全学生共通の英語教育プログラム
ポール・ネルス先生によるPE授業の様子。すべてのPE、APE授業では実践的なコミュニケーション能力の向上に主眼が置かれる
「横浜から世界を目指す」。これは横浜市立大学が掲げるテーマだ。同大学は、国際総合科学部の文系、理系の各コースに加え、医学部も擁する総合大学だが、このテーマは全学で貫かれており、「TOEFL‐ITP」で500点を最低到達水準としてクリアすることが、進級要件になっている。その水準クリアのために全学生共通で設けられた授業が「プラクティカル・イングリッシュ(PE)」プログラムだ。
「進級要件なので学生たちには試験をクリアしてもらう必要があります。ですが、点数を取ることが本当の目的ではありません」
PEセンターのディレクターであるマクガリー・カール教授はそう話す。
「私は学生たちに『健康を維持するために体重をチェックするように、試験はあくまでも基準の一つ』だと説明しています。真の目的は、実用的な英語を身につけること。そうでなければ学生のモチベーションも上がりませんから」
実用的な内容を授業に落とし込む
PEセンターでは、学生のレベルに応じた多読用教材を用意
PE授業は週に3コマ。リスニング、グラマー、リーディングとカテゴリー分けされてはいるが、どの授業でも英語によるコミュニケーションが重視されている。今年7月上旬に行われたポール・ネルス先生のPE授業をのぞいてみた。
今回のテーマは「ディスカウント」。まずは、学生たちにどうしたらディスカウント(値引き)の交渉がうまくいくか意見を求める。もちろん、授業はすべて英語で進められる。
「他の店のほうが安かった」「二つ買うから安くして」など、多くの意見が出た後、今度は学生同士で売買のシミュレーションが行われる。決して簡単ではないやりとりだが、より実践的なコミュニケーションスキルを身につけることができるだろう。学生が戸惑う場面では、ネルス先生がうまく言葉を引き出していく。
「これはあくまで一例で、幅広いテーマを扱っています。プログラム開始当初は、試験対策の色合いが強かったようですが、最近はどんどんコミュニケーションに主眼を置いたものに移っています。それでも、クリア率は年ごとに上がっています」(マクガリー教授)
現在は、入学後1年以内に約70%の学生が基準をクリアする。PE授業を参考にするため、横浜市内の高校教員が見学に訪れることも多いという。
海外での経験を積極的にサポート
PEセンターのディレクターであるマクガリー・カール教授。博士(教育学)。長年英語教育に携わり、2007年からPEを担当
PEをクリアした学生には、より実践的な内容となる「アドバンスド・プラクティカル・イングリッシュ(APE)」プログラムが用意されている。
「入学前に大学が英語に力を入れていることを知っていることもあり、学生たちの意識も変わってきています。特にAPEを受講した学生は、海外フィールドワークや留学などへ積極的に参加してくれています」(マクガリー教授)
同大学では、国際交流を推進する海外派遣プログラムを多数用意している。海外フィールドワークは、ゼミの一環として教員と学生が海外へ行き、現地調査やディスカッションなどを行うプログラム。医学部のリサーチ・クラークシップ(研究実習)では、海外の研究機関を選択する学生も多い。また海外でのインターンシップも積極的にサポートしている。
国際総合科学部国際総合科学科経営科学系1年の片岡伊吹さんは、入学当初、授業についていくことに苦労したという。
「授業に関するお知らせのメールもすべて英語で最初はとまどいましたが、授業以外でも先生がサポートしてくれて、徐々に慣れてきました」
先輩たちからのアドバイスも参考にしつつ、今後は大学が提携している国際ボランティアへの参加も考えているという。
グローバル化が言われて久しいが、世界を舞台に活躍できる横浜市立大学の人材育成メソッドは、今後もさらなる進化を続けていく。











