100年を超えるものづくりの伝統と時代をとらえた発想で、ビールの世界に新しい風が吹いている――。キリンビールがスタンダードビールとして17年ぶりに発売した新商品※1「キリンビール 晴れ風」が絶好調だ。4月2日の発売から約1カ月で200万ケース※2を突破。発売から同期間での販売数量としては、同社が過去15年間に新発売したビール類の新商品でナンバー1の売れ行きを見せている。 

味わいはもちろん、現代らしさを追求したビール新時代の幕開けを告げる新ブランド「キリンビール 晴れ風」は、どのように生まれたのか。開発が行われた横浜工場(研究所)で、キリンビールのマスターブリュワーである田山智広さんと、開発を担当した若き醸造家の東橋鴻介さんに聞いた。

※1 プレミアム・クラフト・販売先限定品・既存ブランド派生品を除く
※2 5月10日(金)時点 1ケースは大瓶(633ml)換算20本

目指したのは、「これからの時代のスタンダードビール」

キリンビールの東橋さんと田山さん
キリンビールのマスターブリュワーである田山智広さん(右)と、開発を担当した醸造家の東橋鴻介さん(左)

「キリンビール 晴れ風」が誕生した背景には、「これからの時代のスタンダードビールをつくりたい」という2人の醸造家の情熱があった。

キリンビールの企画開発の先頭に立つ田山智広さんが語る。「ビールは人生をわくわく、そして豊かにするポテンシャルを持っています。ビールがある楽しい時間や、ビールってこんなにいいものなんだということを、あらためて多くの人に知ってほしい。その思いから開発に取り組みました」

「キリンビール 晴れ風」の開発チームが掲げた味わいのゴールは 、「ビールとしての味の厚み・うまさ」と「飲みやすさ」を両立させた、極めてバランスの良い味わいの実現。一見、相反する要素の両立に見えるが、当時入社5年目で開発を率いた東橋さんが胸を張る。「苦みや酸味が突出することなく、飲み飽きない味わい。とはいえ、飲みごたえはしっかりとある。そのバランスが『キリンビール 晴れ風』の持ち味であり魅力です」

原料は、麦芽100パーセント。副原料を用いず、麦芽とホップ、そして水だ。麦のうまみが感じられながら、雑味のないおいしさを実現した。さらにビールの魂とも呼ばれるホップにもこだわり、日本産の希少ホップ「IBUKI」を使用。IBUKIの特長である柑橘系のさわやかな香りが奥ゆかしく広がる。

改訂版差し替え画像/麦とホップ
「キリンビール 晴れ風」の原料は麦芽100パーセントで副原料不使用。さらに、希少な国産ホップ「IBUKI」を使用。キリンではIBUKIをはじめ、日本産ホップの栽培の支援に関わってきた

製法においても、麦を煮出しすぎず、素直にうまみを引き出す「デコクション法」を採用。希少ホップIBUKIも香りを立てすぎず、素材のよさをありのままに出せるよう添加のタイミングもこだわった。飲みにくさにつながる過度な酸味も、仕込みや発酵の工程で工夫を凝らし、独自の香味とまろやかな味わいを実現した。

ドイツ風ラガービールを「キリンビール」の商品名で発売したのは1888年のこと。以来、消費者のライフスタイルや時代の変化に合わせ、新たな商品を生み出してきた。

田山さんは語る。「かつてはお酒の選択肢が少ない中で、『とりあえずビール』というイメージも強かった。しかし、今はアルコール飲料のバリエーションが広がり、料理とお酒の相性を探るペアリングが楽しまれるようになり、ビールも食中酒としての役割が高まっています。 従来のビールの特長である『ガツンとした刺激』や『たっぷりの満足感』ではなく、食事の邪魔をせず、むしろ引き立てるようなシンプルで繊細な味わいが、時代をとらえるスタンダードビールになると考えました」

キリンビールの田山さん
キリンビールでマスターブリュワーを務める田山智広さん。1987年に入社、ドイツ留学などを経て、2001年よりマーケティング部商品開発研究所でビール類の中味開発に携わる。2013年に商品開発研究所所長、2016年にマスターブリュワーに就任した

消費者の嗜好が多様化し、お酒の選択肢が増えた時代になろうとも、ビールならではのおいしさは格別だ。昨今のクラフトビールブームも後押しし、改めてビールのポテンシャルに注目が集まっている。

「キリンビール 晴れ風」は、まさにそんな時代に吹く新しい風。「これからの時代のスタンダードビールを届けたい」というキリンビールの思いが結実した自信作だ。「キリンラガー、一番搾りに次ぐ、キリンを代表する新たな定番ビールを目指しています」と田山さんは力を込める。

キリンの伝統と新しい発想が生んだ自信の一杯

キリンビールの東橋さんと田山さん
「キリンビール 晴れ風」の出来栄えを語り合う田山さんと東橋さん。ビールのうまみを残しつつ苦みを減らし、酸味を抑制する製法により、なめらかな口当たりの実現に成功した

「キリンビール 晴れ風」の開発担当には、入社5年目若き醸造家、東橋鴻介さんに白羽の矢が立った。「私たち若い世代にもどんどん挑戦させてくれる風土がキリンにはあります。キリンビールとして17年ぶりの新たなスタンダードビールブランド※3を作るというミッションの大きさにプレッシャーを感じることもありましたが、それを上回るやりがいを感じながら仕事に向き合うことができました」と笑顔を見せる。

※3 プレミアム・クラフト・販売先限定品・既存ブランド派生品を除く

そんな若手醸造家に対し、田山さんは「どの世界でもそうですが、若い人たちには僕らにはない大胆な発想、そして突破力がある。期待しかなかったですね」と太鼓判を押す。

「キリンビール 晴れ風」は同社の100年を超える歴史と技術力、さらには時代をとらえる開発力の結晶と言える。「キリンにはキリンラガー、一番搾りはもちろん、さまざまな商品を開発してきた多くの知見があります。改めて先人たちの技術力、開発力に驚かされました」と東橋さん。

◎0226A4097
「晴れ風」の開発を担当した東橋鴻介さん。2018年に入社し、岡山工場でビール類の中味づくり(醸造)を担当後、2020年に現在の商品開発の部署へ異動。豊潤<496>やのどごし<生>、グリーンズフリーも担当

一方、知見が多いというキリンビールの強みが、東橋さんたち開発者の前に壁として立ちはだかることもあった。

「キリンビール 晴れ風」の初期段階の試作品について、田山さんはこう断ずる。「昔の、使い古されたレシピをベースに作りすぎていて、これまでの商品をなぞったような仕上がりでした。正直、このままでは全くダメだと思った」

多くの商品を世に出してきた熟練のマスターブリュワーの厳しい指摘。東橋さんは振り返る。「田山をはじめとする社内はもちろん、試作品を飲んでいただいたお客さまの反応からも、新しさや驚きを感じてもらえていないことが伝わってきました。そこをどう出していけばいいのか、かなり苦戦しました」。そして心を決めたという。

「基本に立ち返り、改めてキリンビールがもつ技術を見渡して、今までにない視点や幅で考え直してみよう、という思いで開発に臨みました」

ホップを添加するタイミングや組み合わせをはじめ、あらゆる原料や工程を見直し、試していった。「食中酒であることを考えてシンプルな味わいを目指しましたが、シンプルがゆえに何かが少しでも突出すると目立ってしまいバランスが崩れる。その難しさがありました」と東橋さん。幾度もの試行錯誤の末、手応えを感じる試作品が完成した。

キリンの開発現場でタンクをのぞく醸造家
足し算をするような派手なビールではなく、誰もがおいしいと感じる飲みやすいビールを目指して試行錯誤。ビールとしてのうまさ、そして飲みやすさという一見相反するように思える二つの要素の両立を実現させた

田山さんは「これならいける。そう確信しました」と振り返り、こう続ける。

「ドイツ語に『Weiter-trinken(バイター・トリンケン)』という言葉があります。『一度飲むと、もう一度飲みたくなる』という意味です。キリンビールが追求してきたビール醸造の哲学で、そこに到達するカギはバランスです。ドイツの本格ビールに範をとったラガー、澄んだ雑味のない味わいの一番搾りという二枚看板も、先人から脈々と受け継いできたバランスの美学から生まれました。『晴れ風』も、まさにそうしたキリンビールイズムを継承しています」

東橋さんも自信を見せる。「キリンビールが培ってきた技術力を活かし、高度にバランスを取った味わいであるという点で、『晴れ風』はキリンらしいビールに仕上がりました。ラガー、一番搾りに続く、まさに新時代の新しい王道のビールと言えると思います」

これからの時代にビールができること
「キリンビール 晴れ風」の新たな取り組み

日本の風物詩「お花見」

「キリンビール 晴れ風」は味わい以外の観点でも時代を見据えた取り組みを展開している。

それは、「晴れ風ACTION」と題し、日本の風物詩の保全や継承を支援する取り組みだ。ビールは100 年以上にわたり、多くのお客様にお花見や花火など「日本の風物詩」とともに楽しまれてきた。しかし、私たちが慣れ親しんだ風物詩の中には、自治体の資金難や少子高齢化、気候変動などにより保全や継承ができず、消失の危機に立つ地域もある。

ビールを飲むよろこびを広げてくれた「日本の風物詩」を守り、そこに集まる人々の笑顔を未来につなげていく。そんな想いから売上の一部を全国の自治体へ寄付することで、少しずつではあるが、危機にある地域の桜や花火などへの恩返しを始めていく。

「お酒を楽しく飲めることのありがたみをかみしめ、ビールの造り手として、少しずつでもなにか社会にお返しをしていきたい。そんな気持ちに応えることは『キリンビール 晴れ風』のブランドイメージにも非常に合っていると感じます」と田山さん。

「晴れ風ACTION」の第一弾では、桜の保全活動への寄付を実施。早々に目標額の4千万円に到達し、桜の植樹や古樹の保護などの支援として、各地の自治体に寄付される。第二弾は花火大会の支援活動として7月にスタート予定だ。

キリンビール「晴れ風」

ビール新時代の幕開けに吹く「キリンビール 晴れ風」。「これまでにないまろやかできれいな味わいを、肩ひじを張らずに生活の中に取り入れてもらえたら。花火やキャンプなどアウトドアのシーンにもピッタリだと思います」と東橋さんは期待を込める。

若手の言葉に続き、田山さんはこんなメッセージを送ってくれた。

「晴れ風と聞くと穏やかな風を思い浮かべるかもしれませんが、風には、そよ風もあれば吹きすさぶ風もあります。ビールを飲みながらさまざまな風を感じる。『晴れ風』はそんなふうに感性を刺激してくれるはず。Don’t think,feel! 考えるより感じるビールなのです。『キリンビール 晴れ風』を飲むことで感性を豊かに広げていただけたら――。私たちのそんな思いとともに届くといいなと期待しています」

「キリンビール 晴れ風」の詳しい情報はこちら!

注釈画像