パネルディスカッション
気候変動と生態系を通して考える、地球の未来
気候変動と生態系を通して考える、
地球の未来
島村 琢哉
公益財団法人旭硝子財団理事長
AGC取締役兼会長
ゆうちゃみ
モデル・タレント
コーディネーター
合田 禄
朝日新聞デジタル企画報道部記者
今年の夏に日本では観測史上最高気温を記録し、世界各地でも山火事や洪水などの気象関連災害が相次いでいます。生態系の保全や回復が世界的に注目されている今、気候変動対策について、私たちはどんなことができるのでしょうか? 地球環境の保全と改善につながる活動を続ける旭硝子財団の島村琢哉理事長と、モデル・タレントのゆうちゃみさんが、地球の未来について語り合いました。
夏の酷暑、ゆうちゃみさん「危機感が高くなっています」
合田今年の夏、本当に暑かったと思います。ゆうちゃみさんはいかがでしたか?
ゆうちゃみヤバかったですね。ロケをしていてもすぐにメイクが崩れたり、汗だくになったりして。「今年ヤバいな」と言っている率が毎年高くなり、危機感を持っています。
合田気候変動のリスクを皆さんが意識するようになってきました。旭硝子財団ではそのような危機意識の調査を長年されています。
島村環境問題をビジュアルで理解しやすい手段として、私どもは「環境危機時計」を作って、世界の有識者約1700人と、国内の一般の方約1300人にアンケートを取っています。1992年のときは7時49分と有識者は回答していましたが、2025年は9時33分。非常に危険な領域に入っています。
- 環境危機時計とは
- 1992年から世界各国の環境問題の有識者に毎年アンケート調査を実施し、回答者が人類存続に対して抱く危機感を「環境危機時計」の時刻として公表する取り組み。この時計では、環境に対する危機感が四つにわかれていて、0時から3時までは「ほとんど不安はない」、3時から6時までは「少し不安」、6時から9時が「かなり不安」、9時から12時が「極めて不安」な状態を示している。
ゆうちゃみこれ12時になったらどうなるんですか? もう手遅れゾーンじゃないかなって。
島村人々がこれまでのような普通の生活を送れなくなる状態を想定しています。たとえば南の方の島が水没したり、南極や北極の氷が溶けたり、対応しきれないような災害が世界各地で頻発するイメージです。今のうちから対応すれば、そうなる前に食い止めることができると思います。
ゆうちゃみ2025年の時刻だと、一般生活者の方は7時29分、有識者は9時33分。意識が2時間も空いちゃっているんですか?
島村有識者の場合は、科学的な分析やデータから、今までと違った環境の変化が起きているのがわかっているので、この差が出てきてしまうのかなと思います。
合田2025年と24年で、有識者と一般生活者の意識の差が縮まっています。これはどう見ていますか?
島村世界的に気候変動が起きているのが実感として湧いてきて、一般の方も「これはただごとじゃない。環境の問題なのか?」と思い始めたというのが、我々の見方です。
合田自分事になると意識が変わってくるというのは、啓発活動を続けてきた財団の立場から、どう受け止めていますか?
島村旭硝子財団は1933年にスタートし、次世代を担う方々への研究助成や奨学助成を中心にやってきました。昨年からは、高校生で環境問題について活動しようとする方々に支援を始めています。
合田高校生から若い研究者まで、幅広いチームで環境問題に取り組んでいこうということですね。
島村たとえばゴミは一人当たり1日500グラムを出しているんです。一般ゴミの処理費用は2万円から3万円ぐらいする。それを政府や自治体がお金を出しているんですけど、財政的にも厳しいし、埋立地が確保できなくなっている。仮に一人が一日に100グラム減らしたら、年間438万トンのゴミが減っていくのです。一人でやれることは限られているのですが、一人ひとりの積み重ねがチームとなってまとまれば、そういう大きな数字になっていくと思うのです。
ゆうちゃみ「自分一人でやってもな……」と思うところもあるのですが、チームとなると「一団となって頑張ろう」みたいな、他人事じゃなくなる感じがいいなと思いました。
「問題解決、誰かがやってくれる」 若い世代に強い傾向
島村環境危機時計のアンケートで「環境問題を解決するために、誰の行動が重要でしょうか?」という質問に対して、20代30代の方々は、中央政府や誰かがやってくれるだろうという意識がまだまだ強いという結果が出ています。
ゆうちゃみチームと一緒で、全員がやらないと意味がないというか。政府だけではどうしようもないところもあるので、私たちの協力も、たぶん全員必要!
合田具体的な事例で、ご自宅で使っている電気。再生エネルギーだけを使うプランに数百円プラスで切り替えませんかって言われたら、どうですか?
ゆうちゃみ説明を聞いたら納得できるとは思うんですけど…。「政府からの補助金は出えへんのかな」とか、いろんな疑問が出すぎて、契約まで至らないかなと思いますね。
合田気候変動対策やエネルギー問題は、政府の優先度が上がらない中で、企業や市民はどういうバランスで対策を考えていくべきでしょうか?
島村日本の国債、すなわち借金が1000兆円以上。GDPの2倍ぐらいある状態で、我々一般人・企業・政府が役割分担をやっていかないと、この問題はなかなか前に進んでいかないというのが私の思いです。まさにチームになって、やれることをやる。その積み重ねで大きな成果を目指すことを、もう一度みんなで認識すべきだと思います。
ゆうちゃみみんながハッピーになるために、若い世代は何から始めたらいいのでしょうか。
島村たとえばゴミを減らすことはできると思うんです。モノを作ればCO2が出てきてしまうので、使い捨てじゃなくて何回も使うことによって、モノを作る量をコントロールしていく。自らのモノを大事にして使っていく。そんなところから始めるしかないと思いますね。
旭硝子財団、生物多様性・気候変動の研究を支援
合田気候変動と生物多様性は、とても密接です。たとえば森林が失われると、二酸化炭素を吸う力が落ちます。雨水を蓄えるような自然の力が損なわれて、高潮や台風の被害が大きくなります。旭硝子財団は生物多様性や気候変動の基礎研究にも助成をしていますが、その意義はどう考えていますか?
島村たとえば、ウニをめぐって漁師とラッコの争奪戦があり、これについて研究した人がいます。すると、実はラッコが食べたいのはウニではなく二枚貝や巻き貝だとわかり、漁師とラッコは共生できるようになりました。北海道で、マリモが減った原因を突き止めて、少しずつ回復していく道を示された研究者もいます。こういう生物多様性の研究をされている方に対して助成していくことに意味があり、決して派手ではないけれども重要で基礎的な研究にもできる範囲で協力しています。
ゆうちゃみ人間と動物が一緒に住んでいく中で、どこを尊重していくかは、すごい大事やなって。ラッコは悪くないもんですね。地味な研究ほど、すごい重要なものばかりだと思いました。
合田気候変動の国際会議COPが毎年開かれていますけれども、生物多様性のCOPに今注目が集まっています。旭硝子財団の「ブループラネット賞」は、気候変動や生物多様性の研究者にも贈呈されてきました。
島村「ブループラネット賞」は1992年、リオの地球サミットを契機に創設されました。第1回の受賞者は、2021年にノーベル物理学賞を取られた眞鍋淑郎先生です。スーパーコンピューターを使って気候変動を予測されたのですが、ブループラネット賞の受賞業績がノーベル賞の選考理由と一緒だったので、先見性があったと思っています。
合田最後に、印象に残っている話をお願いします。
ゆうちゃみチーム一丸となってみんなで日本や地球を良くしていこうというのが、すごい心に響いたので、今日からゴミを減らして地球に恩返しできたらなと思います。
島村特に若い人たちが将来安心して生活できるためには、今からできることを少しずつでも始めないといけないのです。環境問題を若い人が身近なこととして感じていけるような機会を、我々自身ももっと提供していけたらと思いました。
- 2025年(第34回)ブループラネット賞受賞者
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ロバート・B・ジャクソン教授(米国)
スタンフォード大学 地球システム科学科 教授メタンガス等の温室効果ガスの排出量の収支を定量化し、監視と削減に尽力。2017年からは、グローバルカーボンプロジェクト(GCP)の議長を務め、各国の政策立案に大きな影響を与えている。

ジェレミー・レゲット博士(英国)
ハイランド・リワイルディング社創設者・CEO
カーボン・トラッカー・イニシアティブ初代会長「カーボンバブル」の概念を提唱し、化石燃料への投資はリスクが高いと金融界に警鐘を鳴らした。経済活動と環境保全の両立を目指す実践的な活動として、英国を代表する太陽光発電企業を創業。
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