世界中に広がった新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、ウイルスに起因する感染症の予防に不可欠なワクチンを国内で製造・供給する重要性が強く認識されるようになりました。加えて、医療現場に欠かせない抗菌薬も、国内での一貫生産体制の構築が国家安全保障上の大きな課題として浮き彫りになりました。現在、自国でのワクチン開発や抗菌薬生産を強化する国家戦略が始動しています。

感染症対策に挑み続けて約80年の歴史を持つMeiji Seika ファルマではその動きを受け、元来の強みである感染症領域の事業をいっそう強化しています。ペニシリン系抗菌薬の原薬原料の国内生産に向けて、生産体制を再構築しているほか、新型コロナウイルス感染症に対する「次世代mRNAワクチン」の製造も進めています。日本の医療基盤を支える企業として、社会的課題の解決に貢献していく重大な使命を背負う、Meiji Seikaファルマの「今」をご紹介します。

感染症に挑み続け、日本の医療基盤を支える

感染症領域のリーディングカンパニーであるMeiji Seika ファルマの前身は「明治製菓」でした。医薬品事業に参入したのは戦後まもない1946年。抗菌薬ペニシリンの製造をスタートしたことがきっかけでした。

ペニシリンは、現在でも呼吸器疾患の治療や外科手術の前後で使用され、あらゆる医療現場で活躍しています。 代表的な原料の一つであった乳糖は、食品や乳製品を扱う同社にとってなじみの深い物質でもありました。

ペニシリンを持った女性
ペニシリンシラップ瓶を持った女性=同社提供

その後も同社は数々の抗菌薬を発売し、国内外の安定供給に貢献し続けてきました。

2018年には、一般財団法人化学及血清療法研究所の主要事業を承継した国内トップクラスのワクチン製造会社「KMバイオロジクス」が明治グループに加わりました。ワクチンの安定供給や新しいワクチンの開発にも力を注ぐことによって、感染症の「治療」だけでなく「予防」との両輪で、より多くの人々の健康に役立つことができるようになったのです。

Meiji Seika ファルマが全身性抗菌薬に占めるシェアは国内トップ。インフルエンザワクチンも国内1位のシェアを誇ります。2024年3月には、百日咳や破傷風などを予防する5種混合ワクチンの国内製造販売を開始しています。

国産の新型コロナワクチンで、新たな選択肢を

新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていた時期、日本はワクチン開発で他国に後れを取り、海外のワクチンに頼らざるを得ませんでした。政府は2021年6月の段階で、「ワクチンを国内で開発・生産できる力を持つことは、国民の健康保持への寄与はもとより、外交や安全保障の観点からも極めて重要である」として、ワクチン開発・生産体制強化戦略を閣議決定。その後も、感染症危機への対応に万全を期すための国家戦略を取っています。

日本の感染症対策をリードしてきたMeiji Seika ファルマも大きな使命感を抱き、政府とともに新型コロナウイルス感染症のワクチンの開発・製造に挑むことを決意しました。経済産業省や厚生労働省がワクチン生産体制を整備する事業の採択を受けて、ワクチン生産体制の構築を進めています。

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ワクチン製造ライン=同社提供

ワクチンは、ウイルスなどに対する免疫をつけて、感染症にかかりにくくしたり、症状を軽くしたりするために接種されます。従来のワクチンは、病原体の病原性を弱めた「生ワクチン」、感染力をなくした病原体や、病原体を構成するたんぱく質でできた「不活化ワクチン」、毒素を取り出して無毒化した「トキソイドワクチン」に分類されます。たとえばKMバイオロジクスは新型コロナウイルス感染症に対して、季節性インフルエンザワクチンや小児用ワクチンなどで豊富な実績を有する不活化ワクチンを開発しています。

新型コロナウイルス感染症に対抗するための新技術として注目を集め、世界中で多くの人が接種したのが「mRNAワクチン」です。たんぱく質の設計図であるmRNA(メッセンジャーRNA)を接種するもので、体内ではmRNAがウイルスの構造を模した「抗原たんぱく質」を生成します。この抗原たんぱく質に対して免疫の仕組みが働き、ウイルスに対する抗体をつくることができます。

Meiji Seika ファルマが着目したのは、さらにその先を行く「次世代mRNAワクチン」。新しい技術によってmRNAが複製されるように設計されているため、従来のmRNAワクチンよりも少ない有効成分量の接種で済むのが特徴です。酵素の働きで複製されたmRNAが一定時間維持されることで、つくられる抗体の量が長く持続します。また、人の体内にある分解酵素によってmRNAは分解されるので、体内でmRNAが無限に増殖することはありません。また、動物実験の結果からもmRNAが複製される期間は一定期間であり、投与後1週間程度で著しく低下することが証明されています。

【動画】次世代mRNAワクチンのはたらき=同社提供

今回Meiji Seika ファルマが開発した次世代mRNAワクチンは2023年11月、次世代mRNAワクチンとして世界で初めて製造販売承認を取得。24年9月には、オミクロン株JN.1系統に対応したワクチンとして厚生科学審議会から一部変更承認を取得し、国内での販売が開始されています。

次世代mRNAワクチンは、ベトナムや米国、日本などで行われた臨床試験で約18,000人に接種され、安全性と有効性が確認されました。その日本での治験データは、「The Lancet Infectious Diseases」に掲載・評価されています。ベトナムで実施された第Ⅲ相試験(初回免疫)で、感染を56.6%抑制し、重症化を95.3%防いだと報告しています。

これまでの新型コロナワクチンに次世代mRNAワクチンが加わることによって、接種を受ける人にワクチンの選択肢が増えることが期待されます。少ない投与量で抗体の量が長く維持されるため、65歳以上の人などが対象となる定期接種に適していると言えます。年1回の接種で効果の持続が期待されるため、接種される本人の負担を軽減するだけでなく、医療関係者や行政機関にとってはさまざまなコストを削減できる可能性があります。

2023年にノーベル生理学・医学賞を受賞し、次世代mRNAワクチンの開発にも携わったドリュー・ワイスマン博士は「このワクチンには大きな可能性があると考えています。すべてのRNAと同じく製造が容易で必要な投与量も少ないので、より安価になり大量生産することができます。知っておいてほしいのは、ワクチンはウイルスを複製することができないということです。ワクチンにはウイルスをつくりだす力はありません。mRNAを永遠に複製し続けることもできません。mRNAを数日複製し、その後消滅します。だからこそワクチンとして非常に効果的なのです」とのメッセージを寄せています。

ワクチンについての正しい理解を広げ
社会全体を感染症から守るために

Meiji Seika ファルマは9月13日、一般の方や医療関係者に向けて「次世代mRNAワクチン情報サイト」を公開しました。新型コロナウイルスやワクチンに関する情報、よくある質問をまとめたもので、ワクチン全般に関することがわかる「やさしいワクチンガイド」でも情報提供を行っています。

ワクチンの基礎情報はもちろん、接種の意義や安全性などに関する啓発活動にも力を入れることは、ワクチンのトップサプライヤーとしての重要な役割です。同社は、信頼性の高い情報をタイムリーに提供していくことによって、医療関係者にも積極的に活用してもらいたいと考えています。

小林大吉郎 代表取締役社長は、9月末に行われた次世代mRNAワクチンの説明会で「ワクチンは公衆衛生上必須のもの。新興・再興感染症の脅威が増す中で、他国の事情に左右されず、自国で必要なワクチンを開発・生産できるのが自律性から言っても大切だと考えています」とコメント。今後の情報提供についても、「本来接種すべき人にワクチンが届かないということは、公衆衛生上の大きな脅威です。発売後も継続して客観的・科学的な情報を積極的に収集・評価分析して、皆さま方に提供していきたいと考えています。関係省庁とも連携して、医療関係者や一般の方に正しい情報が届くような環境整備に協力していきます」と語りました。

感染症に備えるためには、心身ともに健康を維持している時からワクチン接種などの対策をすることが大切です。さらに、社会全体で免疫を持つ人が増えれば、集団免疫によって感染症の流行を抑えることにつながります。

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Meiji Seika ファルマは、ワクチンや抗菌薬の安定供給などへの取り組みを通じて、これからも感染症に挑み続けます。

新型コロナウイルス感染症はもちろん、私たちの生活を脅かす未知の感染症から人々を守るために。そして、未来を守るために。

抗菌薬を日本国内で安定供給できる体制へ

2019年、日本の医療に欠かせない抗菌薬に危機的状況が発生しました。抗菌薬の製造にかかわる海外メーカーが環境規制などの問題で供給を停止したため、国内での供給がストップしたのです。

2022年12月、国民の生存や国民生活・経済活動に甚大な影響のある物資として、ペニシリン系など4種の抗菌薬が「特定重要物質」に指定され、これらの原薬の国産化が進められることになりました。

大型発酵槽(ヒトいり)
抗菌薬の原薬を作る大型発酵槽=同社提供

Meiji Seika ファルマは、そのうち2剤のトップサプライヤーであり、国内での安定供給に向けた取り組みを進めています。ペニシリン系抗菌薬の共通の原料である「6-APA」の国内製造に名乗りを挙げ、岐阜工場で30年ぶりに生産体制構築に着手しました。約80年にわたるノウハウや資産を生かし、2025年の本格稼働を目指しています。

さらに近年は、今ある抗菌薬が効かない薬剤耐性菌(AMR)が世界中で確認されています。同社は、このような細菌に有効な抗菌薬の開発を進め、「ワクチンと抗菌薬の両方を開発する企業」として粘り強くこの問題の解決に立ち向かいます。

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