分される事態に発展しました。国交省は8月、統計部門の体制強化などを柱とする再発防止策「統計改革プラン」を発表。2013~20年度の統計が不正の影響などで34.5兆円過大だったと公表し、統計を修正した結果、名目GDPも修正されました。
日本新聞協会は授賞理由について「現場の証言を積み重ねる地道な取材で、厚生労働省の統計不正事件発覚後も国交省が不正を続けていた事実や、隠蔽工作に走った疑いがあることを暴いた。入念に準備された初報が社会に与えた衝撃は大きく、首相が不正を認め、国交相が謝罪するなど、政府が直ちに対応せざるを得ない流れを作った。国の政策立案に関わるデータが歪められていたことを明らかにし、行政監視の役割を果たした調査報道として高く評価される」と説明しています。
統計は社会の状態を映す鏡であり、政策立案や民間の経営判断にも幅広く使われています。今回の不正は、統計への信頼を根底から揺るがし、社会に大きな衝撃を与えました。仮に報道がなければ、重大な不正やその影響が明らかにならなかった可能性が高いと言っても過言ではありません。問題を明るみにして政府を動かした今回のスクープは、ジャーナリズムによる権力監視そのものであり、調査報道の価値を高めるものとなりました。
授賞式は10月18日の新聞大会で行われる予定です。