(かいづ・あきこ)東京都生まれ。博士(教育学)。特別支援教育士スーパーバイザー、臨床心理士、公認心理師。文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」協力者会議特別協力者。東京都教育委員会「発達障害のある児童・生徒の指導方法の研究・開発事業」検討委員会委員。日本LD学会理事長。著書多数。
MIMとは何か?
――MIMについて教えてください。
子どもたちの学習のつまずきを早期に見つけて、早期に支援する指導モデルです。「MIM(ミム)」と読みますが、これはMultilayer Instruction Model(多層指導モデル)の略語です。私はずっとLDと呼ばれる「学習障害(Learning Disabilities;限局性学習症:Specific Learning Disorder)」の子どもたちの研究をしてきました。その中で感じていたのは、「LDの支援」というのは、「つまずいてからのスタート」であるということです。「子どもがつまずくまで待って、つまずいてからようやく支援が始まる」といってもいいでしょう。
子どもはLDと判断・診断されるまでの間に、すでに勉強がものすごくしんどくなっているのです。散々つらい思いをした果てに、ようやく支援につながることになります。そうなると、支援を受ける子どもの中には、勉強だけでなく、心に傷を負ってしまう子どもも少なくありません。
――ずっと勉強に苦労していたのに助けてもらえず、診断を受けてやっとサポートが得られる。そのときには、子どもは学校や先生に不信感を抱いてしまうこともあるのですか。
勉強へのモチベーションが低下してしまったり、自己評価が過剰に低くなってしまったりしています。また、学校に居場所も見つけられず、不登校になっている子どももいます。以前、こうした子どもたちの相談を受けていた際、その子の情報処理の特性をアセスメントによって浮かび上がらせながら指導を行っていくと、何年も身につけることができなかった読み書きの内容が、たった数カ月で身についたりする場面を目の当たりにしてきました。そのときに、つまずいて苦しんでいる子どもたちへの支援と同時に、こうした子どもが少しでもつまずかないで済む支援も考えていく必要があると思ったのです。
子どもたちが最初につまずくのは授業です。そこで、授業を工夫する。例えば、今までつまずいた子どもに行っていたような工夫した指導を、最初の授業の段階で取り入れていく。つまり、クラス全員に対して、LDの子に対して行っていたような工夫された読み書きの指導や支援を行っていく。そうすれば、LDと診断される可能性がある子も授業で手応えを感じ、勉強へのモチベーションを失わせずに済むかもしれない。そして、LDと診断されないまでも困っている、困る可能性のある子どもも救えるかもしれない。そのような考え方から生まれたのが、MIMの指導モデルです。
これは2005年にアメリカのテキサス大学で研究していたときに、現地で行われていた指導法をベースに構築したものです。その頃、テキサスをはじめ、アメリカでは、LDの子どもだけでなく、すべての子どもの学力を保障しようという動きがおきていました。アメリカでは、英語を第二言語とする子どもへの支援などの課題がありました。