企画制作:朝日新聞社メディアビジネス局 広告特集
PR:総務大臣指定 電話リレーサービス提供機関
一般財団法人日本財団電話リレーサービス
広がる電話のバリアフリー。“きこえる人”にこそ知ってほしい
「電話リレーサービス」を、大学生とともに考えます

2021年7月に開始された「電話リレーサービス」は、聴覚や発話に困難のある人(以下、きこえない人)と、聴覚障害者等以外の人(以下、きこえる人)との会話を、通訳オペレータが「手話」または「文字」と「音声」を通訳することにより、電話で即時かつ双方向につながることができるサービスです。これにより、24時間・365日、双方向での利用、緊急通報機関への連絡も可能となりました。
「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」(2020年6月制定、同年12月施行)によって公共インフラとして制度化されたこのサービスは、社会全体で支える形で運営しており、“きこえる人”も他人ごとではありません。みんなが電話を使えると、社会はどう便利になるのでしょうか。大学生2人が、聴覚障害者の当事者でもあり、電話リレーサービスの認知向上に尽力する上嶋太さんに、率直な疑問をぶつけました。
電話ができる相手が増えて、
広がるコミュニケーション
小原
「電話リレーサービス」とはどのようなサービスですか。
上嶋
きこえない人と、きこえる人の電話を可能にするサービスです。通常の電話と同様に24時間365日いつでも使えて、通話オペレータによる手話や文字を介してリアルタイムで通話ができます。「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」に基づいて、総務大臣から指定を受けて日本財団電話リレーサービスがサービスを提供しています。
小原
以前、きこえない妊婦さんが119番に電話できなくて、胎内の赤ちゃんを亡くしてしまうという話を読んだことがあります。きこえない人にとって119番が当たり前でないことを痛感しました。
上嶋
このサービスは119番や110番といった緊急通報にも対応しています。これまでは、きこえない人は事故にあった際には、家族や周囲の人に通報してもらう方法を取っていました。
小原
1人だった場合に、助けを呼べない状況があったと思うと、このサービスがあれば便利です。
上嶋
「便利」というより、むしろ、あることが当たり前だとも言えますね。緊急に電話で連絡を取らなくてはならないと考えると、電話リレーサービスは必要不可欠だと思います。
阿部
このサービスがモデル事業だった時に、山で遭難した人が利用して、通報ができて助かったというニュースを見たことがあります。その一方で、今は無料のメッセージアプリやSNSが身近にありますよね。電話でなければ駄目なのですか?
上嶋
メッセージアプリは皆さんも使っていますが、連絡を取るためには相手も使っていて、事前に相互登録が必要なものも多いです。でも電話は、電話番号さえ知っていれば、自分から簡単に連絡を取れるうえにすぐに用件が済みます。メッセージアプリを使っていないところはまだたくさんあります。
また、本当に緊急な時、たとえば予約を変更したりキャンセルしたりする場合には、電話が必要になる場合が多いです。ホテルはインターネットで予約できても、予約変更は電話で連絡してくださいというところがほとんどですよね。きこえない人は今でも、わざわざお店などの現地に直接行って変更を申し込んだりしています。電話があればすぐに解決できるのですが、それができない場合は粗大ごみ一つを出すだけでも自治体と何度もやりとりすることもあると聞きますし大変です。
阿部
私自身も、宅配便の再配達をお願いする時に、電話をかけたことがあります。SNSやメッセージアプリではなく、電話でなければいけない場合があると納得しました。
上嶋
アプリか電話のどちらかが要らないというわけではなく、別のものだと考えて使ったらいいと思います。

小原
上嶋さんご自身は、このサービスをどう利用されていますか?
上嶋
電話が必要な時は必ず電話リレーサービスを使っています。早く返事が欲しいときなど、仕事で使うことが多いです。きこえない人たちはこれまで電話ができないことで仕事の幅が狭まっていたと思うので、電話できることによって社会参加の機会が広がればいいですね。また、今までは家族や隣人に頼んで電話してもらっていたため、自分で電話をかけられることは、プライバシーを守るという観点に加えて、社会的な自立を促す側面も持っています。
阿部
きこえる人の立場では、このサービスはどういうメリットがありますか?
上嶋
お持ちのスマホや電話をそのまま使って、きこえない人にも電話をかけられます。つまり、電話のできる相手が増えたと考えてください。しかも、皆さんは普段と同じように音声で話すだけでいいのです。わざわざメールやFAXを使わなくても、音声が手話や文字を介して伝わります。そして、相手が手話や文字で表現した内容も、音声で伝えてもらうことができます。
阿部
そういう電話の新しい発信の方法は、これから私たちにも広まっていきそうです。
上嶋
今までは、共通のコミュニケーション手段といえばSMSやメールなど。電話という選択肢はなかったわけです。電話リレーサービスなら、一般的な対話の手段として電話を選べるだけでなく、手話や文字という音声以外の選択肢も網羅しています。これは、電話に新しい価値をもたらしたといえるのではないでしょうか。
誰もが利用者になりうる。
電話で話すを「当たり前」に
上嶋
それでは実際に「電話リレーサービス」を体験していただきましょう。間にオペレータが入って、通訳をして伝えますので、タイムラグが少し生じます。オペレータをあまり意識せずに、その先にいるきこえない人と直接に電話していると思って話してみてください。
小原
オペレータではなく、その先にいる相手と話していることをちゃんと意識しなければいけない、ということですね。

上嶋
私との通話を体験されてみて、いかがでしたか?
阿部
私たちが電話をかけている時は、画面に何か出るわけでもないし、普通の電話と変わらないという印象です。上嶋さんの画面を見ると、工夫されているのがわかりました。そのおかげで私たちも違和感なく電話ができることがすてきだなと思います。
上嶋
きこえない人はいつも使っている手話や文字のまま、きこえる人は普通の電話と一緒で、お互いにありのままの話し方で、つながることができます。特別なコミュニケーションというわけではありません。
阿部
周りに聞こえない人がいなければ、電話リレーサービスが活用できる場面は少ないと思う人もいるのではないでしょうか?
上嶋
きこえない人からの電話の機会が増えれば着信の機会も増えますよね。それに、自分には必要ないと思う人も今後、年齢を重ねてきこえづらくなったり、病気や事故で話せなくなったりすることもありえます。将来的にきこえない友達ができる可能性もあります。そういった時にも、普通に電話をかけることができます。
阿部
電話で話せるのが当たり前だと思っているので、その当たり前がなくなるとすごくショックですよね。何かあった時のためにも、こういうサービスがあるのをあらかじめ知っておくべきだと思いました。
小原
きこえない人だけではなく、発声ができない方や発話が困難な方など、多くの方に可能性を与えることができるサービスだと思います。
上嶋
手話ができる人ばかりではありませんので、文字チャットも利用できます。別の観点からは昨今、AIやロボットが音声を手話や文字に変えてくれる自動音声認識の技術が注目を集めていますが、100パーセント通訳できるのかというと、まだ難しいのが現状です。固有名詞や専門用語などの一部を事前学習するのは難しく、劣悪な環境条件だと自動音声認識が良好な精度を保つのは難しいという課題もあります。やはり人と人とのコミュニケーションですので、現在の技術では、人による手話・文字での通訳は必要なのです。
そうしたテクノロジーの進化も併せて、電話リレーサービスの担う役割は大きいと考えています。
みんなで支えて、
みんなで広めていくサービス
小原
気になるのが料金です。電話リレーサービスを利用する際に、どのような料金がかかってくるのか教えてください。
上嶋
皆さんが電話を使う際、電話をかけた人が通話料を払いますよね。電話リレーサービスの通話料も同じで、かけた人が通話料金を支払い、電話がかかってきた人に料金は発生しません。こうした通話にかかる料金収入に加え、通話オペレータの人件費やサービスの運営費などには、その必要な額を賄うために、電話会社からの負担金に基づく交付金が交付されています。多くの電話会社では電話リレーサービス料を設定しており、電話を契約している人は毎月1円ほど負担(※)しています。
小原
このサービスをみんなで支えていく社会づくりのために、必要な料金なんですね。
上嶋
きこえない人のためだけではなく、きこえる人も便利になるんです。電話を公共インフラとして便利に使うために、そしてサービスを安定的に運営するために、みんなでその費用を負担しあうという考え方ですね。

阿部
私の周囲では、スマホを持っていても、電話リレーサービス料を払っているのを知っている人はいませんでした。料金に関しても、このサービスを知ってもらうチャンスですので、私もしっかり説明していきたいと思いました。
上嶋
皆さんも、サービスを使うことがあるかもしれません。みんなが使える電話リレーサービスは、コミュニケーションのバリアフリーです。きこえない人が電話を使えない時代ではなくて、きこえる人と同じように電話ができるのが当たり前になったことを、ぜひ広めていただきたいです。
阿部
近所の団地でも、バリアフリーのためにエレベーターを設置する工事をしていたりします。そのように身近なイメージで、電話リレーサービスも理解されるといいですね。
小原
当事者意識がないと、いつかそういう立場になるかもしれないのに、自分はサービスを利用しないと考えるのではないでしょうか。きこえる人にも必要だということを、もっと訴えていくことが大切だと思います。
上嶋
国連の持続可能な開発目標(SDGs)では、誰一人取り残さない社会の実現をめざしていますが、実際に電話ができなくて困っている人がいるわけですよね。そういう人たちの課題を自分ごととして捉えて一緒に解決しようという視点があれば、本当の意味でコミュニケーションのバリアフリーが実現していくと期待しています。
小原
電話リレーサービスが普及すれば、「きこえない人は電話できない」という価値観をくつがえすことになりますね。
座談会に参加したみなさん

上嶋 太さん
総務大臣指定 電話リレーサービス提供機関
一般財団法人日本財団電話リレーサービス
カスタマーリレーション/広報チーム・ディレクター
大阪市出身。大阪市教育委員会で生涯学習・人権教育に携わったのち、長野県でろう学校教員となる。2017年長野県聴覚障がい者情報センター所長就任。聴覚障害者相談や日本財団電話リレーサービス・モデルプロジェクトに参画した。2021年4月より現職。
小原悠月さん
早稲田大学2年。2020年夏より「朝日新聞DIALOG」の活動に参加。【一生、永遠、サステイナブル 心地良さを探索する】、【街に人に…出会いにラブ♡セン! 震災の悲しみ、あったから 三品万麻紗さん】などの取材を担当。興味・関心のあるテーマは、多文化共生社会。大学のゼミ内で、ろう文化について学んでいる。


阿部千優さん
昭和女子大学3年。2021年10月より、「朝日新聞DIALOG」の活動に参加。【「育休とるでしょ?」 妻に言われるまで「すっぽり抜けてた」ワケは】、【おかえりなさい 自由で温かい、小さな森の学童へ 松野恵利香さん×DIALOG学生部】、などの取材を担当。興味・関心のあるテーマは、社会福祉学、教育社会学、栄養学など。