次世代を担う若者たちはときに、大人の「常識」を超えた発想をする。 その発想力、創造力をビジネスの世界で発揮してもらおうという着想で生まれたのが、株式会社マイナビが主催する高校生のためのビジネスアイデアコンテスト「マイナビキャリア甲子園」だ。グローバル化、IT化、産業構造の変化……予測不可能な時代を生きる若者たちは、従来の教育とは違う「答えのない問い」に対応する力を求められている。「高校生のうちから社会で生き抜くための能力を育む機会をつくりたい」と語るマイナビキャリア甲子園の運営責任者鈴木麻友さんに、11回目となる今大会の意義を聞いた。

ビジネスの最前線にいる大人たちが出す「答えのない問い」

鈴木麻友さん3
鈴木麻友さん

――「マイナビキャリア甲子園」について教えてください。ほかのビジネスコンテストとの違いは? 

鈴木:マイナビキャリア甲子園は、2014年に高校生向けのビジネスアイデアコンテストとして誕生し、今年で11回目になります。私たちマイナビのことを、人材の会社として知ってくださっている方が多いのではと思いますが、マイナビキャリア甲子園設立のきっかけも「人材」という観点にあります。 

人材の会社として、社員が普段、企業の人事や採用担当者の方と向き合うことが多いなかで当時、“企業が求める人材”と、“子どもたちが学校で学習した「学び」の経験”が結びついてないことがあるのでは、という課題感を持つようになっていました。企業は、公式に沿って問題を解く・知識を暗記するといった従来の教育で身につけられる力だけではなく、自分で考えて行動する力だったり、チームでひとつの物事を成し遂げたりといった「社会を生き抜く力」を求めるようになってきていると。けれども、それまでそういった教育を受けてこなかったのに、大学生になり、いざ就職活動のタイミングでいきなり求められても、身についているわけがないですよね。ですので高校生のタイミングからキャリア教育を通じて、たくましく、社会を生き抜く力を身につけた人材を世に出していかねばという思いから、マイナビキャリア甲子園をスタートさせました。

――全国の高校では2022年度から新たな学習指導要領に沿った授業が始まり、自分たちで課題を見つけ学ぶ「総合的な探究の時間(探究学習)」が必修科目になりました。

鈴木:そうなんです。この「総合的な探究の時間」の中でマイナビキャリア甲子園に取り組んで下さる学校も多く、私たちにとっては非常に追い風となりました。有難いことに教育現場でも注目度が高くなったのではないかなと思っています。

マイナビ女子4人
第10回大会決勝大会の様子

高校生たちは、協賛企業から出されるテーマを自分たちで選択し、数カ月かけて答えを導き出します。書類審査、プレゼン動画審査、準決勝大会を戦い抜いたチームがそれぞれの企業の代表チームとなり、決勝大会のステージに立ちます。出されるテーマはさまざまです。これまでの大会では「ITの発達による10年後、その先の社会を想像し、その社会において生命保険会社が提供すべき新しい価値を提案せよ」(生命保険協会)や、「世界初のノートPCを開発したDynabookだからこそできる、地球人の10年後の未来を革新するPCの価値・サービスを創造せよ」(Dynabook)など、多様かつ実践的なテーマが出題されてきました。

国内を代表するような企業の、ビジネスの最前線にいる方々からのテーマに、真剣に取り組む。そしてアイデアをジャッジされ評価してもらうという機会は、他になかなかないのではと思います。また大会の規模感も特色です。決勝のプレゼンはスポットライトを浴びる大きな舞台の上で、100人以上の前で行います。インターネット上での生配信もされますので、観客は全国、全世界にいます。そのスケール感は、他大会にはない、マイナビキャリア甲子園ならではかなと思っています。優勝チームには100万円分の海外旅行券が贈呈され、国内だけに留まらない新たな経験を積むことができます。

鈴木麻友さん4


企業と高校生、そして社会 「三方よし」な大会

――協賛企業はどのような動機で参加を決めているのでしょうか。

鈴木:マイナビキャリア甲子園は、先ほどもお伝えした高校の授業の必修科目「総合的な探究の時間」の一環として取り組まれることが多いのですが、高校生は3カ月から長くて半年、一つの企業のテーマに向き合います。その企業から出されたテーマのことをずっと考え、解決策となるビジネスアイデアを出す。気がついたらその企業が大好きになっている。ファンになるんです。

企業にとって、高校生世代は直接的な顧客やターゲット層ではない場合も多いです。一方で、高校生たちは未来の顧客であり、もしかしたら未来の社員かもしれない。そういった観点で、単純なテレビCMやSNSの広告といった手法ではない方法で、早期にブランディング出来ることに価値を感じていただけることが多いですね。

加えて、次世代教育に力を入れているということは、CSR(社会貢献)の一環になりますし、顧客である親世代へのPRにもつながっているのではないかと思います。

また、実際に協賛いただいた企業からは、「私たちの想像を超えた、高校生のイノベーションにはいつも驚かされる」という声もいただいており、企業の社長や役員の方が高校生たちと円陣を組んだり、一緒に涙を流して喜んだり悔しがったりする姿を見ることができます。高校生の真剣な姿に、新鮮な刺激を受けているようです。

また、高校生にとってのメリットももちろんあります。いま大学入試では総合型選抜(旧AO入試)の割合が増えてきています。総合型選抜では一般的に学校内の活動にとどまらない活躍をした生徒が評価されますが、マイナビキャリア甲子園での成果を評価対象として、一定の成績をおさめた生徒に対して一次試験を免除する大学も出てきています。私も、実際に総合型選抜でマイナビキャリア甲子園の実績を踏まえ大学に合格をした報告をいただいていますし、依頼を受けて推薦文を書いたこともあります。マイナビキャリア甲子園出場者の生徒たちからそのような連絡をもらうと、本当にうれしい気持ちになります。総合型選抜以外にも、学校推薦型選抜、一般選抜でもそういった活動を評価する学校が増えてきているという話も聞きますし、今後ますますマイナビキャリア甲子園に参加し、将来活躍する生徒たちが増えるといいなと思っています。

マイナビキャリア甲子園を通して企業にとっても、高校生にとっても、そして私たちマイナビにとってもハッピーになれる仕組み作り、「三方よし」の関係、さらに社会にとっても良い影響があるという意味では「全方位よし」の関係が出来ているのではないかなと、考えております。

「マイナビキャリア甲子園」は参加して終わり、のコンテストではなく、「次につながる」ことも魅力です。

マイナビ・生理用品
真和高等学校の生徒たちが校内に設置した生理用品

第8回大会では、生命保険協会様の出題したテーマに沿って「生理の貧困」の解決に向けたビジネスアイデアを提案した熊本県の真和高等学校の生徒たちが優勝したのですが、大会終了後、彼女たちは実際に学校内のすべての女子トイレに生理用品を常備するよう掛け合い、見事実現させたと嬉しい連絡をもらいました。第9回大会では、兵庫県立長田高等学校の生徒たちがミツカン様の「味ぽんが目指す『半径1メートルのしあわせ』を可視化し、10代~20代の若者の共感を得られる、味ぽんブランドの新たな事業を創出せよ」というテーマに挑み、火を使わずに鍋料理が食べられる「ぽん鍋缶」を提案。見事視聴者賞を受賞しました。理念に共感したミツカン様は生徒たちとともに「ぽん鍋缶」を実際に製作、生徒たちのアイデアが具現化されました。商品として流通されるまでには至っていませんが、大会後に企業様と生徒たちのコラボが実現したことに感動しましたね。

ぽん鍋缶
兵庫県立長田高等学校の生徒たちとミツカンが共同製作した「ぽん鍋缶」

――参加者が1万人を超える「マイナビキャリア甲子園」。決勝の舞台に立つのも、さらにそこを勝ち抜くのも、大変なことですね。

鈴木:2大会に渡り挑戦し、惜しくも決勝大会に届かなかった生徒もいます。2年前、そうした生徒から「結果がどうしても受け入れられない。自分のすべてが終わってしまったように感じる」と涙ながらに連絡をいただき、面談をさせてもらったことがありました。こんなに真摯に、大げさかもしれませんが、青春をかけて大会に取り組んでくれた高校生がいることに感極まりましたね。
そのとき伝えたのは「マイナビキャリア甲子園が終わったら終わりではない」「明日も明後日も大学に入っても社会に出ても、私たちは答えのない問いを考え続けなければならないんだよ」ということです。「私たちはこの大会が未来を担う高校生にとって良いものだったかを考え続けているし、こういった事業を続けることがマイナビの責任だと思っている」と。マイナビはさまざまな世代に向けたサービスを展開していますから。
うれしいことにその子はいま、マイナビが運営する学生コミュニティー「ガクラボ」に参加してくれていて、私たちと関わり続けてくれています。

先の見えない時代 打ち破る力を

――鈴木さんご自身は2020年から「マイナビキャリア甲子園」に携わっています。高校生たちと接するなかで、どんなことを感じていますか。

鈴木:日々接していて感じるのは、「いつ世界がなくなってしまうかわからない」というような、そこはかとない不安感を抱えているということです。少なくとも、自分のいる環境だったり所属する場だったりが永遠ではないと感じています。それこそ、会社に入社してもずっといられるわけではないとか。それはコロナ禍も影響していますが、物価高だったり社会情勢だったり、大人たちがつくり出したもののせいだと思っています。 

そんななかでも、この社会、空気を打ち破ってやりたい、大人たちに自分たちのスタンダードはこれなんだと見せてやりたい。そんな気概を高校生たちは持っていると思うんです。「マイナビキャリア甲子園」を通じて、私たちが予想もつかないようなアイデアや発想を彼ら彼女らは見せてくれます。11回目を迎えて、より幅広い地域や多様な学校の生徒たちに、チャレンジしていただきたいです。 

マイナビキャリア甲子園

ある女子生徒が私に打ち明けてくれた話があります。
「数学、英語、国語……自分はどれも苦手で勉強ができないと思っていたけれど、『マイナビキャリア甲子園』に出会って私にも得意な学びがあると知ることができた」と。彼女は大学在学中に起業し、いまも活躍しています。いま、もしかしたらまだ自分の可能性を見つけることができていない高校生が、日本のどこかにいるかもしれない。テスト勉強は苦手でも、発想力やプレゼンテーションで輝くことができるかもしれない。そういう子にぜひ、参加してほしいですし、そのためにもっともっと多くの高校生たちに知ってもらえる大会に成長させていきたいです。

マイナビキャリア甲子園

今年度第11回大会はプレエントリー受付中!

――11月29日まで、今年度の第11回大会のプレエントリーを受け付け中ですね。決勝大会は2025年3月15、16日に行われます。今大会の特色や、担当者としての意気込みを教えてください。

鈴木:探究学習が導入され、「答えがない学びをしろ」と言われて戸惑っているのは生徒だけではなく先生もだと思います。そこで、今年度からは実際の教育カリキュラムに「マイナビキャリア甲子園」をどうしたらうまく落とし込めるのか、パターンをいくつか例示するようにしてみました。学校での学びをサポートするようなツールは、これからも拡充していきたいと思います。 

そして生徒たちには……今年度もさまざまな企業から多様なテーマを出していただきました。私たちのミッションは日本にも本当にすごい若者たちがいるんだよと伝えていくことだと思っています。「自分がどこまでやれるのか、腕試しがしたい!」という熱い気持ちを持った高校生はもちろん、「仲間と一緒に、今まで経験したことがないことを始めたいな」「少しだけ興味があるかも」という気持ちでエントリーしてくれることも大歓迎です。皆さんの挑戦をお待ちしています!

鈴木麻友さん5

鈴木 麻友(すずき・まゆ)
1987年生まれ。新卒で入社した教育事業の会社を経て2013年にマイナビに入社。大学生コミュニティ『学窓ラボ(現・ガクラボ)』の立ち上げやZ世代をターゲットにしたプロジェクトに携わったのち、2020年より「マイナビキャリア甲子園」運営責任者

マイナビキャリア甲子園ロゴ中