メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

12月21日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

企画制作:朝日新聞社メディアビジネス局 広告特集

PR:一般社団法人日本損害保険協会


災害は忘れる前にやってくる…
いま、活用したい災害の予言書「ハザードマップ」

豪雨災害は近年、毎年のように全国で発生しています。島根県美郷町でも、町を流れる江の川(ごうのかわ)がここ3年で3回氾濫(はんらん)。同町では、国土交通省および日本損害保険協会と連携し、2021年12月にハザードマップ利活用推進講習会を実施し、自治会や自主防災組織のリーダーなど20人ほどの町民が参加しました。

災害に強い社会をどう実現していくのか。そのために、ハザードマップをどのように活用できるのか。防災のプロフェッショナルでもある、京都大学防災研究所教授の矢守克也さんと被災後の支援制度に詳しい弁護士の岡本正さんが本企画にオンライン出演し、講演しました。また、行政の立場から、国土交通省水管理・国土保全局の西川雅規さんが講演しました。

開会にあたり、日本損害保険協会の島根損保会会長(三井住友海上火災保険株式会社 山陰支店長)・中村哲也さんから講習会の趣旨について、

「ハザードマップを理解することで、平時においては危険の少ない場所を選択して居住することにつながり、災害時においては安全な避難行動をとることにつながります」

と説明がありました。これまでも同協会では島根県や松江気象台と連携し、地震保険の普及啓発や被災者支援など、防災力向上への取り組みをしてきました。

ハザードマップは 科学に基づいた災害の予言書

最初にオンラインで登壇したのは、京都大学防災研究所教授の矢守克也さん。災害情報、防災教育、地域防災などを専門にする矢守さんは、全国各地に出向き、ハザードマップの活用や防災の取り組みを支援しています。

「ハザードマップは『科学に基づいた災害の予言書』という言い方もできます。これまでの災害を見ても、ハザードマップで示されたエリアと実際に浸水した範囲が、ほぼ重なっていた事例もあります。ハザードマップには、いかに大事なことが描かれているかがお分かりいただけるかと思います」

矢守さんはハザードマップの活用に関連して、ある女性の事例を紹介しました。自宅がハザードマップ上で警戒区域になっているため、気象情報をチェックし、台風や大雨のたびに女性は家族と早めに避難を行なっていたそうです。その数は20回を超えたと言います。それまでは幸い被害が起きませんでしたが、20数回目の避難をしたとき、土砂崩れが起きて自宅が埋まりました。

「それまで、繰り返し避難を実施した成果だったと言えると思います。避難して何事もなかった時、私たちはしばしば『空振り』という言い方をします。でもその捉え方は好ましくない。私は空振りではなく『素振り』なんだとお伝えしています。野球と一緒で、素振りの練習があるからこそヒットが打てる。防災でも同じです」

(出典:http://www.city.ayabe.lg.jp/bosai/kurashi/anzen/bosai/fuusuigaidosyasaigai/documents/r3_hirose-hashikami-asahi.pdf)

いつ、どこへ逃げるか 避難スイッチとセカンドベスト

さらに、どのようにして豪雨災害から身を守るか、矢守さんは二つのキーワードをもとに説明しました。そのキーワードとは「避難スイッチ」と「セカンドベスト」。

「豪雨災害避難について、煎じ詰めれば大事なことは二つです。いつ逃げるか、どこに逃げるか。“いつ”に関しては『避難スイッチ』を決めておくこと、“どこへ”は『セカンドベスト』がポイントになります」

「避難スイッチ」を決めておくというのはつまり、このような情報を受けたら避難を始めようというきっかけを「あらかじめ、具体的に、みんなで」決めておく活動のことです。

例えば2017年の九州北部豪雨では、大きな土石流に見舞われながらも、92人の住民の命が無事だった地域があります。その地域では、過去に何度か豪雨災害にあった経験があり、「必ずあの辺りから冠水する」という地域独特の現象に住民が気づいていたと言います。身の回りで起こる小さな異変を避難スイッチにして、あらかじめ、具体的に、みんなで決めておいたことが確実な避難につながったのだそうです。

同じような事例が他にもあります。秋田県大仙市の高齢者福祉施設「愛幸園」では、「近くにある雄物川(おものがわ)の水位が3メートルになったら非番の職員を集める、4メートルになったら避難に時間のかかる寝たきりの方を移動し始める」と、具体的に決めていました。どの水位になったら何をするか、情報とアクションの橋渡しの作業をしっかりやっていたことがスムーズな避難行動につながったと矢守さんは考えています。

「近年の災害では、行政等から発出される情報が不十分なのではなく、既に存在する情報をどう活用するか事前に決めていなかったことがネックになって起こった被害が9割以上だと思っています。情報の更新頻度や精密さの改善が、この10年20年でものすごい勢いで行われてきましたが、このような情報本体の改善をいくら行っても、避難行動に結びつかなければ宝の持ち腐れになってしまうのです」

次に、どこに逃げるかに関する「セカンドベスト」の考え方について。もちろん自治体が指定する避難場所が最善であることは間違いありません。

「ベストな避難場所に行けない事情があるからこそ犠牲者が出てしまうわけです。ベストの場所に行けない場合でも、セカンドベスト=次善の手段として、ここに逃げるという場所を決めておく。つまり、避難場所を一つではなく、二つ、三つと複数把握しておくことが重要です。そして実際にセカンドベストを決めていた集落で、過去、人的被害がゼロだった事例が観察されています」

2階に上がるという選択肢も、セカンドベストの事例の一つだと矢守さんは言います。

「2018年の西日本豪雨で、倉敷市真備地区では51名の方が犠牲になりましたが、注目いただきたいデータがあります。それは自宅で亡くなられた方の約8割が1階部分で亡くなっておられたこと。しかもそのうちの約半数が、2階建てのお家の1階部分で発見されています。もちろん増水のペースが非常に速かったという事情もありますが、なんとかセカンドベストの避難場所として2階に上がる、近所の2階建てのお家に逃げるというような考え方を持っておき訓練をしていれば、犠牲者は減らせたのではないかと思います」

法律に基づく支援があると知っておくことが 一歩を踏み出す希望になる

次にオンラインで登壇したのは、弁護士で岩手大学地域防災研究センター客員教授の岡本正さん。「被災したあなたを助けるお金とくらしの話」をテーマに、災害後の生活再建のために知っておきたい制度や保険の仕組みについて、講演しました。

岡本さんはこれまで東日本大震災などの災害後に現地に赴き、弁護士会が開く無料相談会などで被災者の方々の声を聞いてきた経験があります。

そうした会場で岡本さんが実際に耳にしたのは、想像以上の絶望的な状況だったそうです。

「家がなくなってしまった、ローンが3,000万円以上残っている、子供の大学進学・高校進学が控えている、まとまったお金も当面の生活費もない、契約書や身分を証明するものもない。命が助かった次の瞬間から、このようなお金やくらしの再建に対する先の見えない悩みごとが広がります」

収入や財産が圧倒的なダメージを受ける一方で、学費や住宅ローンなど、日々の支払いは被災した時にどうなるかという不安もあります。引っ越しや住宅の修繕等に伴って増える支出もあり、負担が大きくなる場合もあります。

「東日本大震災では亡くなった方が多かったので、ご家族からの相続の相談が多くありました。都市部では不動産賃借のトラブルが後を絶ちませんでした。そして、住宅や車のローンが払えなくなってしまったという声が非常に多く聞こえてきました」

「でも、そこから一歩踏み出すための支援があるということを知っておいてほしい」と、岡本さんは言います。被災した状況においては、それらの知識が希望そのものになるからです。

例えば罹災証明書、被災者生活再建支援金、災害弔慰金、自然災害債務整理ガイドライン。法律や制度によって、支援金やお見舞金を受け取ることができたり、ローンを減免できたりすることを岡本さんは紹介しました。

「災害の規模等によって、利用できる法律や制度も異なりますが、これまでも大きな災害で役に立ってきた支援制度があることをまずは多くの方に事前に知っておいて欲しいのです。たとえば、まずは罹災証明書という住宅被害を証明する書類を申請するステップを踏むということを意識していれば、災害直後から途方に暮れて絶望してしまうということを防げるかもしれません。一定規模の災害で住まいが大きな被害を受けた場合に被災者生活再建支援金を受け取れるという知識があれば、前向きに生きる希望を持つことができるかもしれないと思うのです」

災害時の公的支援は、被災後の生活の助けになる一方で、内閣府の公表情報 では、東日本大震災で全壊被害に遭った住宅の新築費用は、平均して約2,500万円で、それに対して公的支援として受給できたのは、義援金をあわせても約400万円にとどまりました。岡本さんは、被災後の生活再建において、損害保険等が果たす役割は大きいと紹介し、統計をもとに損害保険等の加入が速やかな生活再建につながることを説明しました。

「内閣府のアンケート調査では、令和元年東日本台風による被災者のうち保険や共済に全く加入していない方は、約3割の方が十分な生活再建を進められていないということがわかりました。水害にせよ地震にせよ、様々な自然災害で我々が受けるであろう被害を、公的支援に加えて、保険等で備えていかなければ、住まいを確保して生活再建を達成することはやや難しくなってきます」

水災に備えるためには、自身が加入している火災保険等の補償内容に不足はないか改めて確認することが重要です。また、地震の被害に備えるためには、火災保険に地震保険が付帯されているか確認することもポイントになります。法律や保険等に基づいて「被災したあなたを助けるお金とくらしの話」を考えることは、日常生活に目を向けながら災害対策を自分事にすることにもつながります。

マイ・タイムラインで 一人ひとりの行動計画を

3人目の登壇者は、国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課 水防企画室課長補佐の西川雅規さんです。

私たち一人ひとりの避難行動計画とも言える「マイ・タイムライン」の普及啓発の取り組みを紹介しました。マイ・タイムラインの取り組みが始まったのは、2015年関東・東北豪雨で鬼怒川が氾濫した災害がきっかけだったと言います。

「鬼怒川の堤防が決壊して水が溢れ(あふれ)、茨城県常総市では約4,300名の逃げ遅れが発生しました。このとき常総市では全戸にハザードマップを配布して事前に洪水発生時の危険性を示していましたが、見たことがある人は全体の3割程度でした。同じような逃げ遅れを繰り返さないため、ハザードマップに記載された情報を避難行動に生かしてもらうために始まったのがマイ・タイムライン。2021年3月現在、384の市区町村で作成・普及に取り組まれているところです」

マイ・タイムラインは、ハザードマップを使って自分たちが住んでいる地域の洪水リスクや提供される防災情報を踏まえ、いつ、どんなタイミングで避難すればよいのかを自ら考え、時系列で整理し作成します。

「国土交通省では一人ひとりの環境や行動を整理して、あらかじめタイムラインに落とし込めるよう、また、小中学生でも作成できるように、『逃げキッド』というツールを提供しています」

西川さんによれば、マイ・タイムラインは今、全国各地に普及するよう努めており、デジタル化する試みもあるとのこと。

「災害は忘れた頃にやってくる、ではなく、今は忘れる前にやってくることも多いんです」という西川さんの言葉通り、美郷町を流れる江の川の氾濫を近年立て続けに目の当たりにしてきた参加者のみなさん。この日の午後には、ワークショップ形式で実際にマイ・タイムラインの作成に取り組みました。

最後に、美郷町役場総務課長の木川士朗さんによる閉会挨拶では、日本損害保険協会が1952年度から毎年実施する消防自動車寄贈事業について、今年度は全国各地に寄贈する計15台の軽消防自動車のうち1台が島根県美郷町に寄贈されることを発表し、消防団と連携しながら今後の消火活動に役立てていくこと、そしてこの講習会を地域の防災力向上に生かしていくという決意が語られました。

日本損害保険協会では、ハザードマップの読み方やチェックポイントをまとめたコンテンツとして、副読本「ハザードマップと一緒に読む本」・eラーニング教材「動画で学ぼう!ハザードマップ」・チラシ「ハザードマップで自分のまちの危険 を知ろう!」を無償で公開していますので、ぜひ、ご活用ください。

また、上記のコンテンツのほか、「災害時の損害保険等の手続き・減免措置」や「被災したときに受けられる保険金以外のお金に関連する制度」など、防災に役立つ日本損害保険協会の各種コンテンツをまとめた情報サイト「そんぽ防災Web」を開設していますので、ぜひ、ご活用ください。

そんぽ防災Web
そんぽ防災Web