Cashless Talk 4

「お店にとってキャッシュレス導入は効果があるの?」

START!編集部

佐藤 元則
NCB Lab. 代表

吉富 才了
電通 ビジネス共創ユニット
キャッシュレスプロジェクト

キャッシュレスに関するさまざまな疑問に、世界のキャッシュレス事情に詳しいNCB Lab.の佐藤元則(さとう・もとのり)さんと、電通ビジネス共創ユニットでキャッシュレス・プロジェクトを推進する吉富才了(よしとみ・まさのり)さんが対話形式でわかりやすく答える「Cashless Talk」。今回のテーマは「お店にとってキャッシュレス決済は効果があるの?」です。

中小店舗のキャッシュレス導入率は低かった

佐藤:いよいよ消費増税と、その対策として政府のキャッシュレス還元がはじまりました。中小事業者の登録が追いつかないほど、申し込みが殺到しているようですね。

吉富:はい、10月1日からキャッシュレス還元を受け付けられる店舗数は約50万店。待ち状況の店舗数が73万店ほどと、大変なにぎわいです。

佐藤:これまでキャッシュレス決済を受けつけていなかった店舗も多いのでしょうか。

吉富:わたしたちは2018年10月に中小事業者のキャッシュレス調査を実施しました。消費者のキャッシュレス意識調査はいろいろあるのですが、中小事業者(お店)のキャッシュレス意識やキャッシュレス決済受容性を調査したものは意外に少ないと思います。全国の小売業216件、飲食業292件をサンプリングしました。

佐藤:大手はともかく、中小のお店でキャッシュレスを受けつけていないところは多かったのではないでしょうか。

吉富:その通りですね。クレジットカードや電子マネーなどキャッシュレス決済を導入していない店は65%もありました。中小店舗の3分の2はキャッシュレスに対応していなかったわけです。

佐藤:そんなに多いのですか。日本でキャッシュレスが進まない理由は、中小店舗で使えないというところにあったのですね。

吉富:消費者を対象にしたキャッシュレス調査でも、商店街や飲食店で使えないという答えが多くありました。現金しか使えないから現金を使っているという回答も54%におよびます。

佐藤:政府のキャッシュレス還元政策が呼び水となり、未導入店舗の多く参加すれば、日本のキャッシュレスは飛躍的に伸びるかもしれません。

中小店舗に立ちふさがる2つのハードル

佐藤:まだキャッシュレスを導入していない店舗、導入した店舗のそれぞれの理由がわかれば解決策を見つけやすいですね。

吉富:導入していないと答えた理由のトップは「決済手数料が高い」(47%)ということでした。

佐藤:政府は手数料上限を3.25%とし、その3分の1を国が補填するという施策でこのハードルを突破しようとしています。

吉富:つづいて多かったのは「端末やシステムなど初期投資が高い」(38%)です。

佐藤:このハードルを低くするため、政府は金融機関と共同で端末代無料を打ち出していますね。

吉富:ハードルが下がったことで、多くの中小店舗がキャッシュレス還元店舗に名乗りを上げているわけですね。

佐藤:そうですね。消費者の視点から見ても、導入している中小店舗で買えば最大5%の割引特典が付与されるわけですから、そのお店を利用したいと思いますよね。新規客の獲得や顧客の囲い込みにも効果があります。

吉富:なぜ導入したのかという理由も聞きました。1位は「客層が広がるから」(59%)、2位は「売上向上が見込めるから」(41%)でした。

キャッシュレスで売上が伸びた

佐藤:客層が広がるというのは納得できます。現金以外の決済手段を受け付ければ、現金を持っていない人も呼び込めますよね。2位の売上向上が見込めるという回答についてですが、キャッシュレスは実際に売上アップ効果があるのでしょうか。

吉富:キャッシュレス導入店舗のうち、実際に売上が伸びたと回答したのは59%にもなりました。そのうち14%は明確に売上が向上したと回答しています。

佐藤:それはいい結果ですね。加盟店手数料を払っても、売上が伸びれば手数料分のコストを吸収できます。

吉富:従業員規模で見ると、従業員が多くなるほど売上効果が高いという面白い結果が出ています。6~50名規模では85%、51名以上規模ではなんと100%が売上アップにつながったと回答しています。

佐藤:売上の規模でも同じことがいえるのではないでしょうか。

吉富:はい、年商1億円以上では95%の店舗が「売上が伸びた」と回答しています。しかしながら、キャッシュレス決済を導入したお店でも総売上に占めるキャッシュレス決済比率はまだ26%しかありません。もっとキャッシュレスを推奨すれば、売上アップに貢献すると思います。

キャッシュレスは生産性アップとコスト削減に有効

佐藤:労働人口の減少により、中小店舗では働き手を探すのが難しくなっています。キャッシュレスはとても有効だと思うのですが、お店の生産性向上にもつながるでしょうか。

吉富:はい、導入した37%の店舗が「生産性がアップする」と回答しています。具体的には、釣り銭を用意する手間が減る、レジ作業の時間を短縮できる、スタッフの釣銭や支払いミスがなくなる、経理処理がラクになる、というものです。

佐藤:現金処理にかかる時間もかなり長いのではないかと思います。

吉富:その問題も調査してみました。その結果、1日平均で26.34分も現金処理に費やしているという結果になりました。従業員51名以上規模では41.33分もとられています。

佐藤:中小店舗にとってそれは朗報です。キャッシュレスによる生産性向上効果を知っているところはまだ少ないでしょうね。これを理解すれば、もっと積極的にキャッシュレス決済を導入しようという気になります。

吉富:さらにコスト削減効果もありそうです。キャッシュレス決済を導入後にコスト削減効果があったかどうかを聞きました。その結果、導入店舗の32%がコスト削減できた、と回答しています。

佐藤:利益がなかなか増えない状況で、コスト削減できれば利益を増やすことができます。

吉富:従業員や売上が増えるほど、その効果は高くなっています。6~50名規模では47%、51名以上規模の店舗では52%がコスト削減効果ありと回答しています。また、年商1億円以上のお店でも51%が効果ありと回答しています。

佐藤:完全キャッシュレスにすれば、さらに大きな効果が期待できそうですね。日本ではまだ少ないのですが、米国ではAmazon Goやスターバックスの一部の店舗など、完全キャッシュレス店舗ができています。

吉富:今後どれだけキャッシュレス決済を受け付けるお店が増えるのか、楽しみです。消費者の利用も気になるところです。

次回は、消費増税後のキャッシュレスについて、消費者の決済行動とお店の状況がどう変わったのか、調査結果をもとに解説していきます。

Cashless Talk 9

【後編】コロナショックとキャッシュレス

START!編集部
  • ライフ
Cashless Talk 8

【前編】コロナショックとキャッシュレス

START!編集部
  • ライフ
Cashless Talk 7

「世界のキャッシュレス先進国#1:スウェーデン」

START!編集部
  • ライフ
Cashless Talk 6

「ショップで進むキャッシュレス決済導入」

START!編集部
  • ライフ
Cashless Talk 5

「消費増税後の生活者のキャッシュレスはどう変わったか」

START!編集部
  • ライフ
Cashless Talk 4

「お店にとってキャッシュレス導入は効果があるの?」

START!編集部
  • ライフ
Cashless Talk 3

今、急成長しているモバイル決済はどれくらい使われているのか?

START!編集部
  • ライフ
Cashless Talk 2

政府のキャッシュレス政策に対する生活者の支持率は?

START!編集部
  • ライフ
Cashless Talk 1

「あなたはキャッシュレス派、それとも現金派?」

START!編集部
  • ライフ

あなたにおススメの記事

pagetop