
投資経験者こそ「個人向け国債」? 理由を徹底解説
私たちは超低金利に慣れてしまい、まとまった利子がつく喜びを知らない、もしくは忘れてしまった方が多いでしょう。諸外国では金利が付くのは当たり前。それどころか、最近の急激な物価上昇に伴い、金利の上昇傾向がみられました。今後、わが国でも物価上昇が当たり前になってくれば、金利が上昇する局面がやってくるかもしれません。こういう時には、債券投資に注目してみましょう。
短期金利と長期金利
お金に余裕のある人からお金が必要な人へお金を融通することが金融です。お金を貸すこともその一つの行為です。お金を貸す際には一般的に、返済までの期間と金利などの条件を決めて貸し出します。期間が1年未満の場合の金利を「短期金利」、1年以上ならば「長期金利」と分類することが一般的です。
日本銀行のような各国の中央銀行は物価や景気を安定させるために政策金利を上げ下げして調整します。短期金利はこの政策金利に大きく左右されます。一方で、長期金利は新規発行される10年物国債の金利が代表的指標で、金利の将来の見通しによって大きく左右されます。短期金利は中央銀行によって、長期金利は市場によって動きます。
住宅ローンの変動金利や、普通預金、満期1年以下のような短期の定期預金の金利は短期金利に、住宅ローンの長期固定金利や、5年満期といった長期の定期預金の金利は長期金利に連動するのが一般的です。
インフレが深刻な時期には債券投資に注目しよう

世界的な物価上昇が続き、多くの国の中央銀行は政策金利の引き上げを行っています。これに伴い、短期金利も長期金利も上昇しました。
海外では、この政策金利の上昇が景気へ悪影響を与えることを懸念して、株式相場が大きく変動する状況もみられます。つまり、株式のリスクが高まっているということです。この点を考慮すると、金利が高いなら債券への投資に注目すべきです。
債券は国や企業がお金を借りる際に発行し、借用書のような機能を果たす金融商品です。国が発行する債券は国債、企業が発行する債券は社債と言います。発行する際には返済期限や金利などの条件が決められ、満期になれば額面金額が償還されます。また、満期までの期間が数か月という短い債券から10年以上といった長期にわたる債券もあり種類が豊富です。一般的に債券は預貯金よりも高い金利がつくため、魅力的な金融商品になっています。
どこが発行してる? 債券は発行体の財務体力を要チェック
債券は満期まで保有すれば額面金額が戻ってくるので、比較的安全性が高いと言われます。ただし、債券を発行した国や企業が満期までに財政破綻や倒産しなければという条件はつきます。債券の発行体の財務体力が弱いと債券の満期を迎えられる可能性が低くなるため、金利が高くなります。逆に発行体の財務体力が強いほど金利は低くなります。投資する際には、どこが発行する債券なのかを確認することが重要です。
また、一般的な債券は時価が変動します。満期までの期間が長いほど変動は大きくなります。一般的には債券は固定金利なので、発行時の金利が満期まで続きます。たとえば、満期まで10年で金利1%の国債を購入したとしましょう。その後、世の中の金利が2%に上昇したら、保有している金利が1%しかつかない債券の魅力は下がってしまいます。逆に世の中の金利が0%に下がったら、金利が1%もつく債券の魅力は高くなるでしょう。このように、世の中の金利が高くなる局面では債券の時価は下がり、世の中の金利が低くなる局面では債券の時価は上がるのが一般的です。

金利低下の局面で強い 「新窓販国債」とは?
わが国でも国債や社債を購入することができます。国債の場合、個人が一般的に購入するものとして「新窓販国債」と「個人向け国債」の2種類があります。債券というと証券会社で購入するイメージが強いですが、これらの国債は証券会社だけでなく、銀行や信用金庫、JAや郵便局などでも購入することができます。日本国が発行している国債なので、国が破綻しない限り半年ごとに利払いされ、満期時には額面金額が償還されます。
新窓販国債は固定金利で満期まで2年、5年、10年の3種類が販売されており、いずれも最低5万円から5万円単位で購入できます。満期になれば額面金額で償還されますが、満期までの間も時価での途中売却が可能です。時価は世の中の金利の上げ下げにより変動し、世の中の金利が低下する局面では時価の上昇を期待できます。もしも、満期までの間の時価の上昇を期待するなら、満期までの期間が長い10年ものの新窓販国債を購入するとよいでしょう。
金利上昇の局面で強い 「個人向け国債」の魅力は?

一方で、個人向け国債は、変動金利で満期まで10年の「変動10」、固定金利で満期まで3年と5年の「固定3」と「固定5」の3種類が販売されており、最低1万円から1万円単位で購入できます。個人向け国債には新窓販国債と大きく違う点がいくつかあります。
まず、個人向け国債は時価が変動しません。個人向け国債は発行後1年経過以降、中途換金が可能で元本が戻ってきます。中途換金の際には直近2回分の受け取り利子相当分が控除されますが、元本割れはしない仕組みですので安心して購入することができるでしょう。
また、固定金利だけでなく、変動金利もラインナップされているので、現在のように今後の金利上昇が期待できる局面では威力を発揮するでしょう。
2022年12月募集(2023年1月発行)分の「変動10」の個人向け国債の金利は年率0.17%です。もちろん、今後金利が下がる可能性もありますが、最低金利が年率0.05%に設定されているので超低金利の時期でも多くの銀行の定期預金よりも高い金利を得ることができます。下がる時のデメリットより、金利上昇についていけるメリットの方が魅力的でしょう。
投資経験者でも国債を購入した経験のある人は少ないでしょう。投資が好きな方でも預貯金などの安全資産がない人はいないはず。国債を上手に使って安全資産から得る利益もより大きくできるように工夫したいところです。これから金利が高くなる時代が来るかもしれません。まずは始めやすい個人向け国債の「変動10」から始めてみてはいかがでしょうか。