毎年3月1日、「採用広報解禁」のニュースにあわせ本格化する大学生の就職活動。しかし急激なデジタル化など社会の変化はめまぐるしく、学生にとっては限られた時間での就活がますます難しい時代になってきました。そこで近年、キャリアに対する意識を早期から持つ必要性が注目されています。
人材大手のマイナビは今年4月、就活時期に入る前の大学生も対象にしたキャリア学習サイト『My CareerStudy(マイ・キャリアスタディ)』を新たにオープンしました。株式会社マイナビ 就職情報事業本部 ナビ統括本部 ナビ統括部統括部長で、My Career事業準備室室長の三枝靖明さんに狙いと想いを聞きました。「採用広報解禁」のタイミングではなく、1~2年生からキャリア意識を
多くの大学生にとって本格的な就職準備をスタートするのは3年生ですよね。まずはインターンシップが始まり、そして3年生の終わりごろ企業の「採用広報解禁日」がある。そこで本格的に臨むことになります。
卒業時期もおのずと決まっている。結局そこまでに勤め先を決め、就活を終え、卒業してそのまま就職という流れです。「限られた期間の中で就職先をほぼ決めている」のが、デファクトスタンダード(事実上の標準)になっていますよね。
そう考えると準備が必要です。準備不足では情報のインプットが薄いまま就活に臨むことになり、自己分析も十分にできない。世の中にどういう会社があるとか、自分はどんな会社で働きたいとか、短期間で考えてうまく就活を終えるのはなかなか難しいでしょう。
学生は3月までに平均5.2社のインターンシップに参加しますが、自身の将来を決めるための判断材料にするには、足りないと感じる人もいるかもしれません。しかし学生がそれ以上に勉強と両立しながら長期のインターンシップをこなすことは難しいです。結局、もっと手前の段階に早期から、具体的には1~2年生のうちからキャリアへの意識を形成する必要があるんです。
未来の時間をどう使うか
早期にキャリアを意識することがなぜ必要なのか。実際に、いざ就活が始まった場面を考えると見えてきます。
もしもキャリアを早い段階から考えていない学生さんがいたとします。そのままだと、就活が始まり、志望動機などを考え始める時点で「振り返り」の姿勢になるのではないでしょうか。恐らくは自分の過去を振り返って、現時点でやりたいことと「紐付け」の作業を後からする。どうしても辻褄が合わなかったり、ストーリーが弱くて話に説得力が足りなかったりと、悩ましい状態になりかねない。
一方で早い段階からキャリアに意識が向いている場合はどうでしょうか。普段から「未来の時間をどう使うか」と考えるようになる。「将来こんなキャリアを歩みたいから、次はこうしてみよう」ですとか、学業でも課外活動でも、アルバイトひとつでも目的意識を持って行動できる。いざ就活のタイミングになった時、発せられる言葉の重みも変わってくるし、明確になるでしょう。過去・現在・未来という3点が自分の中でひとつにつながるんです。
また学生さんにとっては、社会の劇的な変化に対応が求められる時代でもありますね。労働市場の全体を見渡すと、コロナ禍の影響と、そこで浮き彫りになった分野や職種によっての労働力不足という問題もあります。
さらにIT化・デジタル化の背景も加わり、新卒採用の世界においても、知識や技術を求める「ジョブ型雇用」のニーズが出てきています。就活のマッチングにはスキル(技術)、ビジョン(理念)、カルチャー(社風、文化)の三つのフィットが必要だと考えているのですが、例えばこの「ジョブ型雇用」の場合には、スキルが備わっていないと(就活という)舞台にも立てない、門戸も叩けないことになってしまう。
日常の生活では向き合いにくいキャリア意識
一方で最近は、時代に合わせて変化できる土台を作る「プロティアン・キャリア」という考えや、「持ち運び可能」な基礎的な能力「ポータブルスキル」という概念も注目されています。これらは一例ですが、時代の新たな流れがあれば企業の求める人物像も変わってきます。なおさら、早くからキャリアを意識し続け、準備を整えることが必要なのです。
ところがそうは言っても現状では、学生さんがキャリアのことに早い段階で取り組みにくい、向き合いにくい状況もあると思うんです。日常の生活で具体的に意識できる機会は決して多くないからです。
もちろん、大学に行くということは誰しも、「卒業したらどこかで働くだろう」「仕事に就くだろう」と漠然としたイメージは持っていると思います。ただそれ以上に具体的に考えるのは若い学生にとってヘヴィーだ(重たい)と思うんですよ。だって、この話って入学から4年後のことですよね。あるいは学部の期間や大学院進学によっては6年後、8年後。
そんな先のことのために、今、行動しますか? そう問われると一見、なかなかコストと報酬が見合わない。もっと短い時間軸で考えるでしょうね。例えば「明日提出しなくてはいけないレポート」もあるし、一日時間があれば「アルバイトして稼ぎたい」と思うこともあるのは、理解できます。
だから、みんなが漠然とキャリアや就活のことを考えてはいるんですけど、そこに「今、労力を割くべきだ」という判断にまで至らない。結局は早期に動けない……というのが現状なのかなと思っています。
「スキマ時間」に「タイパ」よく スマホで学べるように
どうすれば具体的な行動に移せるのか、お手伝いをするために新しいサービスに取り組みたいと考えまして、私たちマイナビがこの春にオープンしたのが『My CareerStudy』(マイ・キャリアスタディ)です。大学生向けの、無料オンラインキャリア学習サイトです。就活に臨む前の1~2年時の学生さんをはじめ、すべての大学生を対象にしています。
登録していただくと「ビジネススキル」「キャリアデザイン」「就活準備」など5カテゴリ約50講座以上が動画で受講可能です。社会人の心構えからエクセルなどの実技まで含めて視聴してもらい、他にも、社会人基礎力やパーソナリティーの特徴がわかる適性診断も受けることができます。
講座は1本約5分の動画。それを数セットが基本になります。
5分というのは私たち世代からすると短いですが、意識しているのは「タイパ世代」(タイムパフォーマンス、時間効率を重視する世代)の若者にも継続して利用してもらえること。スマートフォンにも対応して、区切りよくテンポよく見られるようにしています。
仰々しいものではなく、使ってもらうのはほんの「スキマ時間」でいいのかなと。食事や移動の合間とか。あるいは寝る前に動画サイトを視聴する時間のうち、5分間だけでもこちらに使ってもらえると嬉しいです。1日5分でも週5分でも積み上げると、1年間もあればすごく「力」が変わってくるはずです。
学生さんって、仕事について普段から入手できる情報が実はすごく限られている。例えば親御さんの姿を見て、「お父さんがサラリーマンだから」「家族が医者だから」など、身近なモデルだけに目が行ってしまいがちです。若い時からもう少したくさんキャリアに関する情報を取り入れて、相対的に比較しながら、自分は何をしたいのかと考えていただきたいですね。
まだ開始したばかりですが、今後は個人にカスタマイズする機能や、職種別の具体的な講座など拡充を目指しています。さまざまな企業の「中の人」、担当者さんたちにご登場いただく機会も作るつもりです。
就活はもっと個性的でいいはず
これまで述べてきたように私たちとしては、まずは学生さんに早期のキャリアへの意識とともに、時代が変化しても対応できる社会人としての基礎力を身に着けていただきたい。それがサービスを始めた想いです。
それに加え、マイナビとして、これからも社会に新しい価値を提供して貢献しなければという思いがありました。ですので、学生にとっても企業にとっても難しかった「手付かず」のこの領域に、今チャレンジすべきだと踏み出したところです。
そもそも就活って、もっと「個性的」でいいはずだと私は考えているんです。
でも短期間で準備して臨むと、どうしても「無個性」になってしまう。企業理念をそのまま「オウム返し」する志望動機になったり、自分らしさを打ち出した自己PRができなかったりします。しかし、ダイバーシティの実現が求められる社会において、そんな状況を企業も望んでいるわけではないと考えています。
マイナビとしても「企業の求人を載せますよ」「応募できますよ」に加えて、求職者がマイナビを通じて就職した先で、実際に活躍できるか、その実感を持てるかを基準にしなければと。「就活」のあり方を変えるために取り組む必要があると考えています。
そのためにも学生さんには早い段階から、スキルはもちろん自分のパーソナリティや伸ばしたい力に気付いていただきたいですし、『My CareerStudy』が一つのきっかけを与える役割を果たせればと思うんです。1日5分の利用でも、日々の意識が変わってくるようなサービスにしたいと思います。
三枝靖明(さえぐさ・やすあき)
2003年にデザイン会社に入社。SIer系企業で情報アーキテクトの経験を積み、2006年にマイナビへ入社。入社以来、就職情報サイト『マイナビ』のシステム開発や学生サービスの企画・運用に従事。平行して2021年にクロスファンクショナル組織としてMy Career事業準備室を立ち上げ、2023年に『My CareerStudy』と『My CareerID』をリリース。