マイナビといえば、これまでは「人材の会社」、「営業の会社」というイメージを抱く人が多かったかもしれない。しかし、実はマイナビは2022年の「デジタルテクノロジー戦略本部」発足をきっかけにデジタル領域の課題に重点的に取り組み、社内外で大きな変革を進めている。2030年に向けてマイナビが目指すのは、「ヒューマンタッチなテックカンパニー」への進化。50年を超える歴史を持つ企業の「デジタル深化」による「進化」について、担当者の話からひもといた。

全社横断組織でデジタル戦略を加速させる

中村さん2

――マイナビは、2022年10月に全社横断組織である「デジタルテクノロジー戦略本部(以下、デジ戦)」を発足しました。その狙いについて教えてください。 

50以上あるマイナビの既存サービスのグロースを横断的に叶えること、内製開発を進めて新サービス立ち上げのスピードを上げること、デジ戦起点でイノベーションを生み出すこと。この三つが、デジ戦に求められている役割だと思っています。 

以前は、サービスごとにITとWEBマーケティングの人材が分かれていました。それぞれのサービスを垂直成長させるという点では良かったのですが、一方で、例えば求人広告の「マイナビ転職」と人材紹介の「マイナビエージェント」では、同じ中途採用というマーケットの中でお客さまにサービスを提供しているにもかかわらず、横の連携が希薄な状態でした。これはお客さまからしたら不便ですし、会社としても効率が良くない。そこで、マイナビのデジタル人材を集結し、全社横断的にデジタル戦略を推進できる状態にしよう、となったのが、デジ戦発足の背景です。 

デジ戦発足から、2年半。各所にいた人材がすべて合流し、現在は総勢700名弱が在籍しています。自然と横の連携ができるようになって、新しい施策や技術の転用が生まれ始めました。 

――新しい組織を発足させるにあたり、苦労したことはありますか? 

技術的な面で特に大変なことはありませんでした。というのも、所属する組織が変わっても、自分が担当していた業務は継続して行うので、いきなり仕事内容が大きく変わることはなかったからです。半年から一年経ってお互いの仕事が見えてくる中で、自然と「やっぱりここは整理した方がいいよね」「こういった連携ができそうだよね」といった話が出るようになり、少しずつですが着実に組織統合の効果は出てきているように思います。

人材の会社としてのアセットを生かし、社内外でさらなる進化を

中村さん3

――デジタル戦略を推進することによって、どのように事業に反映していけると考えていますか? 

デジタルが提供できる一番の価値は、やはり「速さ」です。今のマーケットが求めるサービスへのスピード感は、5年前、10年前とは比べものにならないくらい上がっていて、一日でも早く新しいサービスを提供することが我々には求められています。 

スピードを叶えるにはデジタルの強化が不可欠で、その手段の一つが内製開発の活用です。外部に委託する場合は、まずマイナビのサービスを知っていただくところから始めなければなりませんが、社内のエンジニアならその工程は省けます。 

ビジネスサイド(営業)が企画を立てた段階からデジ戦メンバーも参加して、具体化させていくのが新しいサービスを生み出す際の基本的な流れです。マイナビは人思いの社員が多いので、そういったメンバーが主体となって作るサービスはお客さまの心に届くものだと思っています。ですから、我々デジ戦としてはサービスを提供する速さにコミットすることが、そのままCXの向上につながるものと捉えています。 

――50年の歴史を持つマイナビのアセットは、どのような形で生かしていけるでしょうか。 

マイナビに50以上のサービスがあるのは、お客さまの要望にしっかりお応えして新しいサービスや商品を作ってきたマイナビの社風によるものだと思っています。マイナビの社員は、人のためになりたいと思っている人ばかり。その行動力、企画力を生かして作り上げてきた数々のサービスを通じて集まった膨大なデータが、私たちの一番のアセットです。お客さまのデータをしっかり活用させていただいて、市場が求めるものは何か、我々はどういったものを提供できるかを追求していくことが重要だと考えています。 

ただ、これまでデジタル部門もそれぞれの事業部門に属しており、データもそれぞれのサービスに特化したデータであるため、活用に向けては様々な整理、調整が必要です。一例をあげると、同一職種や業種の呼び名がサービスごとに違うなどといった部分です。今、データ部門が整理してくれていますが、必ずしも100%一致を目指すのではなく、先への投資とのバランスを見てやっていきたいですね。

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――社内に向けた取り組みとしてはどのようなことを行っていますか? 

これまではありものの経費精算システムや勤怠管理システムを導入していたのですが、OneERP(Enterprise Resource Planning)をキーワードに、異なるシステムのデータを連携する取り組みをデジ戦主導で進めているところです。一人ひとりのデータを紐付けることは、利便性を上げ、社員のエンゲージメントの向上にもつながりますし、デジタル化の推進で意思決定スピードの向上を叶え、社内の一体感もより高めていけるものと考えています。

唯一無二の「ヒューマンタッチなテックカンパニー」に

――デジ戦が成長し続けるために必要なものはなんでしょうか。 

デジ戦は新卒も含め若い世代が多い組織で、非常に高い達成意欲を持ち合わせたメンバーが多く存在します。今後、そういったメンバーが活躍していくためには、しっかりとした組織の底上げ、育成が必要です。また、人員は今後1000名まで増やす方針なので、我々の取り組みを一人でも多くの方に知っていただいて、力強い仲間に集まってもらうための広報も欠かせません。 

人柄がいい人が多いのは、マイナビという会社の強みです。生成AIの進歩が目覚ましい今は、デジタルの分野で必要な人材の潮目も変わりつつあると感じます。プログラムを書くことがAIに任せられるようになってきているいま、自分が指令塔になって複数のツールを組み合わせられる「工夫が上手な人」たちが今後は重宝されるようになっていくように思います。そのときに、「人の役に立つものを」と素直に考えられる価値観はとても大きいですね。 

――デジ戦が最終的に目指す到達点は。 

人材のマイナビではなく、テックカンパニーのマイナビという印象を持っていただくのが我々デジ戦の一つのゴールです。マイナビらしい、人間味のある「ヒューマンタッチなテックカンパニー」として、唯一無二の存在感を示したいですね。 

中村さん4

中村和俊(なかむら・かずとし)
デジタルテクノロジー戦略本部 ビジネスイノベーション統括本部 統括本部長 大学卒業後、ソフトウェア開発会社、印刷会社の社内SEを経て、2011年に株式会社毎日キャリアバンクに入社。一貫して人材紹介事業のシステム担当としてキャリアを積む。2022年に全社横断組織の「デジタルテクノロジー戦略本部」発足と共に異動。内製開発部門のエンジニアリング統括部長を経て、2023年より現職。

「アプリ甲子園」への協賛で向上した「マイナビ=デジタル」のイメージ

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――ここからはマイナビが昨年協賛した、中高生向けのアプリ・Webサービス開発コンテスト「アプリ甲子園」について、広告宣伝課の金子祐貴課長にうかがいます。まず、コンテストの内容や協賛の趣旨を教えてください。 

全国の中高生を対象にご応募いただいたアプリやWebサービスを、「技術力」と「企画力」の側面から審査し、優秀な作品を表彰する日本最大級のアプリコンテストです。2011年から開催されており、ライフイズテックさんと丸井グループさんが共同で主催しています。マイナビ全社としては昨年初めてトップスポンサーの一員として協賛をさせて頂きました。 

マイナビのパーパスは、「一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる。」。そして「アプリ甲子園」のテーマは、「試そう。今の自分も技術も、アイデアも。」。私たちが実現したい世界観と合致することに加えて、未来を担うデジタルネイティブ世代の方々の挑戦や活躍の場を提供するというコンテストの趣旨に共感して、協賛を決めました。 

―マイナビはデジタル戦略を推進していますが、「アプリ甲子園」への協賛もその一環だったのでしょうか。 

当初は純粋に、未来を担うデジタル世代の皆さんを少しでも応援したいという気持ちから協賛に至ったのですが、結果として、多くの取引先や学生の皆さんにアプリ甲子園の協賛についてお声掛けを頂き、マイナビがデジタルに真摯に向き合っていることを広く知ってもらえたこと、「良い意味でのイメージとのギャップ」を感じて頂けたことは、非常に価値として大きかったと感じています。

デジタル領域のスキルを生かす将来の選択肢を、中高生に伝えたい

金子さん3

――中村統括本部長も、コンテストの審査員として参加されたそうですね。 

中村を含め、マイナビからは3名が二次選考から審査員として参加しました。「自分たちの技術や知見を若い方々に伝えられたら...」という思いで臨みましたが、終わってみれば「むしろ自分たちに学びがあった」と全員が口を揃えていました。二次選考後、オンラインで参加者の方々に個別にフィードバックする場があったのですが、自分が考えたアプリを良くするために何ができるのか、貪欲に質問する若者たちの姿が印象的でした。 

―中村統括本部長も、「日本の文化は100点を求めがちで、ビジネスの現場でも100点じゃなければサービスを提供できないと考えてしまう。けれども、子どもたちは50点、60点の出来でもとりあえずコンテストに参加してみて、そこから100点にしていけばいいという感覚を持っている人が多く、新しい風を感じた」と話していました。

アプリ甲子園

若い方々のこれと決めたものに対して突き詰める力は本当にすばらしいと思います。ただ、いま自分が熱中していることをどうキャリアにつなげていくのかということは、なかなかひとりでは気づけないものですよね。そんな未来あるデジタル世代の彼らにキャリア支援をしている我々だからこそ提供出来る価値は何だろうと考えた結果、将来の多彩な選択肢を示せたらいいなという思いから、ライフイズテックさんが今年の春休みに行った中高生向けのプログラミング・AIキャンプ「Life is Tech ! Spring Camp 2025」で、マイナビオリジナルのカードゲーム「カードゲームで学ぶキャリア図鑑」を使ったワークショップを実施しました。

スプリングキャンプ
「Life is Tech ! Spring Camp 2025」での一コマ

例えばエンジニアも、ITのシステム系の会社に入ることだけがすべてではありません。金融業界で新しいスマホ決済アプリを作ったり、メーカー系で活躍したりする道もあります。ゲームを通して、世の中にはいろんな業種があり、どんな業種でもエンジニアだからこそ提供できる仕事があるのだと伝える良い機会になりました。

マイナビらしい「ぬくもり」は、デジタル化が進んでも変わらない

金子さん座り

――今後マイナビはどのように進化していくと考えていますか? 

デジ戦発足後は、社内でも大きな変化がありました。それまでのマイナビはどちらかというと事業ごとの縦割りの組織で、ノウハウやデータを横断的に共有する意識は希薄でしたが、同組織が立ち上がったことをキッカケに全社でも意識が変わった印象があります。 

デジ戦は対外的なサービスの機能向上はもちろん、社内に向けてデジタルテクノロジーの活用を啓蒙する役割も担っています。実際、私は文系でデジタルとは縁遠かったにもかかわらず、AIの恩恵にあずかっています。AIがオンラインの打ち合わせで文字起こしをしてくれたり、その内容を全部整理してネクストアクションの提案までしてくれたりするので、浮いた時間を他の生産性のある仕事に費やせてとてもありがたいです。 

デジタル化の推進と聞くと、マイナビらしさであるぬくもりと相反する方向へ進むように思われるかもしれません。ですが、中村の話にもあったように、私たちが掲げているのは「ヒューマンタッチなテックカンパニー」への進化です。 

マイナビは社内のコミュニケーションが活発で、チャットで済ますのではなく、なるべく対面で話すなど、コミュニケーションに時間を使うことを厭いません。それは一見、非効率に見えるかもしれませんが、効率化を求めるあまり、お互いの意思疎通が不十分であればデジタル化も良い方向には進んでいかないですよね。デジタル化といっても、最終的に技術を活用するのは人です。「ヒューマンタッチなテックカンパニー」を目指すのは、人間味や誠実さを大事にしているマイナビらしい進化だと捉えています。未来が見える世界をつくる為、これからも私達は挑戦を続けてまいります。 

金子さんプロフィール

金子祐貴(かねこ・ゆうき)
社長室 コーポレートコミュニケーション統括部 広告宣伝2部 広告宣伝課 課長  2012年に中途入社し、約7年間「マイナビエージェント」の営業職に従事。ハイクラス層の人材紹介に挑戦するため転職し、2020年にアルムナイ採用でマイナビに再入社。3年間同職に従事した後、2023年より現職。