帰ってきた池上彰の「やさしい経済教室」

【第1回】基礎編 ~全体の流れを考える~

フリージャーナリスト池上 彰

「経済って何だかむずかしそう」という人のために、わかりやすいニュース解説でおなじみの池上彰さんが、経済についてやさしく解説します。2009年から朝日新聞紙面で続いた「やさしい経済教室」の内容を、現在に合わせて修正し、掲載していきます。

私がNHKでニュースキャスターをしていたころ、人の書いた記事を読んで「なんてわかりにくいんだろう」と思いました。自分もそんな原稿を書いていたんじゃないかと、そのとき気づきました。最初の読者であるキャスターが「わかりにくいな」と感じたニュースが、視聴者にちゃんと伝わるはずがありませんよね。

わかりやすいように原稿を直しながらやってはいたのですが、ニュースの現場ではやはり無理がありました。5年間、番組を続けましたが、相当フラストレーションがたまりました。
そんなとき、子ども向けのニュース番組「週刊こどもニュース」を担当することになり、「これで本当にわかりやすいニュース番組ができる」と意気込みました。子どもが相手ですから、本当の意味で「わかりやすさ」が求められるわけです。

しかしいざ始めてみると、これがうまくいかない。私がこうすればわかると思ってやったことでも、子どもには通用しないんです。番組のスタッフでさえ、新聞も読んでなければニュースのこともよく知らない。でも考えてみれば、世間の人たちも、ニュースのことをそんなによくわかっていないんですね。

※写真はイメージです。

そういう人たちに、どのように伝えればいいのか。わかりやすく伝えるためには、どうすればいいか。まずニュースを発信する私たちが、本当にそのニュースを理解していないと、わかりやすく説明なんてできないんです。
中途半端な理解で、専門的なことを一般の人に説明するとどうなるか。専門用語の羅列で、聞いている人はさっぱり意味がわからないでしょうね。
山の中腹からは、とりあえず見えている部分しか説明できません。頂上に立って初めて、「この山はこうだ」と山全体について言えるわけです。

子どもでもわかるように説明するには、まず全体を把握しないといけません。全体像が見えていないと、「こういうことなんですよ」と言い切ることはできないですね。
ニュースを発信する私たちは、受け手の立場になって「これならわかる」と納得してもらえる努力をもっとしないといけません。特に朝日新聞はむずかしい。このコーナーでは、「わかりにくい経済」をとことんかみ砕いて、わかりやすく届けていきます。

次回は「お金」について見ていきましょう。

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【第4回】国債って何ですか?

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【第2回】そもそもお金って何ですか?

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【第1回】基礎編 ~全体の流れを考える~

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