大阪・関西万博で世界中の若者が未来を共創する場作りに挑む〝WAKAZO〟。
U30の鋭い感性で、持続可能な社会と「いのち」に向き合う。
文=小坂綾子 写真=祐實とも明
企業のように技術も資金もない。けれど、感度が高くアイデアもある。見返りがなくても全力で取り組める。ワカゾウだけど、ワカゾウだからできることがある。
2025年の大阪・関西万博。〝WAKAZO〟はこの万博を活用して、世界の若者たちと未来を共創するチャレンジをしていく。「やりたいこともエネルギーもあるのに社会に発信する方法がわからない若者は多いはず。彼らの持つ『原石』を発見し、未来社会につなぎたい」と京都大学医学部の6年生で執行代表の川竹絢子さんは語る。
WAKAZOは、京都や大阪の医学生らが中心となってつくる「inochi 学生プロジェクト」から誕生した団体だ。当初、万博の誘致メンバーは平均65歳以上。高齢化が進む日本を象徴する現実に、行政も危機感を抱いていたという。一方、開催案を知った学生たちも、「若者の立場で関わりたい」という思いが湧き上がり、行政に働きかけた。「若い感性で未来を創る場も必要」との学生と大人たちの思いが合致してプロジェクトが発進した。関西の大学生を中心に30歳以下の若者が参加し、精神科医を目指す川竹さんも立ち上げに加わった。
掲げているのは、万博会場に“WAKAZO Pavilion”をつくること。「世界各地のいろんな若者が集まって化学反応が起こり、新しいイノベーションが起こる実験場になれば」(川竹さん)人と人が関わって生まれる力。ここに、SDGsと通じる部分があるという。
万博のテーマであるSDGsだが、一つの番号だけを見て目標を達成するのは難しいと考える川竹さん。「大事なのは番号と番号がつながること。違ったジャンルの人が知恵を出し合い、問題意識がかけ合わさった時に課題解決につながる。SDGsには人々をつなぐ力がある」
SDGsのカラフルでおしゃれな見え方も、若者が入りやすい要素。「最初にSDGsを耳にしたとき、流行りの言葉だとわかっても中身が見えなかった。けれど、見た目がキャッチーならもっと深く知ろうと興味をもつ。インスタグラムの〝映え〟は課題意識の導入になる」と神戸学院大学薬学部4年生でWAKAZOのSNS部門を担当する横山夏季さんは語る。
真正面から真面目に説き伏せても動かない若者の心を動かす鍵は何か。横山さんは、WAKAZOが実施した2017年のアイデアコンペのサイトで、若者の投稿作品に「いいね」がついて、動画の再生数が伸びると熱を帯びていく瞬間を運営側から見てきた。
「インスタグラムやツイッターと同じ。自分の発信が人の目に触れれば、気持ちが変わる」デザイン性や「面白い」という感覚を入り口に、0から1を生み出す仕掛けに力を入れる。昨年は、「世界の若者が抱えるSDGsの課題を発掘する」とのコンセプトでメンバーが世界を旅し、現地の人に困っていることを調査した。 「一般市民のリアルな声を知って、難しい政策の話ではない、現実的な解決策を若者の視点で考えられた」(横山さん)SDGsの課題を聞くと、国や地域で差がある実態も見えた。
多様な問題意識を持つ世界の若者がパビリオンに集う6年後を思い、準備は着々と進む。万博のテーマである「いのち」を考える“2025年万博若者会議”を開いて機運を高める計画で、19年度は「生まれる」「死ぬ」「生きがいを持って暮らす」「世代を超えて受け継ぐ」の小テーマを設け国内4都市で開催する。
今の自分を動かしているのは1970年の万博の体験︱︱誘致活動中に聞いた京都大の山中伸弥教授の言葉が、川竹さんには忘れられない。「万博には、未来のスターを輩出するポテンシャルがある」と確信した。人材輩出への川竹さんの思いに、横山さんも強く共感する。
「大切なのは人。お金があっても動く人がいなければ必ず途絶える」万博とSDGsで若者の心に火をつけ、才能を開花させる。大きなミッションに向け“若造”の挑戦は始まっている。
WAKAZO 執行代表
1995年愛知県生まれ。京都大学医学部在学中。
人間の体のほとんどは水でできています。生活にも欠かせなくて、水がないと生きていけない。6番を解決すると、かなりの人が救われるのではないでしょうか。他の番号にもかなり通じるところがあり、面白いテーマです。
WAKAZO SNS部門
1997年兵庫県生まれ。神戸学院大学薬学部在学中。
ノートルダム大聖堂が焼け、木材について考えています。日本で、例えば東大寺などの社寺が焼けて再建するとなれば、国内で樹齢100年ほどの木を用意できるか。林業が衰退し、輸入が増えていることが気になります。