Cashless Insight #1

ここまで進んだ日本のキャッシュレス

START!編集部

佐藤 元則
NCB Lab. 代表

吉富 才了
株式会社電通 新産業開発部
電通キャッシュレスプロジェクト 主宰

コロナ禍で生活者のキャッシュレス利用はさらにに拡大し、店舗のキャッシュレス受付も進んだであろう。そういった仮説のもとに、電通キャッシュレスプロジェクトとNCB.Labは、2021年12月末、第二回「コロナ禍での生活者のキャッシュレス意識に関する調査 」を実施しました。

本調査の目的は、新型コロナウイルスによりライフスタイルが大きく変化する中、生活者の決済手段がどのように変化し、今後どのような決済手段が主流になっていくかを明らかにすることにあり、今回は20年12月の第一回 に次ぐ2回目の調査となりました。

調査結果に基づき、世界のキャッシュレスに事情に詳しいNCB Lab.の佐藤元則(さとう・もとのり)さんと、電通でキャッシュレスプロジェクトを推進する吉富才了(よしとみ・まさのり)さんが、日本のキャッシュレスに関するインサイトについて、対話形式でわかりやすく答えていきます。今回のテーマは「ここまで進んだ日本のキャッシュレス」です。

キャッシュレス未利用者は、わずか6.7%

佐藤:今回の調査で、日本人のキャッシュレス利用はどのくらいになったのでしょうか?

吉富:はい。今回は20~69歳までの男女500人を対象に、インターネットで聞いてみました。その結果、全体の93.3%がキャッシュレスを利用しているという回答でした。前回調査では、キャッシュレス利用は88.6%。この1年で4.7%増えたことになります。現金だけを使っている人は6.7%まで減ったことになります。

佐藤:ほう、すごいですね。93.3%がキャッシュレス利用という数字をみると、日本もキャッシュレスが進んだものだなあと思います。確かに、キャッシュレス利用の中でも、「よく利用している」人がこの1年で増えていますね。前回は43.5%でしたが、今回は56.2%と、12.7%増加しています。キャッシュレス推進派にとってはうれしい変化です。

吉富:そうですよね。一方で、依然として「少しだけ利用」という人が14.4%、「利用している」と回答した人は22.7%います。この人たちは、キャッシュレスと現金の両方を利用していると推測されます。

緊急事態宣言以降、6割がキャッシュレス決済を増やした

佐藤:世界では国家非常事態宣言後にキャッシュレス利用が急増しています。日本の緊急事態宣言後のキャッシュレス利用ではどうだったのでしょうか。

吉富:はい。20 年4 月の緊急事態宣言以降、キャッシュレスが増えたという人が60.9%にのぼりました。

佐藤:3人に2人が緊急事態宣言前よりも、キャッシュレス決済を増やしたということですね。キャッシュレスのトレンドをパンデミックが加速したと言えますね。

吉富:内訳をみると、「これまでほとんどキャッシュレス決済を使っていたが、さらにキャッシュレス比率が増えた」が19.2%。「これまで現金よりキャッシュレス決済がやや多い程度だったが、キャッシュレス比率が増えた」が20.0%と、両方合わせて39.2%になりました。キャッシュレスが増えた人の64%がこれまでキャッシュレスをメインに使っていた人ということになります。

佐藤:すでにキャッシュレス決済を利用している人は、その利便性を理解しているというわけですね。習慣化しているものは、頻度をあげやすい。

吉富:また、「これまで現金がキャッシュレス決済より多かったが、キャッシュレス比率が増えた」は14.0%。「これまで現金しか使わなかったが、キャッシュレス決済の比率が増えた」は7.7%でした。

佐藤:この両者が、現金至上主義からキャッシュレス派に少しずつ移行していることがわかります。わずか2年で現金利用にこだわりのあった抵抗勢力をキャッシュレス利用に変えたというのは、パンデミックのポジティブインパクトですね。

日常生活と関係が深い場所でキャッシュレス利用が増えている

佐藤:では具体的に、どこでキャッシュレス決済する割合が増えたのですか?

吉富:今回の調査では、キャッシュレス決済を利用している467人に複数回答で聞いてみました。その結果、利用回数を増やした人が一番多かった場所は、コンビニエンスストアでした。

佐藤:全国で約57,000店あるコンビニエンスストアは、生活に密着した存在ですね。1回あたりの平均単価は約500円と言われていますので、単価の低い商品購入でのキャッシュレス利用を、40.6%の人が増やしているということですね。

吉富:2位はスーパー・ショッピングモールで38.5%でした。

佐藤:スーパーは暮らしに欠かせない食料品を扱っている。食料品の購入にも抵抗なく、キャッシュレスの利用回数を増やしているという状況が見てとれますね。

吉富:3位はドラッグストアでした。ドラッグストアの利用回数が増えた人は32.6%でした。

佐藤:日本全国でドラッグストアは約22,000店。平均単価は約1,000円前後と言われています。コンビニエンスストアと同様、日常生活に溶け込む存在。そこでのキャッシュレス利用も増えている。

吉富:4位はインターネット通販で23.6%でした。コロナ禍で、大幅に増加しているのではと想定していましたが、もともとがキャッシュレス利用なので回数が増えたという実感はないのでしょう。

佐藤:キャッシュレス利用回数が増えたトップ3 は、総じて日常生活と関係が深い場所といえますね。

キャッシュレスで困っている場所は、病院・診療所

佐藤:キャッシュレスが進まないのは使えない店があるからだ、という声をよく耳にします。今回の調査では、キャッシュレスを使おうと思っても使えない場所として挙げられたのはどこだったのでしょうか?

吉富:はい。使えなくて困ったという声が最も多かったのは、病院・診療所でした。33.3%のキャッシュレス利用者が、そう回答しています。

佐藤:大手の病院はキャッシュレスを受け付けているものの、中小ではまだ少ないですよね。コロナ禍で、病院や診療所の決済はできるだけキャッシュレスにしたいと思うはず。しかし、受け付けてくれない。欧米では考えられないことです。日本には保険制度のカベがあって、保険適用は現金、保険適用外であればキャッシュレスと分離しています。しかし、大手の病院では関係なくキャッシュレスを受け付けているところもあります。患者目線に立った決済サービスを考えてほしいものです。

吉富:2位は中小店舗で14.3%、3位は商店街で13.9%でした。この2つは以前の調査結果でも使えないと指摘されていた場所です。4位は理美容室・ネイルサロンで11.6%でした。衛生上のことを考えれば、キャッシュレスを受け付けなければならないところですよね。

佐藤:はい、ここまでの調査結果からは、コロナパンデミックによってキャッシュレスが相当進んだということが言えるかもしれません。でも、本当にそうなのでしょうか。少し疑問に感じていることがあります。

次回は『Cashless Insight #2:それでも日本人の現金利用が多い謎』というテーマを取り上げます。

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