Cashless Insight #4

中小店舗のキャッシュレスが進まない!

START!編集部

佐藤 元則
NCB Lab. 代表

吉富 才了
株式会社電通 新産業開発部
電通キャッシュレスプロジェクト 主宰

「コロナ禍での生活者やお店のキャッシュレス意識に関する調査」をベースに、世界のキャッシュレスに事情に詳しいNCB Lab.の佐藤元則(さとう・もとのり)さんと、電通でキャッシュレスプロジェクトを推進する吉富才了(よしとみ・まさのり)さんが、対話形式でわかりやすく答える「Cashless Insight」。今回のテーマは「中小店舗のキャッシュレスが進まない!」です。

遅々として進まない店舗のキャッシュレス導入

佐藤:中小店舗のキャッシュレス導入状況はどうですか。コロナ禍で相当伸びたのではないでしょうか。

吉富:今回は、小売業250件、飲食業350件、合計600件を対象にした調査結果です。キャッシュレス決済を導入している店舗は、52.3%にとどまりました。内訳は、2019 年10 月より前から導入しているところが39%。19年10月、日本政府のキャッシュレスキャンペーン以降に導入したところが13%となっています。この13%のうち、20年4月の緊急事態宣言以降にキャッシュレスを導入したところは5.8%のみでした。

佐藤:政府が19年に実施したキャッシュレスキャンペーンは一定の効果をあげたようですが、その後の進展は、はかばかしくないようですね。いまだに48%がキャッシュレスを受け付けていない。

吉富:そうなんです。小売業では44%、飲食業では50%が受け付けていないという結果でした。そこには厚いカベが横たわっています。

佐藤:相当根深い要因がありそうですね。

吉富:キャッシュレスを導入している店舗に、導入効果を聞いてみました。トップは、「つり銭を用意する手間が減った」(26.7%)でした。ついで「客層が広がった」(19.4%)、「レジ作業の時間が短縮できた」(19.0%)となっています。

佐藤:有効な導入効果があるにもかかわらず、キャッシュレスを導入しようという意欲は低い。未導入店にこういう効果が伝わっているのでしょうか。決済事業者はもっとキャッシュレスの効果を声高に訴える必要がありそうです。

顧客は店舗からのキャッシュレス推奨を待っている

佐藤:キャッシュレス導入店の売上に占めるキャッシュレスの比率は、どれくらいだったのでしょうか。

吉富:全体の平均値は26.7%でした。キャッシュレス導入店でも、現金比率が73.3%という結果でした。

佐藤:えっ、4分の1だけがキャッシュレスですか。驚きました。相変わらず現金主義がはびこっていますね。

吉富:今回の調査で明らかになりましたたが、生活者はキャッシュレス決済手段を持っているにもかかわらず、現金を使っているという結果でした。中小店舗では63.6%、飲食店では63.1%、商店街では59.3%が現金を使っています。カードやモバイル決済も使ってはいますが、現金の利用が依然として高いという結果でした。

佐藤:キャッシュレスを導入している店舗でも、現金利用が過半を占めているという現状は看過できません。キャッシュレスを導入している店舗はどんな理由で導入したのでしょう。

吉富:キャッシュレス決済を導入した理由のトップは、「お客さまの利便性が向上しそうだから」で59.1%。ついで「お客さまの要望があるため」が40.6%でした。

佐藤:なるほど、顧客志向でキャッシュレスを導入したという経緯は評価できます。であれば、もっと顧客にキャッシュレスを勧めるべきではないでしょうか。現金利用に対し、キャッシュレスでの支払いを推奨すべきです。店頭ポスターやレジ周りのポップ、あるいは声がけで。感染対策としてキャッシュレスを推奨するのは効果があります。顧客の安全であり、従業員の安全につながるのですから。

中小店舗の悩みはキャッシュフローの改善

吉富:キャッシュレス未導入店に今後の導入意向を聞いた結果、未導入店のうちキャッシュレス決済導入意向があるのは23%だけでした。残りの77%は残念ながら意向はないという結果でした。

佐藤:ショックですね。たった23%だけですか。導入意向の店舗でも、すぐにではないが導入を検討しているという回答が18.2%もありますね。検討しているというところは、婉曲な否定が多い。割り引いて考える必要があります。

吉富:キャッシュレス未導入店に何を解決すれば良いかを聞くと、圧倒的に多くが、「加盟店手数料が安い(無料)こと」になります(60.7%)。「端末やシステムなどの初期投資が安く(無料)になること」がそれに次ぐ結果でした(37.1%) 。

佐藤:未導入のカベを崩すのは、手数料や初期導入を無料にすることしかないのでしょうか。手数料を払ってでも、導入したいサービスはあるはずです。

吉富:すでにキャッシュレス決済を受け付けている店舗に、決済サービス会社に期待することを聞きました。その結果、決済サービス会社に期待することのトップは、「売上の早期入金」で46.6%でした。他を圧倒しています。
また、「決済アプリで特別特典提供」(23.4%)や「決済アプリで店舗紹介」(19.2%)など、店舗への送客につながるマーケティングサービスも期待が高いことがわかります。

佐藤:中小店舗は今日の売上で翌日の仕入れをしているところがあります。キャッシュフローが現金と同じように回れば、キャッシュレス導入がもっと進むかもしれません。それと、店舗の売上向上に繋がるマーケティングサービスを決済事業者が積極的に提案すれば、キャッシュレス導入になびくのではないでしょうか。

次回は『Cashless Insight #5: キャッシュレス導入が進まない理由は手数料にあらず』というテーマを取り上げます。

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