「長いおつきあい」を育む、サステナブルな商い

2025年の万博会場となる夢洲(手前)と、大阪駅周辺のビル群。大阪商工会議所は、在阪企業にSDGsの啓発を進め、成果を世界に発信することで大阪の存在感を高めていく。©朝日新聞社

SDGsの達成を世界に示す好機となる2025年の万博。誘致活動を推進した大阪商工会議所会頭の尾崎裕さんに大阪企業の特徴と、万博に向けての今後の展望を伺った。

文=江口絵理 写真=祐實とも明

大阪商工会議所 会頭 尾崎 裕 さん

大阪商工会議所は、会員の多くが中小企業で、家族経営の小さな会社や個人事業主も多い。CSRの部署を構え、企業の社会的責任を意識してきた大企業はともかく、外から見ると中小企業とSDGsは縁遠く感じられる。しかし大阪商工会議所会頭の尾崎裕さんは「昔から大阪で商いをしてきた小さな会社こそ、サステナビリティを大事にしてきた」と語る。

「商売は、自分だけがもうかって相手が困る形では長続きしない。会社が生き延びていくには『長いおつきあい』がなにより大事なんです。だから、ともに栄えていく方法を考える商いが根付いている」

生き延びるために必要な「長いおつきあい」。それはまさにサステナビリティの本質をついている。SDGsも、地球上で人間が長く生き延びていくための目標だ。「大阪をはじめ、関西のビジネスには、SDGsと通底する精神がもともと組み込まれていると思います」

SDGsは世界へ視野を広げる「窓」

このような関西にあってSDGsは、これまで実践してきた「商いを長続きさせる知恵」を明確に言葉で示す契機になると同時に、人々の視野を、商売の相手や大阪の町だけでなく世界へと広げるものになる、と尾崎さんは言う。

「かつての大阪で売られていた、たこ焼きのタコは日本近海で捕れたものでしたが、いまは多くが海外から輸入されている。身近で捕っていれば乱獲や海の生態系の変化や漁師の労働環境などの問題に気づきやすいが、日本から遠く離れた地域までは普通はなかなか注意がいかないものです」

しかしSDGsという枠組みは、世界規模でサステナビリティを考えるための窓になる。「現代のサプライチェーンは、世界中に広がっています。小さな企業でも、海外からの原料調達や海外への販路拡大と無縁ではありません。ビジネスを長持ちさせていくためには、関わりのある地域での資源や環境はもちろん、貧困や労働など、さまざまな領域のサステナビリティにも意識を向ける必要があります」

とはいえ中小企業にとって、世界に広がるサプライチェーンの先で何が起きているのかを知るのはそう簡単ではない。大阪商工会議所はそうした情報を会員に提供することにより、SDGsに沿った企業活動をサポートしようとしている。

万博の運営主体「日本国際博覧会協会」で尾崎さん(左から3人目)は副会長として、計画を具体化していく。©朝日新聞社

万博で大阪の企業から課題の解決策を発信

2025年には大阪で万博が開催される。大阪商工会議所は大阪の企業の力を結集して世界の大きな課題の解決に貢献するものを発信しようと呼びかけている。

「日本は世界一の長寿国であり、大阪・関西は医療、製薬において日本のリーディングエリアです。健康維持の鍵となる『運動』を支えるスポーツ用品メーカーも多い。健康と長寿は、SDGs実現に向けて大阪が貢献できることの一つだと思います」

SDGsは2030年を目指した目標であり、大阪・関西万博はその5年前に行われる。「万博は、解決策と方向性を具体的に示し、世界で共有するまたとない機会。この先6年の準備期間がSDGsへの動きそのものであり、万博はそれを形にして見せる場だと思っています」

「関西のビジネスには、SDGsと通底する精神がもともと組み込まれている」と話す尾崎さん。万博では、シニア世代の活躍にも期待を寄せる。

そのためには若い世代が、旧来の制度などに縛られることなく挑戦できる場を用意していきたい、と尾崎さんは続ける。「サントリーの創業者、鳥井信治郎さんの言葉のように、『やってみなはれ』の精神で(笑)。加えて、シニア世代の活躍を促したい。社会で活躍し続ける人は年を重ねても健康な人が多い。年齢にかかわらず輝くことのできる社会をつくると、結果的に社会保障費は下がります。それを原資に健康支援を増やすというサイクルを回したい。これはゴール3の健康にも、ゴール8の働きがいにも貢献することだと思うのです」

Profile

尾崎 裕 Ozaki Hiroshi

大阪商工会議所 会頭

1950年兵庫県生まれ。東京大学工学部卒。大阪ガス入社後、原料部長、ガス製造・発電事業部長、エネルギー事業部長などを経て、2008年に社長、2015年から会長。2015年より、大阪商工会議所の会頭を務める。

Our GOAL

尾崎さんが個人的に関心のあるゴール

世界の一方には飢えに苦しむ人がいて、他方には食べ過ぎによって健康を害す人がいる。人々に食糧をいきわたらせることが難しい国がある一方で、食べきれないほど余らせて大量廃棄する国がある。求められている全体量が少ないから競争になり、格差が生まれているというわけではないですよね。「地球上で、不足と過剰の偏在が起きている」という現代の社会の状態に疑問を感じています。

Topics

大阪商工会議所がSDGs特設サイトを開設!

大阪商工会議所は全国の商工会議所として初となるSDGsをテーマとしたWEBサイトを開設した。関西の企業や団体のSDGs取組事例の紹介、自社の強みを活かせる目標がわかるツール「SDGs取り組み診断」など、中小企業がSDGsに取り組むうえでヒントとなる有益な情報が掲載されている。

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