特別講演
「天然水の森」が目指す生物多様性の高い森づくり
「天然水の森」が目指す
生物多様性の高い森づくり
風間 茂明
サントリーホールディングス
執行役員 サステナビリティ経営推進本部 副本部長
水のサステナビリティ実現に向けた「水理念」
サントリーグループのパーパスは「人と自然と響きあい、豊かな生活文化を創造し、『人間の生命(いのち)の輝き』をめざす。」。バリューは「Growing for Good やってみなはれ 利益三分主義」です。この企業理念をよりいっそう追求することが、サステナビリティ経営だと考えています。
サステナビリティ全般を俯瞰(ふかん)した際には、「脱炭素」「サーキュラーエコノミー」と、今日お話しする「生物多様性の回復」が重要となります。
生物多様性に関しては、気候変動と密接に関係しており、食料などの恩恵をもたらす生態系に異常気象が影響を与え、人間社会そのものが存続の危機に陥るというリスクを持っております。温室効果ガスを吸収する生態系の能力が消失すると、気候変動が加速するというリスクもあります。気候変動と生物多様性は表裏一体の関係にあり、我々はこの二つを活動の大きなテーマとして考えています。
私どもの事業は、水がなくては続けていくことができません。1899年に創業以来、120年を超えて事業を続ける中、水について深く考え、取り組みを進めてきました。
2017年にサントリーグループは、水のサステナビリティの実現に向けて「水理念」を掲げました。水理念は「水循環を知る」「水を大切に使う」「水源を守る」「地域社会と共に取組む」という四つの柱でできています。
具体的には、水源で水を育む森づくりをすること、工場では水を大切に使うこと、使用した水をきれいにして自然に返すことに取り組みます。さらに、次世代に伝える「水育(みずいく)」という環境教育プログラムを持っています。
100年後を見すえ、「天然水の森」で土壌保全
サントリーグループは、15都府県22カ所に計約1万2000ヘクタールの「天然水の森」を設定しています。これらの森では、工場でくみ上げている地下水の2倍以上の水を涵養(かんよう)(※1)するため 、土壌を保全する環境林整備を行っています。
「天然水の森」の活動の目標は、水源の涵養林としての機能を保持すること。生物多様性に富んだ森林を維持すること。洪水や土砂災害などに強く、豊かな自然と触れ合うことのできる美しい森林を目指しています。我々は個々の森で調査を行って、100年後の森の姿のビジョンを作り、毎年の活動計画を立てています。
一見するとたくさんの木が生えている森も、手入れがされていないと土壌の方に光が入らず、草や低い木が育たないと我々は認識しています。手を入れて木を間引くことによって、土に日光が届き、下草が生え、土壌やこの森に住む動物たちが増えていきます。我々は生態系ピラミッドの生物多様性を再生することで、土壌が「ふかふかの土」になり、水を育む森の機能が回復するような活動をしております。
生態系ピラミッドの頂点に生きる、ワシやタカといった猛禽類(もうきんるい)が子育てできるような環境こそ、我々の理想とする天然水の森です。長野県の大町市の天然水工場に隣接した「天然水の森 北アルプス」では、森を整備することによって、タカの巣作りができるような環境を整えしました。翌年にはオオタカが巣作りをし、さらに雛が生まれ、無事に巣立ちを迎えることができました。
22カ所の森で実践している活動を、『サントリー天然水の森 生物多様性「再生」レポート』(※2)という形で昨年まとめました。
持続可能な「水と生きる」社会へ
「天然水の森」の活動は、国内外のプロジェクトとも連携しています。環境省が先導する「生物多様性のための30by30アライアンス」に参画し、国内企業としては最多の5カ所の「天然水の森」が自然共生サイトに認定されています。
さらに、地域との共創という目的で、東京都の檜原村と22番目の「サントリー天然水の森 とうきょう檜原」を2023年2月に設定しました。「天然水の森」の活動を実践する研修の場としても活用し、多くの社員が森林涵養の活動に参加できる場としています。また、この「天然水の森」の活動がきっかけとなり、8月には福岡県うきは市とも、環境保全や資源循環社会の実現に向けて包括連携協定を締結することができました。今後連携を深めていきたいと思います。
グローバルの活動としては、水のサステナビリティを推進する国際的な認証機関であるAWS(Alliance for Water Stewardship)から、日本で唯一、認証を取得しました。特に2023年は九州熊本工場が、最高レベルの「Platinum認証」を獲得しました。
私どもサントリーグループは「水と生きる SUNTORY」をコーポレートメッセージに掲げ、「人と自然と響きあう」持続可能な社会を目指していきます。
- ※1森林を保護し育てることで水源を守ること
- ※2『サントリー天然水の森 生物多様性「再生」レポート』
https://www.suntory.co.jp/company/csr/data/report/pdf/biodiversity_report.pdf
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