東京都は、東京に暮らし働く全ての人が輝き、活躍できる社会の実現に向けて、ソーシャルファーム(※)の裾野を広げていく「TOKYO SOCIAL FIRM ACTION(東京ソーシャルファームアクション)」に取り組んでいます。

※「ソーシャルファーム」とは、自律的な経営を行いながら、様々な理由により就労に困難を抱える方々が必要なサポートを受け、他の従業員と共に働く社会的企業です。

今回は、パラアスリートとして活躍する谷真海さんが、誰もがいきいきとはたらき、活躍する職場づくりを行うLIXIL Advanced Showroomの「LIXILショールーム東京」を訪問。本社でDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を担当し、取り組みの当初から携わる八重樫祐子さんに話を伺いました。

八重樫祐子さん(顔P)

八重樫 祐子さん
株式会社LIXIL Advanced Showroom(以下、LAS) エンプロイーオペレーション部所属(障害者職業生活相談員・企業在籍型ジョブコーチ)

谷真海さん(顔P)

リポーター・パラアスリート 谷 真海さん
走り幅跳びで3大会連続パラリンピック出場後、パラトライアスロンへ転向し、東京2020パラリンピック出場。開会式で旗手も務めた。

誰もがいきいきとはたらける職場づくり

全国81カ所にあるLIXILショールームの運営・管理を行うLAS。1600人ほどの社員のうち、障害のある社員は35人おり、札幌から福岡までのショールームや本社で一人ひとりの特性に合った業務を担当しています。障害のある方が、他の社員と共にはたらく職場づくりについて、八重樫さんに伺いました。

きっかけは2016年2月、社内でダイバーシティ&インクルージョンを推進するため、「ダイバーシティ推進室」が立ち上がったことだったと言います。

「当社は女性社員が多いので、出産や転勤などいろいろなライフステージの変化に応じて、はたらき方をアレンジする中、メンバー同士が助け合い補い合いながら、会社を運営することが必要になるということで動き始めたのがきっかけです。そうした中で、一緒にはたらく仲間として、障害のある方々も、時短ではたらく方々も、みんなで協力し合いながらはたらく、そんな社風をつくっていきたい。その取り組みの一つとして、障害がある方々にも活躍していただける職場をつくっていきたいという想いがあります」

「加えて、ショールームには、ご自宅の新築、子育て真っ最中でのリフォーム、高齢になられてのリフォームなど、様々な目的のお客さまがいらっしゃいます。私たちが普段から多様なメンバーと一緒にはたらくことで、様々なお客さまの潜在的なニーズにもお応えできる“提案力”が培われます」 

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LASの八重樫 祐子さん(右)

谷さんも「提案する側のチームが多様な皆さんの集まりだと、本当にお客さま目線でいろんなアイデアが生まれますよね」とうなずきました。

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リポーターの谷真海さん(左)

LASの障害者雇用の取り組み

LASでは、障害者雇用のメンバーのことを「YOurS(ユアーズ)メンバー」と呼んでいます。それは、受け入れ拠点の社員から「『障害者』という言い方をしたくない」という声が上がったことがきっかけだったと八重樫さんは振り返ります。

「LASでは『お客さまの笑顔のために』というミッションを掲げています。そのミッションに沿ってダイバーシティ推進には“Your Smile, Our Smile”というスローガンがあります。その頭文字を取って、“YOurS”と呼ぶようになりました。社員の皆が笑顔でいないとお客さまを笑顔にすることはできない、というところから掲げられたスローガンであり、『YOurS』には“Smile”(笑顔に)という気持ちが含まれているんです」

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こうした取り組みも最初からうまく行ったわけではない、と八重樫さんは打ち明けます。そこには、これまでに障害により就労に何らかの困難を感じている方々と一緒にはたらいた経験がない社員が多かった、ということもありました。新たに受け入れる職場の社員も、YOurSメンバーも、不安にさせてしまったこともあったと言います。それでも、「何かできることはないか」と少しずつ歩み寄ってきてくれる仲間の協力と存在が助けになり、一緒になってつくり上げてきたのでした。

そうした中、ある社内会議で、YOurSメンバーがはたらくショールームのマネジャーが「YOurSがいてくれるから助かっている」と言ってくれたことがきっかけとなり、口コミのように他からも「うちにも来てほしい」「採用してくれますか」といった声が出るようになったのだそうです。

一人ひとりの特性を活かして共にはたらく

YOurSメンバーと、その他の社員が分け隔てなく共にはたらいているLAS。そのときにその場所で必要な、誰かがやらなければならない仕事を、それぞれのメンバーが特性を活かして取り組み、補い合っているのだそうです。

「LIXILショールーム東京」ではたらくYOurSメンバーの古谷さんは現在、ショールームの館内マップを折ってシールを貼る仕事や、ショールーム内の展示品の清掃を担当しています。古谷さんは「仕事は自分で見つけてくることが好きです。考えて取り組んでいます。『ありがとう』という感謝の気持ちを職場の人に言ってもらうとうれしいです」と話してくれました。 

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YOurSメンバーの古谷さん

また、田中さん(仮名)は、データ入力や備品発注のほか、ショールーム内のカタログ補充や閉館後の清掃などを担当。「(職場で)みんな自然に笑っているところがいいなと思います。社内SNSに掃除のコツなどの記事を書いたときには、普段は話す機会のない他の拠点の社員さんからも温かい言葉をもらえてうれしかったです」と話してくれました。

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YOurSメンバーの田中さん(仮名)

同じショールームで、2人のYOurSメンバーのサポート役を務める木下さんは、「2人は真面目に一生懸命に業務に取り組んでくれて、とても助かっています」と話します。木下さんだけでなく、同ショールームに100人近くいる社員が、2人の仕事の丁寧さや速さを実感し、信頼を寄せているそうです。

「ショールームでは、お客さまにサンプルやパンフレットをお示ししながらご提案をしており、商談の後は資料がたくさん出ている状態です。商談後、案内担当者が掃除や片付けを行うのですが、お客さまをお見送りしている間にYOurSメンバーがサッと入って片付けてくれます。そうすると、案内担当者はすぐに次の商談に入れるので、とても助かっています」

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右からYOurSメンバーの古谷さん、田中さん、サポーターの木下さん

採用の段階から、マッチングを重視

「YOurSメンバーの採用にあたっては、求職者と会社のマッチングを重視し、長くはたらき続けてもらうことを念頭に置いています。まず、障害特性、配慮についてではなく、その人がどういう人なのか、どういう生活環境なのか、これまでの人生など、本人を理解するために話をするよう心がけています。求職者も会社も、お互いを見極める時間と捉えています」と八重樫さん。

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LASでは、就労移行支援機関などから紹介のあった方に会社説明会に参加してもらい、5日間(新卒は3日間)ほど業務実習を行います。職場の雰囲気やはたらく社員の様子、通勤環境や休憩場所などを見て、求職者と会社が双方の「相思相愛」を確認して採用を決定することになると言います。

「プログラマーの採用に悩んでいたとき、プログラミングを学んでいる大学生にアプローチをしてはどうかと思い、新卒採用を始めました。コミュニケーションは苦手だけれども意欲的な学生に出会えました。今では理解ある仲間と共に力を発揮してくれています」

共にはたらき、支え合う職場で行われている「配慮」とは

様々な人が共にはたらく職場では、障害者雇用であるかそうでないかにかかわらず、一緒にはたらく上で共通する大切なものがあると八重樫さんは語ります。

「よく『配慮』と言いますが、残念ながらできる配慮はどうしても限られてしまいます。本人、共にはたらく仲間と一緒にできる配慮と工夫を話し合う。そこに本人の努力が掛け合わさることでうまくいっているのかなと感じています。私にとっては、配慮って、コミュニケーションなのだと思います。

YOurSメンバーは、採用時点ではご本人の特性から難しいとされていたことも、仕事への挑戦を通じて一人ひとり成長し、着実にできることが増えていっています」

実は特別なことは何もしていない、と言う八重樫さん。

「コミュニケーションを通じて相手を知るということは、障害者雇用に限る話ではないと思います。相手を知ることで、こういう風にコミュニケーションを取れば受け取りやすいんだと分かり、話す機会が増えれば増えるほど信頼関係が築け、厳しいことも言わなければいけないときも、真摯に受け止めてもらえます」

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さらに、YOurSメンバーへの配慮だけではなく、YOurSメンバーのサポート役の社員を独りきりにしないよう留意していると八重樫さんは話します。

「YOurSメンバーを支えるサポート役の社員も一人ではやりきれないこともあると思うので、何かあったときに『八重樫さんに相談しようかな』と頭に浮かぶ、お守りみたいな存在になれたらいいなと思っています」

 「八重樫さんはYOurSメンバーにとってのお姉さんのような存在ですね!」と言う谷さんに「もう、お母さんですね (笑)」と返す八重樫さん。

今回、八重樫さんの話を聞いてきた谷さんも、「このような企業が増えたら社会も変わっていくんじゃないかなとうれしい気持ちになりました」と締めくくります。

最後に、八重樫さんがソーシャルファームへの想いを語ってくれました。

「もっとこのソーシャルファームという素晴らしい取り組みも、みんなに知っていただきたい。そのために少しでもお役に立てることがあれば、こんなにうれしいことはないと思っています」

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東京ソーシャルファームのロゴ

東京ソーシャルファームアクション
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