学部と大学院を統一した「学院」を創設
創立から135年の歴史を誇る東京工業大学の大きな改革が、今年度スタートした。日本の大学としては初めて学部と大学院を統一。両者が一体となった教育を行う「学院」を創設した。このシステムは、学士課程(学部相当)と修士課程、修士課程と博士後期課程の教育カリキュラムがシームレスに学修できるよう設計されている。この改革によって何が変わり、学生にどのようなメリットがあるのか。三島良直学長に聞いた。
「現在の大学は、卒論を提出して学部を卒業してから大学院に入るので、そこでいったん仕切り直しになっていました。しかし、本来、学部と大学院は学問体系としてはつながっているので、この学院のシステムでより自然な形になるわけです。昨年までは、3学部に23の学科があり、大学院には6研究科に45の専攻があり、あまりに細分化されすぎていた傾向がありました。本学の学生の九割が大学院に進むことを踏まえても、学生が最終的に何を専門にするかを決めるまでの時間を長くして、もっと自らの興味・関心の赴くままに、広い視野で学ぶことができるようなシステムに変えたわけです」
理工系の大学ながら教養教育に注力する
リベラルアーツ研究教育院の池上彰特命教授
今回の教育改革のもう一つ大きな目玉に「リベラルアーツ研究教育院」の創設がある。
「本学は、理工系の大学でありながら、人文社会系の教養教育に力を入れてきた歴史があります。もちろん学生が高い専門性を身につけることは大事ですが、それだけでは人としての幅が広がりません。大学を卒業後、自分の知識や技術で社会に貢献しようと思ったときに、幅広い教養がないと、せっかく身につけた知識や技術も生かせません。そうした意味で、リベラルアーツは非常に重要で、この考え方を具体化し、博士後期課程まで教養分野を履修できるようにしました。学院が提供する『理工系専門知識』という縦糸と、リベラルアーツ研究教育院が提供する『教養』という横糸を組み合わせる事で、学生の潜在能力を今まで以上に引き出せます」
リベラルアーツ研究教育院の科目の一つに、学士課程への入学直後に全学生が履修する「東工大立志プロジェクト」というものがある。
「このプロジェクトは、有識者による大人数講義と、少人数でのグループワークを交互に繰り返しながら、自分で考える力と大きな志を育てる意図があります。教員陣には、ジャーナリストの池上彰特命教授をはじめ、社会の第一線で活躍されているさまざまな分野のエキスパートを多数招いています」
この4月、入学式で英語で式辞を述べた三島学長。そこには当然、東工大のさらなるグローバル化という展望がある。
「国際社会に対応すべく、大学院の専門科目では2019年度までに、ほぼすべての講義を英語化する予定です。『学院』では英語を母語とする外国人教員による講義を増やしたので、学生は英語での講義に慣れてほしいと考えています」
東工大では、教育改革とともに研究改革も始まっている。
国際面で研究を強化 海外の研究者も招く
東工大立志プロジェクトでの少人数グループワーク
「学士課程の後半から大学院にかけては、学生自身が研究に携わる比重が高まります。彼らをスキルアップさせるためにも、国際共同研究を推進し、教員自身の国際面での研究力を強化することが重要だと考えています。研究所や研究センター、最先端研究を小規模なチームで能動的に推進する研究ユニットからなる科学技術創成研究院を創設し、研究体制を集約しました。本学で行われている研究には素晴らしいものが数多くあります。それらをもっと世の中にアピールし、同時に海外からの研究者もこれまで以上に招聘(しょうへい)できるような体制づくりも目指しています」
教育改革、研究改革、グローバル化への対応など、大きく変わろうとしている東工大。その目指すところはどこなのか。
「2030年までに、世界のトップ10に入る理工系総合大学になることが目標です。今回の改革によって、今まで以上に世界中から優秀な学生や研究者が本学に集まってくるようになれば、それも不可能ではありません」











