Cashless Talk 7

「世界のキャッシュレス先進国#1:スウェーデン」

START!編集部

佐藤 元則
NCB Lab. 代表

吉富 才了
電通 ビジネス共創ユニット
キャッシュレスプロジェクト

街に浸透するスウェーデンのキャッシュレス

吉富:前回までは、データを用いて、日本のキャッシュレスの現況についてみてきましたが、今回からは、世界に目を向け、海外の先進事例を紹介していきたいと思います。

佐藤:日本はキャッシュレス後進国といわれていますが、世界にはキャッシュレス先進国と呼ばれる国があります。特に、北欧諸国のキャッシュレスは進んでいます。

吉富:一昨年、出張でスウェーデンを訪れた際、現地のキャッシュレスの状況に驚いたことを記憶しています。

佐藤:スウェーデンでは、どんな場所でのキャッシュレスが印象的でしたか?

吉富:街のいたる所でキャッシュレスが進んでいました。例えば、スーパーのレジでは、キャッシュレス決済をメインにしていましたし、カフェでは、現金お断りの看板もよくみかけました。また、露店でも、クレジットカードやモバイルウォレットなどの決済手段が使えました。

佐藤:私がスウェーデン を訪問した際、ホテルのレストランで現金を払おうとして大変な騒ぎになりました。つり銭がないのです。フロントやショップ、カフェなどを支配人が駆けずりまわったあげく、カードで支払ってくれということになりました。

吉富:教会の献金もカードやモバイル決済がほとんどです。ストックホルムの教会では、わずか15%が現金という話でした。

佐藤:日本でも一部の神社が電子マネーでのおさい銭を受けつけるという事例がありますが、まだ試験段階です。

吉富:極めつけは、公衆トイレの利用は有料で、キャッシュレスだったということです。

佐藤:ここまでくると、キャッシュレスなしでは生活ができませんね。

データで見るスウェーデンのキャッシュレス

吉富:街のいたる所でキャッシュレス決済だったスウェーデンなのですが、データでみるとどういう状況なのでしょうか?

佐藤:スウェーデンの中央銀行であるRiksbankによると、同国の全決済金額に占める現金支払いの割合は、すでに99%に達しており、2030年までに現金決済額はほぼゼロになると予測しています。

吉富:ほとんど現金が使われていない状況にあるのですね。スウェーデンのキャッシュレス促進の背景はなんだったのでしょうか?

佐藤:はい。スウェーデンの中央銀行は、現金取引のコストを試算しました。
現金を製造する中央銀行、それを輸送する現金輸送会社、そして現金を保管し管理する銀行、現金を決済手段として使う小売店と消費者、それぞれのコスト負担割合はチャートにある通りです。
2012年、スウェーデンの現金の社会コストは約1000億円もかかっていたことがわかりました。スウェーデンは、この削減に動いたのです。

吉富:なるほど。その結果、スウェーデンの現金流通額はどうなったのでしょうか?

佐藤:スウェーデンでは現金離れが加速しました。それは、マネーサプライの統計データにあらわれています。Riksbankの報告によると、2019年の紙幣と硬貨の流通額は620億クローナ(6,800億円)に減少しました。2009年には1,060億クローナでした。現金流通額が10年間で約4割も減少しています。

吉富:急速にキャッシュレスが進んでいるスウェーデンですが、どんな変化が見られるのでしょうか?

佐藤:まずキャッシュレスによって犯罪が激減しています。たとえば、2008年には110件あった強盗の発生件数が、2015年には7件まで激減しています。

吉富:面白いデータですね。ちなみに現金を使わなくなったことで、銀行には、どのような変化があったのでしょうか?

佐藤:はい。スウェーデンは、ヨーロッパで最もATMが少ない国となりました。2016年のATM台数は、100万人あたりで日本が1078台ある一方で、スウェーデンは285台と約4分の1の水準です。また、スウェーデンの銀行1600店舗のうち900店舗は、もはや現金を置いていません。

吉富:確かに、ストックホルム中心部の大手銀行の店舗を訪問しましたが、行員は4名程度しかいませんでした。その場にいる顧客に要件を聞いてみると、ほぼ移民顧客の口座開設がメインであり、店舗内でもインターネットでできることは極力端末で自己入力させるという、人手をかけない業務オペレーションでした。

スウェーデンのキャッシュレスの牽引役:Swish

吉富:スウェーデンのキャッシュレスを加速させている決済手段として、ここ数年で存在感をもちはじめたのがモバイル決済のスウィッシュ(Swish)ですよね。

佐藤:はい。Swishの2020年2月単月の個人利用者数は741万人。人口1,000万人の国で、その7割強が実際に利用している状況です。20歳以上に絞ると、8割近い人たちが使っていることになります。まさに驚異的な数字です。

吉富:スウェーデン政府は、キャッシュレス店舗に対して税法上の優遇措置をとるなど、店や交通機関などのあらゆる場所で推進を促したことが大きいようです。モバイルウォレットSwishもキャッシュレスを牽引する1つですね。

佐藤:そうです。日本のキャッシュレスも政府の推進とモバイルウォレットの加速でますます浸透していくことを期待したいですね。

次回は、コロナウィルスの流行と海外のキャッシュレス対応について、取り上げてみたいと思います

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