日本で働く外国人労働者が増えています。その門戸を大きく開いた新たな在留資格「特定技能」制度が2019年に導入されたことが、大きな背景の一つです。人手不足の解消と、以前からある「技能実習」制度の課題解決を目指して制度が始まり、間もなく4年。外国人労働者を巡る環境は激変しているといいます。そこで、外国人材の紹介に取り組む「マイナビグローバル」の杠(ゆずりは)元樹社長に現況を聞きました。
人手不足を背景に
外国人労働者は過去最多
近年、外国人労働者は増加傾向にあります。2022年10月末現在で182万2725人となり、過去最多を更新しました。その理由は大きく言えば、現場での労働力不足があります。それに伴い、10~20年前の日本社会にはあった外国人労働者受け入れへの抵抗感も、徐々に薄れて来ていますよね。現場ではむしろ人手が足りないので、「労働機会を奪われる」という懸念が少なくなり、受け入れの機運が高まってきた。そうした大きな背景があります。
特に増加に大きく関係するのは、2019年に創設された「特定技能」という在留資格です。この資格は、まさに人手不足の12職種に限定してその解消を目指したものです。22年11月末で、「特定技能」による在留外国人数は12万3000人を超えました。1年前の3倍以上と急速に増えています。制度開始当初は思うように人数が伸びるかどうか不安視する声もありましたが、現在は順調な増加です。
これまで「技能実習」という制度があったことはご存じだと思います。ただ技能実習はあくまで実習であり、「労働力」として捉えてしまうと法的にグレーな状況になりかねない規制もありました。実際に法令違反が頻発するなど様々な問題が指摘されています。企業からしても取り入れることに躊躇するような悪いイメージが付いてしまったことは否めません。
その課題解決を目指して新たに創設されたのが「特定技能」です。これは、労働系の在留資格。「実習」とは違い、労働者としての資格です。つまり戦後初めて、外国人の単純労働も正式に認める形になっています。
企業側からすれば、「実習」など特殊なルールがあり法令順守に不安が残る形ではなく、ようやく「真っ当」に外国人労働者を受け入れることができる、という状況が整っています。
コロナ禍の後、来日外国人は増える?
外国人労働者の受け入れ拡大を目指して始まった制度ですが、開始直後のコロナ禍による思わぬ影響もありました。実は「特定技能」資格を取得する人のうち、特定技能の資格を得てから入国する人は、全体の20%に満たないのです。コロナによる出入国制限の関係で、海外から直接来日してもらう形が難しい面がありました。
ではどこから増えているかと言うと、実は80%以上が以前からの国内在留者なのです。具体的には、技能実習生として既に来日していた人々が、特定技能の資格を得て移行する形で働くことが圧倒的に多い。
今後、コロナ禍が国際的に落ち着いてくることで来日する外国人が増えることが期待されています。一方で、昔のように外国人労働者からしても「何が何でも日本に」という状況でもなくなってきたのも確かです。他にも出稼ぎ先に選択肢があり、必ずしも「選ばれる国」でいつまでもいられるとは限らない、という課題です。大きな流れでは、外国人雇用政策の転換点に差し掛かっている状況です。
「宿泊」業の就業が進まない
職種別に大きな違い
「特定技能」在留者を国籍別で見ると、ベトナムが最多で59.5%を占め、インドネシア、フィリピン、中国、ミャンマーと続きます。そして職種は、現場が人手不足の「特定産業」と呼ばれる12種類です。介護▽ビルクリーニング▽製造分野(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野)▽建設▽造船・舶用工業▽自動車整備▽航空▽宿泊▽農業▽漁業▽飲食料品製造▽外食――となっています。
この職種別でも状況に違いがあります。例えば22年9月末時点で「飲食製品製造業」は3万5891人、産業機械などの「製造分野」は2万2719人在留しているのに対し、「航空」は114人、「宿泊」は182人と極端に少ない。
「宿泊」では、企業側は日本語能力を高く求めたい一方、日本語能力の高い求職者は選びたがらないなど、ミスマッチが起きているようです。大きく期待されている分野がまだ伸びていないのは一つの課題ですね。見込み数に対する充足率は職種によってばらつきがありますが、「飲食料品製造」など高いもので40%台、「宿泊」などは10%に満たず、「農業」「介護」「建設」は20~30%台となっています。
変わる外国人就労の現場
「特定技能」で多い退職理由は
実際に現場の状況も「技能実習」が主流の時代とは変わりました。「実習」では従事できる内容に制限があり、「特定技能」ではそれがなくなりました。あれこれと「してはいけない」という縛りが実習にはありますが、特定技能の外国人は正式に労働者ですから、やれる範囲が広いのです。
例えば農業なら、一つの作業だけではなく、日本人従業員も従事している場合、加工や販売に携わることもできます。宿泊や介護でも単に受付やベッドメイクなど一つのことだけではなく、幅広い業務ができる。日本人の労働者と同じように働くことができるわけですね。これは大きな違いです。
一方でそれに伴い、労働者側にも待遇や給与についての意識を持ち、当然ながら労働環境の改善も考えるようになっているんですね。働き手がそこに不満があれば、実習生と違い転職もできます。これは弊社の独自調査ですが、「特定技能」労働者の退職理由は「給与不満」17%、「仕事内容が合わない」14%、「上司との関係」11%となっています。
こうした点も含め、企業からすると日本人と同じような労働者として、外国人の方を採用できるようになったということですね。
「日本で働きたい」働き手を増やすために
制度の展望はまさに政府で日々議論されていますが、この在留資格を活用して受け入れの拡大を目指していく方向性に変わりはないでしょう。
コロナ禍に続いて円安もありました。正直、足元では給与の手残り額が減るなどの多少の影響があるようです。とはいえ、物価や賃金の水準が大きく違う国の人が母国に帰っても、同じ水準をもらえるわけではありません。そうすると、円安によって大勢への影響があるかというと、現状そこまで大きなものにはならないと考えています。
より具体的な課題としては、家族帯同や永住権の問題があります。この「特定技能」資格には1号と2号がありますが、現在は家族の帯同が許されず、永住権取得にも直接つながらない1号での資格付与が大半です。
しかし外国人労働者は家族を呼びたいし、そうであれば安定して日本で暮らして働きたいという思いを持っています。今後、職種によってそうした権利のある2号への追加が行われれば、より日本で働きたいという求職者が増えるでしょう。
東南アジア自体の発展や韓国・台湾の発展もあり、人材獲得競争は国際的に激しくなっています。上記の家族帯同の問題や、在留期限が上限5年間であることなどが緩和されれば、直接海外から来る「クロスボーダー」(越境)による「特定技能」での求職者を増やすことにつながります。将来的には、技能実習制度との一本化も議論されています。
グループ全体の実績とノウハウ
外国人材紹介にも生かす
私たちマイナビグローバルでは、外国人材紹介と、「登録支援機関」としての支援の二つを大きな柱としています。
外国人材紹介では、人材の確保やマッチング、法令順守など、マイナビグループとして培ってきたノウハウを外国人材分野でも生かすことができています。これまでの紹介実績は約1700人です。またグループには海外八つの国・地域に拠点があることで、現地の情報を得ながら人材確保につなげられることも強みですね。
また支援とは、「特定技能」に関する法律で事業者に義務付けられたもので、外国人のサポートを目的としています。本人が理解できる言語での労働条件の説明や日本での生活ルールのレクチャーなどに加え、住居手配のサポートなども含まれます。しかし、企業が外国人雇用に踏み出す場合、そうした支援ができるノウハウもなくハードルに感じますよね。そこで、制度ではこれを外部委託して解消することができるようになっています。
マイナビグローバルは「登録支援機関」として認定を受け、人材紹介から支援の実施までフォローする形でも行うことができています。こちらは約1000人を支援してきました。
そのほか、外国人材の採用に役立つ情報をウェブサイト上で発信したり、外国人の学生さん向けにも日本語学校でガイダンスを開いたりしています。外国人労働市場が適切に活性化することに貢献できるよう取り組んでいます。
繰り返しになりますが、外国人労働者の増加は順調です。企業からしても「特定技能」の資格によって、正式に労働者として人手不足分野で外国人を雇える環境になりました。多くの企業が関心を持っておられますし、また、「特定技能」などからの雇用を探るのも企業にとって特別ではなく、当たり前になってきています。私たちもグループで培ってきた知見を生かして企業と求職者をつなぎ、この分野に貢献していきたく思っています。
杠元樹 マイナビグローバル代表取締役社長
ゆずりは・もとき 2004年、毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)入社。採用支援コンサルタントとして、日本を代表する大手企業からベンチャー企業まで1000社以上の支援を行う。 2018年よりマイナビグループの東南アジア海外拠点設立に関わると同時に2019年にマイナビグローバルを設立。特定技能外国人をはじめ、外国人材の就労支援を行っている。