米国の大手IT企業がデジタルイノベーションをけん引する中にあって、半世紀にわたって北米発の先端技術と日本をつなぐ役割を果たしてきたのが、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)だ。昨年12月の非上場化を経て、伊藤忠商事との連携強化が期待されるSIer(システムインテグレーター)として、同社は今後の変化をどのように捉え、どんな新しい挑戦を見せようとしているのか。代表取締役社⻑に就任して約半年を迎える新宮達史氏に話を聞いた。

「ONE TEAM」でナンバーワングループを目指す

——これまでにCTCの役員を歴任され、昨年は株式の非公開化を推進する役割も果たされました。社長に就任され、トップリーダーの立場でCTCを半年間見てきた所感をお聞かせください。

新宮 伊藤忠商事では株主の側でずっとCTCを見てきて、4月に社長に就任してからはお客様へのあいさつ回りや国内の施設回り、北米の拠点への出張などを重ねました。CTCは通信キャリアのお客様をはじめ、電力やガス、運輸など日本の有数のインフラ事業者の方々と深いつながりを持っていることをあらためて実感しました。

また、デジタル化のニーズが高まる中でどのように推進したらいいのか、という課題を企業の方々がお持ちであることを改めて認識しました。こうしたお客様の課題解決に向けて、当社がしっかりと責任を果たさなければならないという使命を強く感じています。

——CTCの強みや特徴に対して、あらためてどんな印象を持ちましたか?

新宮 お客様のデジタル化に対する感度や知見は年々高くなっています。ご要望通りのシステムを組み上げていくことに加えて、CTCならではのノウハウなどを付加価値としてお客様にしっかり提供していくことが重要だと考えています。その意味で、現在のCTCは営業力と技術力のバランスがうまく取れており、新規案件の獲得についても非常にアグレッシブに活動しているのを感じます。

——座右の銘である「ONE TEAM」という言葉を社内でも積極的に発信されています。

新宮 私が「ONE TEAM」を実感したのは、伊藤忠商事にいた2007年のことです。米国のパートナー企業と日本の通信事業者のお客様と、3社共同による携帯電話の補償サービスを立ち上げ、結果的に4,000万人を超える方々にご利用いただくヒットとなりました。それぞれの会社の良さがうまく連携したことで、想像以上の力を発揮して成功に結びついたのを経験しました。

CTCの中においても、いろんな得意分野を持つ社員がいます。一人でできることには限界がありますが、お互いの足りないものを補完しあいながらプロジェクトを進めることが重要であり、それがしっかり遂行できるチームは強いと思います。

——CTCがチームとして目標とするところは?

新宮 スポーツの世界と同じように、チームが一体感を持つためには、わかりやすい目標設定が必要です。当社はSIerの業界で2番手グループの位置付けにあり、私の在任中にナンバーワングループを目指そうという明確な目標を社内に示しています。明確な目標を持つことで社内の結束力やパワーが高まると考えています。

「実装力」を生かし、明日の変化に挑戦していく

——今年8月1日にはグループの企業理念をアップデートしました。「Challenging Tomorrow's Changes」のコーポレートアイデンティティが意図するところを教えてください。

新宮 「Challenging Tomorrow's Changes」は当社のコーポレートアイデンティティとしての「挑戦する文化」を示しています。元々「CTC」は、旧英文社名(C. ITOH Techno-Science Co., Ltd.)の頭文字をとった略称でした。後に英文社名は変わりましたが、「CTC」の名は業界で既に浸透していたため、当時のスローガンとして「Challenging Tomorrow’s Changes」を制定し、略称として使用を継続しました。それ以来、CTCグループ内においては、明日の変化に挑戦していくことが社員たちの心のよりどころとして根付いています。

今回、この言葉をコーポレートアイデンティティとして明確にするために、「変わっていく。挑んでいく。」という日本語を補完しました。シンプルにすることで言葉の意味を社員が心にとどめ、一体感を醸成していきたいと考えています。

——挑戦することは、CTCの企業文化なのですね。

新宮 お客様の希望にかなうITシステムを納入するのは簡単なことでなく、ときには苦しい作業も伴うものです。「挑んでいく」という意味の中には、システム構築をしっかりやり遂げることも含まれています。それは他社にはない、当社ならではの「実装力」でもあります。

障がいのある社員が活躍するカフェも、新たなチャレンジ

——人材活用やダイバーシティにつながる取り組みも積極的にされています。状況を教えてください。

新宮 ジェンダーや年齢などにとらわれず、自身の専門性やスキルを十二分に発揮してもらいたいというのが基本姿勢です。継続的な制度改革によって、高度なスキルやノウハウを持つ人材が年齢に関わらず適材適所で活躍できる環境を整備してきました。

具体的な例では、今年4月に定年後の再雇用制度を改定し、スペシャリスト職に準じた高度専門職コースを新設しました。個人の志向や適性、経験などを踏まえて再雇用後も正社員同様の役割を設定することで、 現役時代と変わらない報酬体系で継続的に雇用する仕組みです。当社としても不足するIT人材を補うことにもつながります。

——障がい者雇用を推進する特例子会社「CTCひなり」の社員も活躍されています。

新宮 CTCひなりでは、これまでにオフィス清掃や事務代行といった業務だけでなく、契約農家からの農作業請負などにも取り組み、障がいのある社員の職域を開拓してきました。2021年には、移転した本社オフィス内に「HINARI CAFE」をオープンし、こちらの運営もしています。コーヒーが非常においしくて、私もよく飲んでいます。

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9月12日には、港区麻布地区総合支所に「HINARI CAFE 麻布」が正式にオープンしました。これまでの社内オフィスのカフェは社員向けの運営でしたが、今度は社外の方々にもご利用いただくことになります。ひなり社員たちのチャレンジとして私も応援しており、是非、こちらのカフェにお越しになっていただけるとありがたいです。

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【HINARI CAFE 麻布】

CTCひなりが運営するカフェ。コーヒー類や弁当などを、イートインもしくはテイクアウトで販売している。
住所:東京都港区六本木5-16-45(港区麻布地区総合支所 2階)
URL:https://hinari.ctc-g.co.jp/special/cafe_azabu
営業時間:月~金 11:00-16:00
休業日:土・日・祝日                

伊藤忠商事との連携で、一つ上のステージへ

——5月に発表した中期経営計画では、「前例のない領域へ」というコンセプトを掲げています。どんなメッセージが込められているのですか?

新宮 今まで経験したことのないような新たな技術、新たなサービスが生まれ、新たな社会の変化が今後起きていくことが予想されます。「Challenging Tomorrow's Changes」の言葉の通り、当社も変化に対応して新たな領域にどんどん入っていき、事業拡大を図っていくという意味を含めています。キービジュアルには帆船を用いていて、当社がDXの追い風を受けながら全速前進で大海原に乗り出していく、というイメージで私は捉えています。

——中期経営計画の4つのキーアジェンダ「先進技術」「オリジナリティ」「クオリティ」「知的資本」について教えてください。

新宮 AI や量⼦コンピューティングなどの「先進技術」は、CTC の⼀丁目⼀番地。お客様に選び続けていただくためには、最先端の技術をいち早く取り込みながら、継続的に紹介することができる企業であり続けることが重要です。

DXの進展に伴い、いわゆるLOB(Line of Business:企業の事業部門)と呼ばれる部署でのデジタル活用が顕著になっています。「オリジナリティ」のキーアジェンダでは、LOBに対してCTC独自の提案を進め、ノウハウを資本として蓄積して再展開する意図を込めています。

また、当社はインフラ構築などの分野で強みを持っており、コアビジネスやコアエリアにおいて引き続きレベルアップを図っていく目的で「クオリティ」と表現しています。

それら全てを支えるのが、人的資本、組織・構造的資本などの「知的資本」です。昨年、伊藤忠商事のTOB(株式公開買い付け)を経て非上場化されました。同社やグループ会社との連携をさらに深めていくことは、関係資本の拡充という意味で重要視しています。

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——先進技術のうちAIについては、例えば、エネルギーの負担に関して等、技術の社会実装に関わる企業として、どのようなお考えをお持ちですか?

新宮 現在の生成AIなどの主流であるLLM(Large Language Model:大規模言語モデル)は、電力消費が非常に大きくなっています。それに対し、省電力のAI技術についても研究が進んでおり、大きな期待が寄せられています。当社も今年2月、そのようなAI開発に取り組む米国のLiquid AI社との協業をスタートしました。SDGsという観点からも、こういった新しい技術を更に発掘して活用につなげていければと考えています。

——伊藤忠商事との連携強化によって、どんなシナジー効果が期待されますか?

新宮 お客様の経営戦略にITをどのように活用するかといったコンサルティングから、データ分析の分野まで、DXを支援するといってもその場面は非常に多岐にわたります。CTC単体ではカバーするのが難しいピースを補完するために、伊藤忠商事が投資する企業や、伊藤忠グループのデジタル企業群と連携したりするなど、これまでも戦略的に取り組んできました。あらためてその連携が強固なものとなり、提案力などが強化されるのは大きなアドバンテージです。

また海外事業については、現在は当社の売り上げの10%程度ですが、商社である伊藤忠商事のネットワークを活用することによって、CTCの領域を大きく広げていくことも重要です。

——CTCが今後目指していく姿をお聞かせください。

新宮 LOBなどのお客様の市場ニーズを取り込むためには、CTC自体が変わっていくことが必要です。現在の延長線上での成長ではなく、次元を一つ上げて前例のない領域へと取り組んでいくことが求められるでしょう。お客様がCTCに対して持つイメージも、従来のSIerといったものだけではなく、たとえば提案力やクリエーティブといったイメージも加わるように、新たなステージを目指してONE TEAMでこれからも挑戦していきたいと思っています。

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伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC) 代表取締役社⻑ 新宮 達史 氏
しんぐう・たつし/1964年島根県生まれ。87年伊藤忠商事入社。1年目にCTCの前身である伊藤忠データシステムの経理業務を担当。40年近くにわたり情報通信関連の事業やサービスの立ち上げなどに携わってきた。2017年に伊藤忠商事執行役員 情報・通信部門長 兼 伊藤忠テクノソリューションズ取締役。18年伊藤忠商事執行役員 情報・金融カンパニープレジデント、20年伊藤忠商事常務執行役員 。2024年4月より現職。

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伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)

お客様のパートナーとなる総合ITサービス企業です。コンサルティングから設計、開発・構築、運用・保守サポートまで、先進のテクノロジーに基づくクラウドサービスや製品を組み合わせたソリューション提供で、お客様のデジタルトランスフォーメーション(DX)や社会課題の解決に貢献します。

https://www.ctc-g.co.jp/