健康的な食生活のキーワードとして注目されている「ナトカリ比」とは、ナトリウム(塩分)とカリウムのバランスのこと。生活習慣病を防ぐ第一歩である「高血圧の予防」のためには、体内からナトリウム(塩分)の排出を促すカリウムを多く含む野菜や果物を多く摂取することが大切です。 野菜の力、ナトカリ比の大切さなどについて、杉浦太陽さんと辻希美さん、栄養学を専門とする武見ゆかりさんとともに楽しく学ぶフォーラムが開催されました。(7月15日 品川 ザ・グランドホール)

杉浦家の野菜のとりかた 野菜はおいしく楽しくとることが大切

杉浦太陽さん
野菜の魅力を語る杉浦太陽さん

――杉浦さんはベジタブル&フルーツアドバイザーの有資格者であり、家庭菜園のテレビ番組にも出演されていますね。野菜の魅力はどんなところですか。

杉浦 20代から旅番組をやらせてもらって、農家さんの家に泊まって農業を体験したこともありますが、やはりその土地や気候に合わせて作られた野菜には、その地域の食文化が見られます。僕も家族と野菜づくりを分かち合いたいと思って、家庭菜園を始めました。

 野菜がどうやって育っていくのか知らないことも多いので、家庭菜園は勉強になりますね。

杉浦 野菜の栄養は水溶性のものが多いから、うちはスープやカレーにもたくさん入れています。

武見 日本人の1日あたりの野菜摂取目標値は350グラムですが、平均摂取量は約280グラムとなっており、足りていないのが現状です※1。お二人は野菜を作るところから始めていると聞いて、すばらしいなと思いました。

――お子さんの野菜嫌いで悩んだことはありますか。

 生野菜は苦手のようで、特にピーマンが嫌いだったので、細かく刻む以外は食卓に出したことがありませんでした。けれど子どもたちも成長しているんでしょうね。私が食べたいと思って、ピーマンやタマネギなどがゴロゴロ入った酢豚を作ったら、子どもたちが「大好き」って野菜を食べてくれて。

フォーラムで話す辻希美さん
家庭での野菜のとりかたについて話す辻希美さん

杉浦 長男が「おいしい」といったら、次男も食べてくれてね。

武見 子どもの野菜ぎらいは、周りの大人がどのように食べているかが影響します。お二人がきっととてもおいしそうに食べていたんだと思います。食事は薬ではないので、野菜はおいしく楽しく食べられることが大切ですね。そしてその経験が積み重なると、大人になっても食べるようになります。

 あとは子どもと一緒に料理をすると、食材に興味が湧くみたいで、それも大事だと思います。

武見 野菜には様々な栄養素があります。中でも体内では作れないビタミンやミネラル、食物繊維は野菜などからとる必要があります。野菜に多く含まれるビタミンB群はエネルギーを作る働きを助けますし、ビタミンAやCは体の酸化を抑制して、ダメージを受けた細胞の修復に有効です。ミネラルでは、カリウムは高血圧予防、カルシウムは骨の健康、鉄は貧血予防などに関係します。食物繊維は糖尿病や心臓疾患、肥満などの予防に働くことがわかっています。野菜をとることは、今日の元気ばかりでなく、一生を通して元気につながりますから、人生90歳まで自分の体を健やかに保つためには、子どもの頃から野菜をとる習慣を付けることが大切です。

ベジチェックを体験した辻希美さんと杉浦太陽さん
手のひらをセンサーにあてると約30秒で推定野菜摂取量を測定できる機器「ベジチェック®」。辻さんがベジチェック®を試すと、一日の摂取目標量350グラムに相当する「7.5」という良い数値が出た

――辻さんは美容ブランドのディレクターをされていますね。美容について普段からどのようなことを気にされていますか。

 保湿など外からのケアも大切ですが、体の中からもケアが必要だと感じます。水をしっかり飲んだり、忙しいときは野菜や果物をスムージーにしたりしてとっています。

――お二人は「ナトカリ比」は聞いたことありますか。

杉浦 ナトリウムとカリウムの摂取バランスのことですよね。

武見 はい。ナトリウムは食塩、カリウムもミネラルの一種で、野菜、くだもの、乳製品などに多く含まれています。ナトリウムは水を引きつけるので、たくさんとると血管内にも水分が増えて血管を圧迫し、高血圧につながります。そのナトリウムの排出を促す働きがあるのが、カリウムです。日本人は食塩の量を抑えることが重要ですが、同時にカリウムをたくさんとって、血圧の上昇を抑えようと「ナトカリ比」に注目が集まっています。

<武見ゆかりさん基調講演>「ナトカリ比」を下げるポイントとは

講演する武見ゆかりさん
基調講演で日本人の野菜摂取の状況やナトカリ比について解説する女子栄養大学教授の武見ゆかりさん

日本人は1日に摂取する野菜の量が足りていません。野菜摂取量には地域差もあり、男女ともにトップの長野と、最下位の愛知(男性)、大阪(女性)とでは約100グラム以上の差があります※2

野菜はサラダ、汁物など単独料理でとっていることが多く、摂取量の多い人ほど単独料理の皿数が多いこともわかっています。そこで不足分を補うために、私は野菜料理を1皿加えることをすすめています。日本を含む東アジアでは食塩の過剰摂取による死亡割合が高く、その要因は食事での食塩摂取量の多さですが、同時に野菜や果物の摂取量が少ないことも課題です。

講演する武見ゆかりさん

そこで食事で気にしてほしいのが、「ナトカリ比」です。食塩(ナトリウム)摂取と関係が深い高血圧は、日本人の死亡リスクとして特に多い要因です。日本人の3人に1人が高血圧と推定されます。ナトカリ比を下げることは、高血圧予防ばかりでなく、心臓病や脳卒中予防にもなります。また高血圧は、認知症になりやすくなる要因の一つといわれます。40代からの中年期に高血圧を予防しておくことが、認知症リスクの低減につながります。

ではどれくらいナトカリ比を下げればいいのか。日本人の尿中のナトカリ比は男性4.5、女性4.1※3、望ましいのは2未満とされます。ナトカリ比を下げるには、分子であるナトリウムを小さくし、分母であるカリウムを増やす必要があります。

ベジチェックを体験する人
フォーラムの会場にもベジチェック®が設置され、多くの来場者が測定していた

日本の成人は食塩摂取量の約6割を調味料からとっています。ナトリウム摂取を減らすためには、味見をせずにむやみに調味料をかけない、減塩タイプの調味料を使う、酸や香辛料を積極的に使うなどの工夫をしましょう。またカリウムの1日の目標摂取量は男性3000㍉グラム、女性2600㍉グラム※4ですが、国の調査では男女ともに約2000㍉グラムちょっと※5で、どちらもかなり不足しています。

このことからも、カリウムが多く含まれる野菜料理を1日に1回、1皿プラスすることをぜひ意識してください。また果物や乳製品も毎日欠かさずとりましょう。自分の食事を少しだけ良くすることで、健康寿命を延ばすことにつながることを多くの人に知ってもらいたいと思います。(談)

杉浦太陽さん(俳優・タレント)
すぎうら・たいよう/1981年生まれ、大阪府出身。2001年ドラマ「ウルトラマンコスモス」で主役を務める。07年に辻希美さんと結婚。ベスト・ファーザーイエローリボン賞、イクメン オブ ザ イヤーなど受賞。料理や釣りが趣味で、「ベジタブル&フルーツアドバイザー」「きのこマイスター」の資格を持つ。NHK Eテレ「趣味の園芸 やさいの時間」等に出演中。

辻希美さん(タレント)
つじ・のぞみ/1987年6月17日生まれ。東京都出身。2000年、モーニング娘。の第4期メンバーとしてデビュー。04年に同グループを卒業。07年に杉浦太陽さんと結婚し、現在4児の母。TV・イベントに出演のほか、アメブロ&インスタを日々更新。洋服や美容のオリジナルブランドも展開中。YouTube「辻ちゃんネル」では、飾らない等身大のリアルな部分が共感を呼んでいる。
※「辻」のしんにょうは一つ点が正式表記です

武見ゆかりさん(女子栄養大学 栄養学部教授)
たけみ・ゆかり/管理栄養士、博士(栄養学)。慶應義塾大学卒業。女子栄養大学大学院栄養学研究科修士課程修了。2005年度より現職。23年度より副学長。「食事バランスガイド」の策定など国の健康・栄養政策、食環境整備に関与。日本健康教育学会理事長。

※1 厚生労働省 健康日本2(1 第二次)最終評価
※2 厚生労働省 国民健康・栄養調査(平成28年()拡大調査)結果
※3 Zhou BF et al. J Hum Hypertens .2003; 1(7 9): 623-630. 
※4 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)
※5 厚生労働省 令和元年国民健康・栄養調査報告