安全・安心・快適な高速道路を目指し、現在進行中の「阪神高速リニューアルプロジェクト」。でも、どんな工事をしているのか知る機会って少ないですよね。そこで今回は、予備校の名物講師の村瀬哲史先生が、いつもとは逆の立場の受講者となって、分かりやすくひも解いてくださいます!
村瀬哲史先生
予備校講師 予備校地理講師 高校で社会科の教師を務めた後、地理の予備校講師に。モットーは 「考えることが面白くなる地理」。テレビ、ラジオにも多数出演。

田島課長代理
阪神高速道路株式会社 管理本部 大阪保全部 改築・更新事業課

森岡担当
阪神高速道路株式会社 管理本部 神戸管理・保全部 保全事業課
「阪神高速リニューアルプロジェクト」ってなんですの?
■抜本的な更新・修繕工事をする阪神高速の一大プロジェクト
村瀬 最近、「阪神高速リニューアルプロジェクト」という名称はよく見たり聞いたりするんですけど、どんな工事をされていつのかまではわかっていないのが正直なところです。そもそも阪神高速道路といえば僕が生まれる前から活躍しているイメージなんですが、いつ開通したんですか?
森岡 阪神高速は1号環状線の一部が1964年に開通し、2023年で59年が経過しました。

村瀬 1964年といえば前回の東京オリンピックの年ですね。僕は今年で51歳なんですけど、この歳になると体のいろんなところにガタがきてまして…。高速道路も同じような感じになるんですか?
森岡 はい、阪神高速は道路全体の40%以上が開通から40年以上経っていまして、老朽化が進んでいます。また、現在1日の交通量は約70万台で、大型車の割合が一般道路と比べて非常に高く、道路への負担が大きくなっています。
村瀬 老朽化に加えて交通量が増えて道路への負担も大きくなり、いろんな問題が出てきてるんですね。
森岡 定期的にメンテナンスを行っているのですが、抜本的な対策が必要となってきました。
田島 そのため阪神高速では、2015年から「リニューアルプロジェクト」として、普段の工事では行わない大規模な更新・修繕工事に取り組んでいます。
村瀬 なるほど、多くの区間で規模の大きい工事を行わなあかん時期に差し掛かっているわけですね。

工事で道路はどうなんの?
■抜本的な工事による安全性の確保
村瀬 プロジェクトの必要性はわかりました。阪神高速を利用させてもらっているドライバーとしては、どんな工事をされているのか、工事をすることで道路がどのように変わるのかも知りたいところなんですけど。
田島 代表的な例として、14号松原線、喜連瓜破(きれうりわり)付近橋梁大規模更新工事があります。
村瀬 知ってます。確か、喜連瓜破~三宅JCTの区間が3年間終日通行止めになると。喜連瓜破の工事は、高速道路を走っているとたまに見かける車線規制をして行う工事ではできないことをしているんですね。

田島 はい、喜連瓜破の橋梁は橋全体が垂れ下がってきているため、橋梁を一から造り替える必要があるんです。工事を行う高速道路下は、自動車や人の往来が多い長居公園通や幹線道路等が通っており、できる限り一般道路への影響を与えないように撤去作業の大半を空中で行うなど、新しい工法を導入しています。とはいえ、どうしても工事期間中、高速道路上は終日通行止めにする必要がございます。お客さまには大変ご不便をおかけしており申し訳ございません。
村瀬 他にはどんな工事がありますか?
森岡 2020年に12号守口線で行ったコンクリート床版(しょうばん)取替えも代表的な工事の1つになっています。
村瀬 コンクリート床版ってどんなもんなんですか?
森岡 コンクリート床版とは舗装の下にあるコンクリートでできた構造物です。

村瀬 僕らはアスファルトを敷いた上を運転してますけど、その下には、そのアスファルトを支えてるコンクリートがあるわけですね。
森岡 はい、自動車の重さなどを支える道路の床部分になっています。車両の大型化などにより床版への負担が建設当時よりも非常に増えており、ひび割れや砂利化などが発生し、取替える必要が出てきています。工事の際は通行止め期間を短縮するために、工場で床版を作っておいて、現地では組み立て作業のみを行うなどの工夫を行ってます。
村瀬 床版を取替えるって言ったら、すごい大掛かりな工事やと思うんですけど、そういう細かい工夫を積み重ねていくことによって、少しでも短い期間でやっていこうっていう、そういう努力があるわけなんですね。

■長寿命化と共に安全性・快適性もアップ!
森岡 その他にも阪神高速リニューアル工事では、床版と舗装の間に高性能な防水を施すほか、雨天時でも見やすく排水性の高い舗装や、カーブ区間で滑りにくい舗装に打ち換えなども行っています。
村瀬 僕たちドライバーが気づかないところで、いろんな工夫をされてるんですね。阪神高速道路の大部分は街の中心部を通っているので、工事ではいろんなご苦労があるんやないですか?
田島 そうですね。例えば繁華街の近くでおこなっている基礎工事では、地下を掘っていますが、地下街がある他、電気・ガス・水道・通信などあらゆるインフラが通っているため、慎重に計画を立てて工事に臨んでいます。他の工事でも、一般道路への影響を最小限に留め、できる限り近隣住民の皆さまの生活に支障をきたさないように、さまざまな技術を取り入れています。
森岡 具体的には、騒音・振動を抑えるためにアスファルトに熱を加えて柔らかくしてから剥がす工法を採用するほか、舗装を打つ際に生じる刺激臭を和らげるために香料を加えたりしています。
村瀬 えぇ、そんなことまでしてはるんですか?!こんなこと言うたらなんですけど、工事を進める上で香料を入れる必要ってないやないですか。いやぁ、技術の進化にも感心しましたけど、阪神高速さんの細やかな配慮にもびっくりしました。
■動画でさらに詳しく リニューアルでどうなるの?

