Cashless Talk 8

【前編】コロナショックとキャッシュレス

START!編集部

佐藤 元則
NCB Lab. 代表

吉富 才了
電通 ビジネス共創ユニット
キャッシュレスプロジェクト

今、世界では、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が急速に広まり、猛威を振るっています。
そして、この感染爆発を懸命に防ぐために、ロックダウンやソーシャルディスタンシングといった行動制御が、各国で推進されています。

そうした中、キャッシュレスにも変革(トランスフォーム)が求められつつあります。
今回は、この危機的状況を打破するために、世界はどのように対処しているのか。決済という視点からコロナショックを見たとき、乗り越えなければならないチャレンジとともに、そこに大きなチャンスがあるという視点で、前半・後半に分けて、見ていきたいと思います。

決済データに見るコロナショックのインパクト

吉富:今もなお世界中で猛威を振るう新型コロナウィルスですが、この感染爆発を回避し、ウィルスの拡散と侵入を防ぐため、世界各国がとった作戦はロックダウン(封鎖)でした。都市を完全封鎖し、国境も封鎖し、ウィルスの媒介となる人々の移動をストップしたわけですよね。

佐藤:そうです。ロックダウンは、中国の武漢市で最初に実施されて以降、中国の都市に広がり、イタリアやスペイン、英国、米国、インド、フィリピン、マレーシア、タイなど世界中に拡大しています。

吉富:中でもアメリカは、大規模なロックダウンを敢行し、感染爆発を懸命に防ごうとしている真っ只中にあると思いますが、経済面ではどういった状況なのでしょうか。

佐藤:はい。米国のホテルやレストランなどのホスピタリティ業界は、大変な状態になっています。その状況をレポートしているのはシフト4(Shift4 Payments)という決済事業者です。同社の顧客数は20万社。顧客基盤は、飲食、ホテル、ロッジ、ゲーム、小売、Eコマースなど幅広いですが、強いのはホスピタリティ業界。同社の年間トランザクション件数は35億件を超え、決済額は2,000億ドル(22兆円)を超えています。同社は、実データを元に、コロナショックの影響を可視化したサイト「シフト4ケアーズ」を立ち上げました。その数字がこちらになります。

吉富:こちらは、各業界の2月2日週と直近1週間のカード取扱件数を比較したデータですね。
例えば、ホテル業界は、2月2日週が、1億4400万件に対して、4月12日週は200万件で、99%マイナス。凄まじい低下ですね。

佐藤:はい。この数字を見る限り、多くの中小事業者が、倒産の危機に直面している可能性があります。そこで、シフト4ケアーズではデータを可視化するだけでなく、中小事業者の加盟店に対し、2億ドル(220億円)の資金を集めています。消費者がシフト4ケアーズのデータベースで近くの加盟店を選択。そこのギフトカードを買うと、その加盟店にシフト4が5%上乗せした金額を支払うという仕組みです。シフト4はこの制度で最大1,000万ドル(11億円)を寄付する計画です。消費者に対して、シフト4のギフトカードの購入を促進。さらに、それを中小事業者の加盟店で使うと、5%がそのマーチャントに還元されるようにしました。レストランでのオンライン注文を容易にするため、オンライン注文手数料やモバイルPOSのコストなどは引き下げています。全米のホスピタリティ業界を救済しなければという強い想いが込められています。

吉富:キャッシュレスをてこにドネーションを促進し、ビジネスパートナーを救済しようという取組みで、社会課題を解決する素晴らしいソリューションですね。

佐藤:はい。ただし、こうした動きだけでは賄いきれない経済的悪影響を危惧する見方もますます強まっています。決済業界大手は、特に航空会社、クルーズ船、ホテル、レストラン、娯楽イベントを含む小売や旅行、ホスピタリティ業界の加盟店、決済事業者の破綻が見込まれ、クレジット決済リスクが高まるとの見方を示しています。

Dirty Cash vs Clean Cashless

吉富:このように、今回の感染拡大が世界経済に甚大な悪影響を及ぼしている中、各国の感染拡大阻止に向けた対応で、目を向けられているのが「現金」ですよね。

佐藤:そうなんです。ちなみに、吉富さん、世界の通貨には、どれくらいのばい菌が付着しているか、ご存知ですか?

吉富:最近は、個人的にも日常生活はほとんどキャッシュレスなので、なかなか現金を使うことも少なくなりましたが、現金に付着したばい菌の数は想像したこともありません。

佐藤:こちらは、オックスフォード大学が、欧州で流通する15種類の紙幣と硬貨のバクテリア数を調査したものです。その結果、欧州で流通する通貨には、平均26,000個のバクテリアが付着していることがわかりました。これは有害な感染症を拡散するに十分な量だといいます。

吉富:なるほど。日常で使っている現金が、感染拡大の原因になる可能性があるという見方がなんですね。

佐藤:そうなんです。そこで、各国政府の中では、現金の管理や使用について、感染拡大防止を目的として対策を打ち始めたのです。

吉富:私も、「ロシア中央銀行が、現金に付着したコロナウィルス除染のため、紙幣を配布する前に最大14日間保管しており、他の銀行にも実施するよう要請した」というニュースや、「ニュージーランドの交通局メットリンク(Metlink)は、すべてのバスや電車、フェリー、駅での現金決済を禁止した」という記事など、世界各国で現金の取扱いが厳しくなっているのは、見聞きしていましたが、そういった動きが高まっているのですね。

佐藤:例えば、インド政府は2020年3月18日、銀行に対し顧客のデジタル決済利用を促進するように要請しました。現金のかわりに、モバイル決済やデビットカード、クレジットカードの利用を推進すべしと。これは、新型コロナウィルスの感染拡大を阻止するのが目的。金融相は「現金はウィルスが増殖する潜在的な媒体になる可能性がある」とコメントしています。さらに銀行に対し、メディアやSNS、Eメール、ショートメッセージを通じてキャンペーンを実施し、デジタル決済を採用することによる健康上のメリットを強調するよう要請しています。

吉富:なるほど。新型コロナウィルスが徐々に拡大するにしたがい、キャッシュレスの推進も対策として加えている国が増えているんですね。

次回も、継続して「コロナショックへの各国のキャッシュレス対応」というテーマを取り上げていきます。

Cashless Talk 9

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