東海道新幹線の発着駅であり、リニア開業を控える品川駅。羽田と成田両空港へのアクセスも良く、東京の玄関口としての役割を担う。UR都市機構は品川駅周辺の開発プロジェクトに携わり、3月27日にまちびらきした「TAKANAWA GATEWAY CITY」と連動したプロジェクトを通して、住む人にも訪れる人にも快適なこれからのまちづくりに貢献。UR都市機構東日本都市再生本部都心業務部の石黒慶さんにUR都市機構のまちづくりとこれからの品川エリアについて聞いた。
国際競争力や経済活性化を見据えた
UR都市機構のまちづくり
地域の特性、住む人や訪れる人のニーズにより変化し続ける都市。国の政策実施機関として、都市機能の高度化や住環境の向上につながる都市再生を行うことを目的として設立されたUR都市機構(以下、UR)は、地域課題を見いだし、培ってきたノウハウを生かしたまちづくりで未来に貢献している。URのまちづくりについて、石黒慶さんはこう話す。「まちづくりには多くの人が関わり、行政が目指すこと、民間事業者や地権者の思いなど様々な方針や考え方があります。そこに計画段階から入り、公平・中立な立場で地域の実情に応じたまちのあり方を提案し、事業を円滑に進めていくことが、私たちの役割です」
URは、大阪市の「うめきたエリア」の整備や長野県小諸市の地域活性化など特性の異なるまちづくりを全国で進めている。「うめきたでは、計画策定の初期段階から支援に携わり、事業主体として道路や防災公園等を整備し、鉄道の地下化、建物建設など並行する関連事業がスムーズに進むようサポートもしています。また、地方都市では、地域資源や歴史を生かすことも重要です。小諸市では歴史的建造物を取得し、隣接する広場や周辺施設との一体的活用による公民連携のまちづくりに取り組んでいます」(石黒さん)。それぞれのまちの課題に寄り添い、地域の思いを形にし、エリアの価値を向上させる役割を担う。
国内・海外への交通のハブであり
進化し続ける品川の未来を開く
元々は大部分が車両基地であり、東西を横断する動線が限定的であったことから、大規模な土地利用転換と合わせて電気・水道のようなインフラの整備と新たに東西を結ぶ動線の設置が必要なエリア。高輪ゲートウェイ駅を中心に、車両基地跡地と国道沿道市街地の一体的なまちづくりにより、国や東京都、港区が目指す国際交流拠点の創出を実現する。
URの取り組み:鉄道と国道に囲まれた制約のあるエリアで、鉄道や歩行者動線の安全や機能を守りながら工事を実施。道路・公園を建物と一体的に新設し、安全・快適なにぎわいのある公共空間を形成し、史跡指定された高輪築堤跡の文化財保存と国際交流拠点形成のまちづくりの両立を公平・中立な立場で支える。
品川駅前広場(高輪口)は狭く、国道により駅とまちが分断され、歩行者と車両の通行が交錯しているという課題がある。駅前の土地の高度利用を図るとともに、駅・まちの利便性・安全性の向上が求められている。
URの取り組み:品川駅前(高輪口)の自由通路を延伸・新設し、今後整備される予定の国道上空デッキとつなぎ、歩行者が駅周辺や国道を東西に移動しやすくすることで、車両と分離された安全・快適な歩行者空間を備えたターミナル駅前へと整備を進めている。
武蔵野台地の貴重な緑が多く残るこのエリアでは、その緑を拡充させつつ、歴史あるホテルなどの建て替えを実現するため、段階的かつ長期的な都市インフラの整備が求められる。
URの取り組み:地域の資源である崖線緑地や歴史を生かし、地域の価値を向上させる公園などの空間の創出や、既存のホテルの段階的な建て替えに合わせて道路などのインフラ整備を長期的に進めていく。
まちびらきを迎え、注目を集めている「TAKANAWA GATEWAY CITY」。今回開業した、国際会議場やビジネス創造施設などが入居するTHE LINKPILLAR1を皮切りに、最終的に高輪ゲートウェイ駅前では、オフィス・商業等の複合ビル、文化発信交流拠点となる文化創造棟や超高層住宅が誕生予定で、品川エリアのまちの価値を高めていく取り組みが進められる。
複数のプロジェクトが同時進行する同エリアでも、URはその事業基盤を支えている。品川というエリアの特性、駅周辺における課題、その解決方法について、石黒さんはこう説明する。
「品川は、江戸時代には東海道、明治時代には日本で初めて開業した鉄道駅の一つである品川停車場が整備されました。現在では羽田・成田両空港への主要なアクセス路線が乗り入れるなど旧来より交通の要所として栄えながらも、山手側は、武蔵野台地の傾斜地・崖線など起伏に富んだ貴重な緑も多く残る住宅地が広がっています。しかし、道路や線路によるまちの分断、ターミナル駅ながら駅前広場機能が不足していること、車両基地跡地のため、道路・ガス・水道などのインフラが未整備であることなど、多くの課題があります。再開発やリニア開業によって来訪者が増えれば、まちの回遊性や防災についても整えていく必要があります。URは、国際交流拠点となる新たな品川をつくるという国や都、港区の政策を受け、これらの課題を解決し、ビジネス・文化が生まれる世界に開かれた品川エリアのまちづくりを支える道路、宅地、公園および歩行者ネットワークといった公共空間などを整えるため、三つのエリアで土地区画整理事業を行っています」
建物も何もない敷地にビル建設とともに大規模なインフラ整備を進めていくというケースはあまりなく、地域に必要な道路や鉄道の機能を維持しながらプロジェクトを進めるのは、困難かつ時間を要す。
この周辺でまちを東西に行き来できるのは通称「お化けトンネル」のみだった。URは歩行者通路の切り替えを段階的に行い近隣の方々の生活動線を確保しつつ、より快適な道路を鉄道直下で整備している。
また、今後品川駅周辺にも広がっていくまちづくりに、URは長期的に携わっていくのが大きな特徴であり、強みだ。
「品川エリアの新たなまちづくりという目標に向かって、プロジェクトには多くの事業者が関わっています。居住者も利用者も多く、交通・ビジネスの要所であるまちは、プロジェクトの進行においてその機能を止めるわけにはいきません。鉄道に影響が出ないよう、終電後から始発までの限られた時間での工事も多く、事業者によって開発進度も異なります。私たちは、それぞれの思いをくみ、対話を重ねながら行政や事業者同士をつなぎ、開発の時間軸も異なり複雑に絡み合うプロジェクトの最適解を提案しています。グローバル企業が集積し、新たな人が暮らし、国際都市として活性化していく品川エリア。まちづくりにゴールはなく、今後も開発はこのエリア全体に広がっていきますが、少しずつ見えてくるまちの未来や成長していく姿に、URとしても私自身としても楽しみです」(石黒さん)
時代に合わせて変化していく都市。URはそのニーズや人々の思いに寄り添いながら、まちづくりの課題を的確に把握しエリアの特性に応じた計画や手法を提案、遂行することで都市の進化を支え続ける。