Cashless Talk 9

【後編】コロナショックとキャッシュレス

START!編集部

佐藤 元則
NCB Lab. 代表

吉富 才了
電通 ビジネス共創ユニット
キャッシュレスプロジェクト

今、世界では、新型コロナウイルス(COVID-19)感染が急速に広まり、猛威を振るっています。
そして、この感染爆発を懸命に防ぐために、ロックダウンやソーシャルディスタンシングといった行動制御が、各国で推進されています。

そうした中、キャッシュレスにも大きな変革(トランスフォーム)が求められつつあります。
今回は、この危機的状況を打破するために、世界はどのように対処しているのか。
決済という視点からコロナショックを見たとき、乗り越えなければならないチャレンジとともに、そこに大きなチャンスがあるという視点で、前半・後半に分けて、見ていきたいと思います。
今回は、後編ということで「コロナショックへの各国のキャッシュレス対応」について取り上げていきます。

世界で急速に進むClean Cashless

吉富:今回は前回に引き続き、「コロナショックへの各国のキャッシュレス対応」ということで、見ていきたいと思います。

佐藤:はい。前回の最後に、インド政府のコロナショックに対するキャッシュレス対応について触れましたが、世界では急速にClean Cashlessが進められています。

吉富:中でもアフリカではモバイル決済が促進されていると聞いています。特にモバイル決済の普及が進んでいるケニアについて、詳しく教えていただけますか?

佐藤:ケニアは国民の健康を守るためのツールとしてモバイル決済の利用を推進しています。ケニアのモバイル決済といえばM-Pesa(エムペサ)です。新型コロナウィルス拡大防止策として、現金決済を削減する目的で、M-Pesaの利用を推進することになりました。それにともない、M-Pesaを運営するサファリコムは、1,000ケニアシリング(約1,000円)以下の個人間取引手数料を3カ月間無料にします。これは、ケニア中央銀行と首相の要請を受けての措置です。首相は「現金取引によるウィルス拡散リスクを削減するため、モバイルマネーを普及させる方法を模索する」とコメントしています。

吉富:政府が、「ウィルス拡散リスクを削減するために、現金の代替手段としてモバイル決済」を明確に主張しているんですね。ケニアのモバイル決済利用人口は、急増しています。現時点で、M-Pesa利用者は2,690万人。それ以外のモバイル決済利用者を加えると3,200万人。人口5,300万人のうち、約6割にあたるわけですから、モバイル決済の利用は、さらに加速しそうです。

佐藤:ガーナ政府もコロナ対策でデジタル決済を推奨しています。3月20日、ガーナ中央銀行はモバイルマネー事業者に対し、100ガーナセディ(約1,800円)までの取引手数料を無料にするよう要請した。合わせてモバイルウォレットからの現金引き出しを禁じました。また、南アフリカでは、非接触決済を対面のPOS取引で使うよう要請しています。

ソーシャルディスタンシングと非接触

吉富:ウィルス感染対策でキーワードになっているのが、「ソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)」ですよね。人と会話したり、人が集まったりする場所で、お互いが距離をとりあうということ。米国政府がCOVID-19対策としてまとめた計画書(2020年3月13日発行)でも、ソーシャルディスタンシングを推奨しています。

佐藤:はい。その延長で「非接触(コンタクトレス)」というワーディングが、にわかに脚光を集めています。なにかに触れてウィルスが感染するのを恐れているから。非接触は、究極のディスタンシングであるというわけです。

吉富:最近では、人やモノとの接触を回避するために、現金との接触を嫌い、決済カードの手渡しにも抵抗が出てきたという話を見聞きします。「非接触」なサービスが好まれ、その延長で「非接触」決済が急上昇というのも理解できますね。それほど生活者は神経質になっているとも言えます。

佐藤:外出の自粛や禁止で、フードデリバリーを使う人が増えていますよね。そういう人たちの懸念点は、配達員やレストランの調理師が罹患していないか、食べ物を入れたパッケージが汚染されていないかといった不安。そして支払いの場面でも、汚染された現金のやりとりをしなくてはならないということです。

吉富:そういった不安を解消するサービスを展開しているのが、ドイツのベルリンに本拠を構えるデリバリーヒーロー(Delivery Hero)です。同社は、新型コロナウィルス対策のため、現金での支払いを受け付けないこととし、オンラインのキャッシュレス決済に切り替えました。この施策によって、コロナウィルスのパンデミック期間中、顧客と配達員の接触をなくそうとしているわけです。

佐藤:このサービスのネーミングは「非接触配送(No-Contact Delivery)」。デリバリーヒーローのサービスは、顧客、配達員、レストランにとって、安全で便利であることを訴求しようとしています。さらにウィルスの拡散リスクを減らすため、レストランにはパッケージの消毒も要求。配達員には消毒剤やマスク、そのほか安全確保のための資材を提供しています。配達員向けのアプリも用意。コロナウィルスの最新情報を通知し、衛生面での必要事項にアクセスできるようにしているといった徹底ぶりです。

キャッシュレスも非接触

吉富:決済の場でできるだけ他人との接触を控えたいという意識が急速に高まってきています。磁気ストライプカードやICカードは、レジ係にカードを渡して支払うことが多いです。カードを介してウィルスに感染するかもしれない。そんな不安を抱える消費者は多くなりますよね。

佐藤:そうしたニーズに対応した動きがすでに出始めています。英国ではこれまで非接触決済の上限が30ポンドでした。それを2020年4月1日から45ポンドに引き上げるとUK Financeが発表しました。コロナショックによって、消費者の非接触決済ニーズが高まり、それを受けての早期対応となったわけです。

吉富:ただし、45ポンド以上の利用には非接触決済カードでタップ&ゴーとはいかない。しかし、モバイル非接触決済であれば、生体認証されているため上限はない。つまり、モバイル非接触であればあらゆる決済ができるようにした、ということですよね。

佐藤:はい。他国では非接触決済の上限を大幅にアップしています。スペインやポルトガル、キプロスは20ユーロから50ユーロへ150%アップ。最大の上げ幅となったのはベラルーシで20ベラルーシフランから80ベラルーシフランへと400%アップしました。

吉富:これだけたくさんの国が、コロナショックを契機に、非接触決済へのシフトを促進しているわけですね。
まさに、キャッシュレスの非接触化がグローバルに進んでいるということですね。

佐藤:コロナショックのソリューションとして、キャッシュレスの非接触化が奏功することを期待したいですね。

次回からは、また「キャッシュレス先進国動向」ということで、各国のキャッシュレス事情に触れていきたいと思います。

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