Cashless Insight #2

それでも日本人の現金利用が多い謎

START!編集部

佐藤 元則
NCB Lab. 代表

吉富 才了
株式会社電通 新産業開発部
電通キャッシュレスプロジェクト 主宰

「コロナ禍での生活者のキャッシュレス意識に関する調査」をベースに、世界のキャッシュレスに事情に詳しいNCB Lab.の佐藤元則(さとう・もとのり)さんと、電通でキャッシュレスプロジェクトを推進する吉富才了(よしとみ・まさのり)さんが、対話形式でわかりやすく答える「Cashless Insight」。今回のテーマは「それでも日本人の現金利用が多い謎」です。

キャッシュレスを増やした場所で現金利用が多い謎

佐藤:キャッシュレス利用者は93.3%もいました。しかも、緊急事態宣言以降キャッシュレスが増えたと回答した人は、キャッシュレス利用者の60.9% を占めています。さらに、キャッシュレス回数が増えた場所のトップ3は、コンビニエンスストア 40.6% 、スーパー・ショッピングモール 38.5% 、ドラッグストア 32.6% でした。これらの場所では、現金決済はほとんどなく、大半がキャッシュレス決済になっているにちがいない。そう思っていたのですが、調査の結果は想定外でしたね。

吉富:はい。コンビニエンスストアで最もよく使われている決済手段は、モバイル決済(51.7%)でした。では2位はなにか。カード(25.9%)でも、電子マネー(27.9%)でもなく、現金(46.9%)でした。スーパー・ショッピングモールでは、トップがカード(56.4%)で、2 位が現金(54.7%)。ドラッグストアでは、なんとトップが現金(49.2%)という結果でした。

佐藤:これには驚きましたよね。93.3%の人はキャッシュレス決済手段をもっている。緊急事態宣言以降、キャッシュレス回数が増えた場所のトップで、いまだに現金がこれほど多く使われている。これらの場所で、キャッシュレス決済できないところはほとんどないはずです。にもかかわらず、なぜ現金を使うのでしょうか。

少額のキャッシュレス決済はなぜ広がらないのか

吉富:コンビニエンスストアやスーパー、ドラッグストア、そして百貨店のレジ待ちをしていていつも思うのは、財布にカードを入れているにもかかわらず現金で支払っている人が多い、ということです。「カードが使えますよ」と、つい声をかけたくなってしまいます。

佐藤:では、なぜ現金を使うのでしょうか。

吉富:理由のひとつは上の図にあると思います。少額決済でのキャッシュレス利用が低いのです。500円以下のキャッシュレス利用は4人に1人以下。100円以下では、10人に1人しかいません。コンビニエンスストアの1回あたりの客単価は約500円と言われています。それ以下でのキャッシュレス利用がぐっと減っています。

佐藤:世界では、これら生活に密着した3業態のキャッシュレス決済はあたりまえです。スウェーデンでは現金を出すとイヤな顔をされます。ショップはキャッシュレスでレジのスピードをあげたいという思いがありますし、小銭のやり取りで間違えることを嫌います。
日本も同様、これら3業態ではキャッシュレスがウェルカムなのです。ところが生活者の気持ちが萎えているようです。

吉富:少額支払いにキャッシュレスを使うと、「使えません」と断られてしまうのではないか。あるいは、少額決済で加盟店手数料を取られるのは「申し訳ない」と気をつかっている生活者も少なくないのではないでしょうか。

佐藤:なるほど、恥の文化、謙譲精神が日本人のDNAに組み込まれているのかもしれません。でも一方で、交通機関では、少額決済でも気兼ねなくキャッシュレスを使っていますよね。
金額の多寡にかかわらず、堂々と恐れずにキャッシュレスで支払おう、といった生活者への教育啓蒙がまだ足りていないのではないでしょうか。

現金への衛生的抵抗が信じられないほど低い日本人

佐藤:現金離れが進まないもうひとつの理由は、日本人の現金に対する衛生的抵抗意識が低いことではないでしょうか。コロナ禍で清潔であることがさらに重要になっており、決済においても衛生面の懸念が浮上しています。

吉富:その状況を踏まえ、どの決済手段を使うことに、衛生的な抵抗があるかを聞いてみました。その結果、「とても抵抗がある」のトップは現金で9.5%と生活者の1割にも満たない結果でした。質問項目にあえて、「新型コロナウィルスによって清潔であることが重要になっている」と、前置きをしたにもかかわらずです。
これに「やや抵抗がある」を加えると、現金への衛生的抵抗を感じている人は36.2%になりますが、それでも3人に1人にとどまっている状況でした。

佐藤:吊り革を持つのをためらう人は多いが、現金がウィルスの媒介になると感じている人は少ない。欧米では、生活者と従業員の安全を考え、現金を使わず、キャッシュレスを使うことが一般的になっているのですが。日本人の現金崇拝の強さには少し怖さを感じてしまいます。

吉富:「とても抵抗がある」での2位はモバイル非接触決済の6.5%でした。本来、この中では電子マネー<タッチ方式>(3.2%)と同等でなければならないはずなのですが。

佐藤:キャッシュレスの効用や安全性について、生活者の教育啓蒙がまったくできていないということです。これは大きな課題ですね。世界ではキャッシュレスの中で最も衛生的と言われている非接触決済利用が急伸しています。

次回は『Cashless Insight #3:日本の非接触決済のポテンシャル』というテーマを取り上げます。

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