食生活の多様化が進み、ドリンクに求められる役割や飲むシーンも大きく変化しています。今までイメージできなかったような時間帯や場所で、意外なドリンクが飲まれるようになりました。代表的なのが、「ノンアル」と呼ばれて親しまれているノンアルコール・ビールテイスト飲料。「ビールの代わり」としてだけではなく、幅広い目的やシーンに広がっています。
ノンアルコール・ビールテイスト飲料の中でも爽やかな飲み口で人気を博しているのが、3種類のホップを使用した「キリン グリーンズフリー」(以下、「グリーンズフリー」)です。気分転換やリフレッシュしたいときに飲む人も多く、ランチタイムなど幅広いシーンに溶け込みつつあります。なぜ「グリーンズフリー」が今までのノンアルコール・ビールテイスト飲料に対する先入観を覆し、支持を広げているのか。専門家や開発者に聞いてみました。
ホップから生まれる“苦み”でリフレッシュ
ノンアルコール・ビールテイスト飲料の多くは、ビールと同じく麦、そしてホップが主な原料に使われています。大きく異なるのは、麦を発酵させる工程がないこと。ビール特有の苦みや香りを高めるホップには、より大きな役割が求められていると言えるでしょう。
「食」をテーマにした心理学が専門で、立命館大学の和田有史教授(多感覚・認知デザイン研究室)は「ホップはビールの大切な特徴。香り高く、苦みも出るようにホップを設計することはノンアルコール・ビールテイスト飲料にとっても重要です」と言います。
和田有史(わだ・ゆうじ)
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構主任研究員などを経て、2017年4月より立命館大学教授。専門は実験心理学。”食”をモチーフに多感覚知覚、消費者認知特性などにアプローチし、人の心のメカニズムの解明とその知見に基づく応用技術の開発を目指している。
「グリーンズフリー」を飲んだ感想について、「ホップの香りと、穏やかなモルト香が特徴。苦味もあって、爽やかに飲めますね。ホップはフローラルやシトラス系の香りがあり、多くの人に好かれる香り。リフレッシュを感じる効果があると思います」と和田教授。
ホップから醸し出される心地よい柑橘っぽい香りがモルトの香りなどと混ざることで、独特の落ち着く感覚に導くのではないかと推測しています。
香りだけでなく、苦みもリフレッシュに貢献する要素の一つ。「ホップの苦み、そして炭酸によって、(口の中を)リンスしてくれるような感覚が生じるのではないでしょうか」と説明してくれました。
この苦みこそが、食べ物や飲み物の好みを大きく左右するファクター。「人間の舌には苦みを感じる受容体が25種類ありますが、よく小さな子が嫌いなものを『苦い』と言うように、純粋な苦みは基本的に嫌われるものです」と和田教授。サンマの肝やコーヒーの苦みを人間がおいしいと感じるようになるのは、複雑な味わいを経験して学習するからだそうです。
「ビールの苦みというのは、年齢を重ねながらおいしさに昇華されていく、大人の喜びなのだと思います」と和田教授。「アクセントのある飲み物でリフレッシュしたいとき、ホップの苦みが効いたノンアルコール・ビールテイスト飲料は選択肢になりますね」
苦みと香りに重要な役割を担うホップ。その選定や配合によって、ノンアルコール・ビールテイスト飲料の味わいは大きく変化します。醸造家の腕の見せどころです。
「グリーンズフリー」開発者が語る、ホップと爽やかさへのこだわり
「3種類のホップを使って爽やかなおいしさを引き出したのが『グリーンズフリー』の特徴です。白ワインのようなフルーティで爽やかな香りのネルソンソーヴィンホップ※(一部使用)は、ニュージーランド産の希少なホップ。それに華やかな香りのホップ、上品な苦みのホップをブレンドして、爽やかな味わいと飲みごたえを実現しました」
※5%以上使用(ホップに占める割合)
そう語るのは、「グリーンズフリー」の商品開発を担当しているキリンビールの東橋鴻介さん。これまでに「SPRING VALLEY 豊潤〈496〉」「のどごし〈生〉」「晴れ風」などの商品を手掛けてきた若手の醸造家です。
ノンアルコール・ビールテイスト飲料はアルコールがない分、ビールに比べて味の要素が少なくなり、それを補うために通常は甘味料がよく使われます。「『グリーンズフリー』は甘味料を使わずに、素材の良さをしっかり引き出すという観点で、甘すぎないすっきりした味わいを作っています」と東橋さん。「ホップアロマ製法」を採用し、キリン独自のホップアロマ製法により、ホップのフルーティで爽やかな香りを引き出しているそうです。
さらに、麦の良さを引き出す「麦芽適温仕込み製法」と、渋みや雑味を減らす「低温ろ過製法」といった、キリンのビールづくりの技術を活用。麦とホップの素材の良さを引き出した、豊かな味わいを実現しました。
東橋さんが「グリーンズフリー」の味づくりで絶対に外せないと語るのは、爽やかな味わい。「従来は、ビールを飲めない時に飲むという代替での飲用が多かったと思います。それとは異なる飲用のきっかけとして、飲むと気分が前向きになるとか、リフレッシュするなど、積極的に選んでいただけるように意識しています」と説明します。
これまでのビールの飲用シーンにとらわれず、いつでも飲めるのは、ノンアルコール・ビールテイスト飲料のポジティブな要素。すっきりとした味わいや穏やかな苦みの「グリーンズフリー」は、「爽やかなおいしさで気持ちが上がる」という独自の価値でも評価されています。おいしさやビール気分だけでなく、爽快な気分を味わいたいという目的で飲む人がさまざまな場面で増えることを、東橋さんは期待しています。
「私も休日の朝から飲んでみたり、ランチの時に飲んだりしています。そういう時にも気兼ねなく飲めるのはメリット。コロナ禍以降はノンアル が飲み物として生活に取り入れていただいているのを感じますし、『ノンアルだけど単純においしいから飲む』といったシーンを増やしていきたいですね」
アンケート調査から見えた「あえてノンアル」を選択する時代
朝日新聞デジタルのアンケート調査※でも、ノンアルコール・ビールテイスト飲料を飲む場面や目的が多様化していることが判明しました。
※アンケート調査は朝日新聞デジタルの「e-post」を利用して9月12日から16日まで実施。ノンアルコール・ビールテイスト飲料を飲む場面や、飲んだ時の気持ちの変化を質問し、565人から回答を得た。
アンケート結果によると、ノンアルコール・ビールテイスト飲料を飲むのは「リフレッシュしたい時」「お風呂上がりのさっぱりしたい時」「外出から帰ってきて一息つきたい時」など、ビールの代わりではないポジティブな回答が多く見られました。なかには「オフィスでの仕事を終え、帰宅前の気持ちの切り替えに」「ランチタイムに飲むと苦みでリフレッシュできる」という意見も。“休肝日”の人や車の運転をする必要がある場合といった従来のイメージから飛び出し、幅広いシーンで飲まれていることがわかりました。
「ノンアルコール・ビールテイスト飲料を飲んだ時の気持ちの変化は?」という質問に対して、「ホントはビールが飲みたい」という回答は意外にも少数派。「爽やかで気分転換になる」「すっきり、フレッシュな気分になれる」「つかの間のリラックス感」「ご褒美の気持ちで飲める」「気分が上がる印象」などのポジティブな感想が多く寄せられました。
味についても、「のどを通る時の爽やかさが癖になる」「ジュースや炭酸水にはない満足感を感じます。昔と比べてずいぶんおいしくなっています。この分野の技術はすごい」など、年々進化するおいしさに驚いている人もいました。
そういった声に応えるように、「グリーンズフリー」もこの7月にリニューアル。原料の配合を見直して、爽快感や飲みごたえをさらに向上させました。この機会に多くの人に飲んでほしいと、開発者の東橋さんは語ります。
「『グリーンズフリー』はこれまでのノンアルとは一線を画すような、爽やかな味わいが特徴です。ビールが苦手だという方にとっては、麦の飲み物のバリエーションの一つとして捉えることもできると思います。昔のノンアルを飲んでおいしくなかったという方も、フラットな気持ちで一度手に取っていただければ非常にうれしいですね」
気持ちが乗らなかったり、ちょっと飲みたいなと思ったりしたら、いつでも楽しめるのがノンアルコール・ビールテイスト飲料の魅力。よりおいしく飲めるように、冷蔵庫で「グリーンズフリー」を冷やしておくのはいかがでしょうか。