「働きやすく、働きがいのある環境の提供」を重点課題として掲げる株式会社ローソンは、2020年から「働きがい改革」に取り組み、「働きやすさ」や「働きがい」が高まるような施策を講じてきました。その具体的な内容と手応えを、人事本部人事企画部マネジャーの田村朋子さんに伺います。また、採用・転職サービス「ミイダス」と朝日新聞社が共催する、多様な「はたらきがい」を認め、働く人一人ひとりを大切にする企業を応援する「はたらく人ファーストアワード」についてもお話を聞きました。

社員の人生に寄り添う施策で「はたらきがい」「はたらきやすさ」を

――ローソンは、重点課題の一つに「働きやすく、働きがいのある環境の提供」を掲げています。 

社員がイキイキと働ける環境を整えること、一人ひとりが仕事を通してさまざまなチャレンジができることが、「働きやすさ」、「働きがい」につながると考えています。会社が持続的に成長するには、失敗を恐れずにチャレンジして得た個人の学びや成長が欠かせません。ローソンでは、「働き方改革の次は、働きがい改革だ」とのトップの意向もあり、2020年から「働きがい改革」を進めてきました。 

――どのように改革を進めてきたのでしょうか。 

2005年から取り組んでいるダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(以下、DE&I)の推進をベースに、多様な働き方を支える人事制度と、一人ひとりのチャレンジをサポートする制度を整備しました。人事制度では、2018年に導入した「フレキシブル正社員制度」が大きな特徴です。制度導入以前から、法定の短時間勤務制度に会社独自の規定でがん治療を対象に加えたり、子育てに関しては勤務日数の減少や祝日を休日とできる制度などを取り入れたりしていました。しかしそれだけでは不十分で、例えば介護で一年利用したら時短勤務ができなくなり、退職を選ばざるを得ない人が出てしまいます。法定と会社の規定を超えた際にセーフティーネットとして使えるよう制度を整え、勤務時間だけでなく勤務地も限定できるようにしました。 

2024年の改定では、がん以外の継続治療が必要な病気治療にまで対象を拡大。不妊治療で勤務時間と勤務地を限定することもできるようにしました。副業・兼業、リカレント教育といった自分がやりたいことのための時短勤務も認めています。勤務地を限定した場合はベース給与から2割減としていたのも、収入面を気にせずライフステージに応じて制度を活用してほしいとの思いから撤廃しました。

ローソン田村朋子氏右向き
株式会社ローソン 人事本部人事企画部マネジャーの田村朋子さん

――一人ひとりのチャレンジをサポートする制度についても教えてください。 

誰でも応募できる全社向けのビジネスコンテスト「1億円チャレンジ(億チャレ)」や、社員のチャレンジを讃える「社長賞」などいろいろあるのですが、反響が大きいのは「キャリアチャレンジ制度」と「FA(フリーエージェント)制度」です。どちらも自分が希望する部門・部署とのマッチング面談ができる制度で、「キャリアチャレンジ制度」は応募する制度、「FA制度」は権利を行使する制度という違いがあります。 

「キャリアチャレンジ制度」は、2024年度にスタートしました。85名の応募があり、うち26名が今年3月に異動しました。その部門・部署へ異動するにはどんなスキルが必要か明示されるため、今すぐの応募を考えていない社員にとってもモチベーションのアップにつながっているようです。 

「FA制度」は、公募がない部門・部署でも手を挙げれば面談の場を設けてもらえる制度です。以前からあった制度ですが、2024年度からFA権の獲得条件を緩和して利用しやすくしました。業績評価のハードルを少し下げて、行動スキル評価と合わせて一定ラインを超えたら権利を行使できるように変えたんです。ローソンには「グループ理念」と「ビジョン」の下に「ローソンWAY」という人材育成のための5つの行動指針があり、行動スキル評価はこの指針に対して一年間どれだけ取り組めたかを本人と上長が評価します。 

――さまざまな取り組みの中で、特に手応えを感じている施策は。 

「フレキシブル正社員制度」と「キャリアチャレンジ制度」は社員からの反応も良く、手応えを感じています。年に一度行っている全社員4700人を対象にした意識調査では、「キャリア形成支援」の項目が昨年度に比べて6.7%も上がりました。今後は、制度を利用した事例についての社内広報にも一層力を入れていきたいと考えています。

ローソン田村朋子氏手上げ

――「はたらきがい」を高めると、企業活動にはどのような変化があるでしょうか。 

2020年の意識調査から働きがいに関する質問を追加しているのですが、「主体的な行動による成長、貢献の実感」、「組織・職場の安心感とチャレンジへのサポート」、「会社と社員の信頼感」、「人事制度やキャリアに対する納得感」、この四つの要因が働きがいに大きく影響しています。社員一人ひとりの働きがいが高まり、その上でグループ理念やビジョンを共有できれば、働く人にも会社にも良い変化が生まれます。 

ローソンの生業は小売業ですが、マチも人も常に変化していくので、私たちは「変化対応業」と捉えています。常に変化する、チャレンジすることは私たちの企業活動にとってすごく重要で、そういった社員の姿勢がサービスの向上に深く結びついています。 

ローソンは有事に強いという自負があり、例えばコロナで学校が一斉休校になったときは、社員がアイデアを出し、全社一丸となって学童へおにぎりを届ける活動をしました。アイデアがすぐにサービスに結びついてマチのみなさまへ還元できると、社員の働きがいも高まります。それが結果としてお客様からご支持いただき、会社の価値向上にもつながるなら一番いいですよね。 

 社員の本音を引き出し、改善に活かす

―「従業員の声を聴くこと」の重要性をどのように捉えていますか? 

とても重視しているので、働きがいのある企業を目指すにあたっての方針を整理するときも社員の声を反映したのですが、意識調査の結果を見ると「現場の声が活かされているか」という項目の値はまだちょっと低いんです。「もっと自分たちの声を聴いてほしい」というのが、社員の本音。有事の対応を見ても、みんなで何かをやるぞという底力はあるので、それを普段から発揮できるような工夫が必要だと考えています。 

社員の本音を引き出すのはすごく難しいです。100人に聞いたら100人の正解がありますし、少人数の組織だとその意見が誰のものか特定されないか、不安になる人もいるかもしれない。しかも、本音に対して適切なフィードバックができなければ、「答えても無駄」と回答率が下がる可能性もあります。

ローソン田村朋子氏笑顔

――社員の本音を引き出す方法は、意識調査が中心ですか? 

意識調査のように社員4700人のうち8割以上から回答が得られる大きな調査は年に一回、「女性の健康課題」、「育児の両立支援」など、テーマを絞った社内アンケートは都度行っています。テーマを絞っても600前後の回答は集まる感じですね。 

集めた声はそのままにせず、改善につなげています。意識調査の結果はすべて経営層へフィードバックしますし、部門・組織ごとにカルテを作って、上長だけでなくメンバー全員がシステム上で内容を確認できるようにしています。これは、課題があるなら話し合う場を持つべきだと考えているためです。話し合いの内容は「チームビルディングメモ」として残し、リーダーがどのように組織改善を行なっていくか記すようにしています。 

 がんばりを認めて讃えることも「はたらきがい」につながる

――ローソンは、全国に多様な属性の従業員を抱えています。全国の従業員に向けた施策としてはどのようなことを行っていますか? 

何かをやるときは遊び心を持って社員を巻き込むようにしています。男性の育休取得を推進する目的で、復帰のタイミングに合わせて所属部署に子どもの名前が入ったお菓子を贈るのもその一例です。お菓子をきっかけに、「名前の由来は?」といった会話を楽しんでもらえたらと期待しています。「億チャレ」やスポーツ大会など、みんなが自発的に参加できる企画や制度を整備するのも、全国に事業所があるからこその工夫の一つですね。また、社員が同じ方向を向くにはトップの価値観を発信し続けることも大事なので、全社朝礼や年度ごとの事業方針確認会などを通じて、トップメッセージを全国に届けています。 

――会社の規模や業種、地域を問わず、「はたらきがい」を高めるために有効な取り組みは何でしょうか。 

がんばっている人を見逃さずに讃えること、でしょうか。ローソンでは昨年、約1万人のグループ社員の中からいいチャレンジをした人を讃えるイベントを開催し、今年も実施し好評でした。2020年から実施している部署横断のオンラインセミナー「Lawson Lively Link(ローソンライブリーリンク)」でも、各部署の取り組みや「社長賞」で表彰された人を紹介するなど、がんばりを讃える場を設けています。 

少子高齢化が進むと、人材確保も容易ではありません。「この会社で長く働きたい」と思ってもらえるように、利用できる制度の選択肢を増やしつつ、職場の雰囲気や価値観の醸成にまで踏み込んだ施策を打ち出していきたいと考えています。バリバリ働きたい人も、さまざまな事由で少しの間職場から離れる人も、誰もが尊重されるのが当たり前な環境を作ることが目標です。

ローソンパワポ
田村さんは「はたらく人ファーストアワード」授賞式にも出席、パワーポイントを使ってローソンの取り組みについてプレゼンテーションした

外部からの評価が、社員の励みに

――「はたらく人ファーストアワード」(※1)の理念や取り組みをどのように感じましたか?

※1 多様なはたらきがいを認め、はたらく人一人ひとりを大切にする企業を応援するため、ミイダス株式会社と株式会社朝日新聞社が企画。「はたらく人ファースト宣言」を行った企業を対象に、はたらきがいを伸ばすための新規性、有用性、課題解決力を基準に表彰します。 

理念も取り組みも、本当にすばらしいなと共感しました。現代は、働く人の価値観もバックグラウンドもライフスタイルも多様です。当然、何を働きがいと感じるかも人によって違うので、制度一本で全社員の働きがいを叶えられる時代ではなくなりました。だからこそ、どのような制度を整備して、どんな選択肢を提示できるかを検討するにあたり、「はたらく人ファースト」で社員の声に耳を傾ける必要性は増しています。その上で、企業理念やビジョンを共有し、同じ方向を向いて一緒にがんばろうと思えたら、働く人にも会社にもすごくいい循環が生まれますよね。 

外部から評価していただくのは、会社にとってありがたいことです。ローソンは2005年からダイバーシティ経営に取り組んでいますが、(女性活躍に優れた上場企業を選定する)「なでしこ銘柄」や、「くるみん」(厚労相が認定する「子育てサポート企業」)の認定を受けた際は、社員に会社の魅力を知ってもらう良い機会になりました。採用活動でもこういったアワードの受賞は会社のアピールポイントになりますから、「はたらく人ファーストアワード」に応募する意義は大きいと思います。

 

――田村さんにはアワードにもご出席いただき、ローソンの取り組みについてプレゼンテーションもしていただきました。アワードに出られてみて、いかがでしたか。 

アワードでGOLDを受賞したそれぞれの企業が、自分たちの目指したい姿を明確にした上で、自社の従業員の価値観・想いに寄り添った制度・施策を取り入れていらっしゃることにとても感銘を受けました。また、それぞれにDXやITツールの導入により、業務負荷の改善に確実に取り組んでいることが、働きがいの向上にもつながっているということも感じることができました。

洛和会様の、 “まごたん休暇”のような従業員のニーズをくみ取り、かつ、なじみやすい制度名での制度導入や、地元での住居購入の補助のような地域に密着した制度の導入、ネクスキャット様の、「幸せ」を真ん中においた、国境も時差も役職も超えた働き方やコミュニケーションへのお取り組み、フロンティアエデュケーショナルパートナー様の、塾講師をつとめる大学生の従業員に徹底的に寄り添ったイベント企画や報酬制度……。「三社三様」でしたが、それぞれの良さがにじみでており、「他社がやっているから」ではなく、「自社の従業員と向き合って、自分たちで考えて、取り組んだこと」だからこその成果・効果を感じるお取り組みでした。その“姿勢”こそが大切なんだな、と学ばせていただくことができました。

 

――「はたらく人ファーストアワード」は応募の際、「はたらく人の多様なはたらきがいを尊重しています、または今後尊重していきます」、「はたらく人の声を聞く機会を設けています、または今後設けていきます」、「はたらく人の声をもとに改善に努めています、または今後努めていきます」の3つの宣言への賛同を求めています。 

「しています」と発信することと、「していきます」と継続性を示すことを同時に宣言しているところがすごくいいですよね。「はたらきやすさ」、「はたらきがい」を高める施策の効果はすぐには出ないので、私たちも反省と制度の見直しを繰り返しながら、スモールステップを積み重ねています。 

例えば男性育休も、2016年に「とりあえず有給で一週間取ってみましょう」からはじめて、この10年でやっと一週間取るのが当たり前になりました。ここからさらに女性とスイッチで男性も長期育休をとるようなステージまで引き上げたいのですが、一足飛びにそこにいく早道はないから、地道に施策を続けています。

ローソン田村朋子氏茶色背景

――本アワードでは応募企業に対して、従業員の「はたらきがい」が見える化できるアンケート形式の調査ツール「はたらきがいサーベイ」(※2)を無償で提供しています。ローソンでも社員の声を聴くために意識調査やアンケートを活用しているとのことですが、「はたらきがいサーベイ」についてはどのような印象を受けましたか?

※2ミイダス株式会社が提供する無料のサービスで、従業員のはたらきがいを「満足度」と「重要度」の両面から可視化することで、解決すべき課題とその優先度を明らかにし、会社への不満解消につなげます。 

私たちは自前でやっていますが、質問内容は毎年見直しています。質問数が多すぎると答えるのが負担になるので、何を追加し、削除するか調整するのも一苦労です。分析に関しては外部に委託してサポートしていただいているのですが、その点、設問から分析までお任せできる「はたらきがいサーベイ」は助かりますよね。通常、実施するのに数十万円から数百万円かかるエンゲージメントサーベイが無償ですから、社員の声を企業活動に生かしてみたい会社さんとか、システムを自分たちで開発するのは負担になる従業員規模の小さい会社さんも活用しやすいのではないでしょうか。 

調査で課題が可視化されたら、それに対する施策をまずは一旦リリースしてみることをおすすめします。大きいことをやるよりも、小さくてもやれることから始めてみて、社員の反応が悪かったらやめる。少しでも効果があったらブラッシュアップしていく。その繰り返しが「はたらきやすさ」と「はたらきがい」を高めることにつながります。

ローソン田村朋子氏プロフィール用

株式会社ローソン 人事本部人事企画部マネジャー・田村朋子
2003年4月株式会社ローソン入社。店長・スーパーバイザー(店舗経営相談員)などを経て、15年に人事本部 人事管理部に異動し、異動・制度運用を担当。17年より人事本部人事企画部マネジャーとして制度企画やDE&I推進を担当。 22年に育児休職を取得、23年7月に復職。

はたらく人ファーストアワードロゴ

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